コンビニなのにレコードが買える?週末にはDJイベントも!―日本橋浜町・レコードコンビニ Yショップ上総屋
人が集まる場のヒミツ

コンビニなのにレコードが買える?週末にはDJイベントも!―日本橋浜町・レコードコンビニ Yショップ上総屋

#カルチャー #コミュニティ #仕事・働き方

人気のあのお店や場所には、なぜ人が集まるのか? 連載企画「人が集まる、場のヒミツ」では、お店・空間づくりのポイントや、その背景にある想いやこだわり、そして魅力的なエピソードの数々から、「愛される場所」の秘密を紐解きます。


第7回は、東京駅から2kmほどにある、オフィスが立ち並ぶ街・日本橋浜町の日本橋浜町の「レコードコンビニ Yショップ上総屋」。外観はよくあるヤマザキショップ(通称:Yショップ)ですが、店内へと足を踏み入れると見慣れた菓子パンやカップラーメン、お酒の棚に混ざって、短冊CD(8cmシングル)やレコードがずらり。「私はなんのお店に来たのだろうか?」と戸惑いながらも、数分後には真剣にレコードをディグしてしまう摩訶不思議な空間です。


レコードコンビニでは、レコードの販売だけでなく、週末にはコンビニの中でライブやDJイベント、DJ教室まで開催されているのだとか。自由なコンビニが生まれた理由や店長の進藤康隆さんが思う理想の「場づくり」についてお話をうかがいました。

店内で何気なくかけたレコードが話題に

レコードコンビニ(ヤマザキショップ上総屋店) 店長・進藤康隆さん

—浜町で代々経営されてきた酒屋を進藤さんが3代目として受け継ぎ、コンビニを始められたそうですね。最初からレコードを販売したり、DJイベントを催したりすることは想定していたのでしょうか?

進藤

想定していませんでした。もともとは兄貴がこの家業を継ぐ予定で、僕は銀座のバーで働いていたんです。ただ兄貴は企業勤めで掛け持ちは大変。親孝行したい気持ちもありましたし、「数年後には兄貴がお店をやるはず」なんて気持ちで、とりあえず自分が継いだんですよ。


1999年にこのお店をオープンさせましたが、開業時はコンビニ経営だけで大忙しでした。ビジネスマンが多いエリアなので、お昼時には行列ができることも。とにかくお店をまわすことに精一杯で、自分の時間はほとんどなかったですね。


そんなこんなで忙しい毎日を送っていたんですが、慣れて仕事が落ち着いてくると、お店でかけていた有線も「なんか面白くないなー」と違和感を覚えるようになってきて。もともと音楽が好きだったので、自分のレコードをかけちゃおう、と店内で好きな曲をかけることにしました。

—コンビニ経営って、そんなに自由で大丈夫なんですか!?

進藤

ヤマザキショップ(以下、Yショップ)は、経営の自由さが魅力なんです。立地や地域の特性に合わせた商品を販売することもでき、音楽学校の近くにあるYショップでは楽器に関連するものが販売されていたりしますね。道の駅や病院などでも、独自のお店の売り出し方をしています。営業時間や定休日も柔軟に決められるんですよ。

—Yショップ自体が自由なコンビニだったんですね! レコードをかけ始めてからお客さんから反応はありましたか?

進藤

しばらくすると「あそこのコンビニは、レコードがかかっているらしい」って口コミが広がって。レコード好きな人が集まるようになり、自然と常連のお客さんとレコード談義に発展していくんですよ。お客さんと閉店後に飲みに行くなんてこともしていました。

その時はまだレコードの販売はせず、音楽をかけていたのでしょうか?

進藤

そうですね。レコードを販売するためには「古物商」の許可が必要なので、自分の家にあるレコードをかけていました。

はたから見ているとそれだけでも「自由で楽しそう!」と感じてしまいますが、代を渡した親御さんはどのように見ていたのでしょうか?

進藤

親父とは、毎日喧嘩でしたよ(笑)。でも、人が集まって売り上げが上がって、お客さんから「面白いことやる息子さんだね」って評価をいただけるようになってからは、何もいわれなくなりましたね。

東日本大震災で感じた「街のコンビニ」の重要性

現在の“レコードコンビニ”スタイルになったきっかけはあったのでしょうか。

進藤

大きなきっかけとしては、東日本大震災。帰宅難民がたくさん出た時、夜中になってもゾロゾロとお店の前を歩く人が止まらなかったんです。お店に立ち寄る人もたくさんいて、在庫もすっからかん状態に……。僕自身も近所の自宅に帰りたくても、明け方まで帰ることができませんでした。その時「コンビニって僕たちの生活に身近にないといけない」と感じたんです。

震災の時は都内でも情報が少なく、どうしたらいいか迷っている人も多くいましたからね。コンビニの明かりがあるだけでも心が救われた人がたくさんいたと思います。

進藤

ありがとうございます。でも自宅に戻って一人になると、僕自身、近所付き合いが全くなかったって気づきました。隣人の顔も名前もわからないから近所の人たちがどんな状況か把握できません。こんな世界ってちょっと怖いな、と思ったんです。


それ以降、改めてコンビニの役割を考えつつ、店に集えるスペースや、好きなもので繋がれる環境をつくって、ご近所付き合いができる環境を作りたいと考えるようになりました。そんな頃に、「近所にレコ屋がないな……」と気づいて。それで、レコードコンビニの発想に辿り着きました。

—具体的にどのような取り組みをはじめたのですか?

進藤

2012年頃から元々倉庫だったコンビニの地下を改装してJAZZライブをしたり、コンビニスペースに併設したブースでDJイベントやライブをしたりしていました。そうしたらいろんな人が徐々に交わっていくようになったんですよね。それがすごく面白くって。


古物商の許可を取るのに時間がかかったので、本格的に仕入れて販売をスタートしたのは2017年頃かな?  震災から5年後には、店内で行ったフリーマーケットでレコードの販売を始めていました。コロナ禍には「DJ教室」もスタートして、最近ではレコード以外に短冊CDも発売するようになりました。

店舗奥にはDJブースがあり、週末にイベントが行われている。もちろんコンビニも営業中

—10年以上かけて、積み重ねるようにお店が進化したんですね。ちなみにイベントの時は、コンビニ営業はお休みしているのでしょうか?

進藤

ライブやイベント中もコンビニ利用は可能です。近所の人が「今日も盛り上がっているね〜」なんてふらっと買い物に来てくれることもあります。あと近くにはビジネスホテルがあるんですよ。たまたま仕事の研修で「初めて東京に来ました!」という人が夕飯を買いにきたら、DJがいて、ミラーボールが回っていて、お客さんが店内でお酒を飲みながら盛り上がってる!みたいなこともあります(笑)。

—DJがいたら「東京のコンビニは、ヤバい」って思っちゃうでしょうね(笑)。

進藤

そうかもしれませんね(笑)。すごく嬉しかったのは、たまたま地方から東京に来ていた学生さんが、DJイベント中に何も知らずに買い物に来てくれて。一旦ホテルに戻ったんですけど「面白そうなのでやっぱり来ちゃいました」ってわざわざ戻ってきたんですよ。


その学生さんから「色々と悩んでいたけど、イベントに参加して、みんなによくしてもらって、自分のターニングポイントになった」と言われて。生きていく中で誰かの人生に影響を与えられることってあまりないと思うんですけど、レコードコンビニがそんな存在になれたことに、感動しましたね。

「はじめまして」の人も打ち解けられる場所

素敵なエピソードですね。進藤さんのお話を聞いていると、人が自然とつながって、広がっていくように思うのですが、「場づくり」で心がけていることはなんでしょうか?

進藤

う〜ん……「はじめまして」の人がどれだけ楽しめるか?
ですかね。都心のクラブってひとりで行くと、疎外感があるんですよ。それが苦手なので、1人で来た人でも積極的に話しかけて、交流するきっかけを作るようにしています。常連さんたちは、勝手に楽しんでくれるので(笑)。

店内ではオリジナルカクテルを提供している

一見すると摩訶不思議な空間も、進藤さんや常連さんがいることで温かくて人情のある空間になるんだと実感します。レコードコンビニにはどんな方がいらっしゃいますか?

進藤

面白いことを探したい人が多い気がしますね。「店長、あのお店面白いから行ったほうがいいよ」とか「絶対あの人とイベントやったほうがいい」ってどんどん教えてくれるんですよ。音楽好きだけじゃなくて、ただ「楽しそう」とやってくる人もいて。


僕自身は自分が好きなことをわがままにやっているだけなんですけど、音楽を通じてこのお店を「面白い」と思ってくれて、一緒に楽しみたい人が連鎖反応的につながっていく。そんな空間に興味がある人が集ってくるような気がしますね。

レコードコンビニの価値観を、全国へ

これから進藤さんがやってみたいことを教えてください。

進藤

実はちょっとずつ始めているんですが、レコードコンビニのツアーをしているんです。

えっ?!

進藤

僕と、レコードコンビニのイベントでご一緒しているDJのみなさんと、大阪・京都・名古屋に行くツアーです。


今までは「レコードコンビニに来てもらう」イベントでしたが、これからは「レコードコンビニが地方に行く」イベントをどんどん開催したいと思っています。雑貨屋さんの一角や会議室などクラブじゃない場所でDJをすることで、レコードコンビニの価値観が広がっていったらいいな〜と。いつか地方のヤマザキショップでイベントができたら面白いですよね。

—ツアーと聞いて驚きましたが、すごく楽しそうですね。全国からたくさんお声がかかりそう。

進藤

僕自身は大したことはやっていないんですけどね。これからも「面白そう」「楽しそう」って思うことは追求していきたいし、「面白いからうちでやりましょう」っていうカジュアルさをいつまでも持っていたいなって思います。

PROFILE
川村健一

進藤 康隆

レコードコンビニ(ヤマザキショップ上総屋店)店長

朝7時〜24時まで日本橋浜町で営業しているコンビニエンスストアの店長。元々酒屋だったこの場所で3代目としてヤマザキショップを経営している。最近では「出張レコードコンビニ」を企画し、これまでに大阪・京都・名古屋でDJイベントを開催している。

CREDIT

ライター:つるたちかこ 撮影:塩川雄也 編集:モリヤワオン(ノオト)

ブランド名

商品名が入ります商品名が入ります

★★★★☆

¥0,000

PROFILE

山田 太郎

CO-FOUNDER & CTO

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。

山田 太郎

CO-FOUNDER & CTO

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。

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