「お金に換算できない価値を」 マルシェが拓く手作りとこだわりの街―岐阜・柳ヶ瀬商店街
人が集まる場のヒミツ

「お金に換算できない価値を」 マルシェが拓く手作りとこだわりの街―岐阜・柳ヶ瀬商店街

#コミュニティ #仕事・働き方 #教育・学び

人気のあのお店や場所には、なぜ人が集まるのか? 連載企画「人が集まる、場のヒミツ」では、お店・空間づくりのポイントや、その背景にある想いやこだわり、そして魅力的なエピソードの数々から、「愛される場所」の秘密を紐解きます。


第6回で取り上げるのは、岐阜県岐阜市にある「柳ヶ瀬(やながせ)商店街」。明治期に拓かれ、1960年に全天候型アーケードが完成し活況を見せていましたが、時代の流れとともに店のシャッターが目立つように。そのような時期を乗り越え、現在は若い世代も訪れる商店街として活気づいています。にぎわいの鍵となったのは2014年から毎月開催するサンデービルヂングマーケットです。


マルシェ立ち上げメンバーで、まちづくり会社「柳ヶ瀬を楽しいまちにする株式会社」のクリエイティブディレクターの末永三樹さんに、人が集まる商店街の在り方について、お話しいただきました。

「昭和」が色濃く残る商店街で見つけた新たな視点

―末永さんは、どんなきっかけで柳ヶ瀬商店街に関わり始めたのですか?

末永

私と夫はともに建築士で、岐阜市内の設計事務所で働いていました。夫が「岐阜市中心市街地活性化プロデューサー」に就任したことをきっかけに柳ヶ瀬商店街に関わるようになって。その後まもなく2012年に独立したのですが、空間デザインで街を変えるという視点は当時まだ需要が少なく、設計の仕事を活かす機会がありませんでした。


街の人との関係を築きつつ、今後の計画を立てていく中で、名古屋市西区の円頓寺商店街で、使われていない古ビルの不動産再生をする取り組みを知りました。商店街で私たちの職能を生かす一筋の光が見えましたね。

柳ヶ瀬を楽しいまちにする株式会社 クリエイティブディレクター 末永三樹さん

2010年代の初めは、古い物件のリノベーションや利活用は斬新な試みだったと思います。その頃の柳ヶ瀬商店街はどんな雰囲気でしたか?

末永

多くの商店はシャッターが閉まっていて閑散としており、若い人が営む新たなお店が入ってもなかなか定着しませんでした。しかし、不動産再生の視点で商店街を歩くとかわいい古ビルやユニークな建物が多いことに気付きました。まるで古着を見るような感覚でしたね。

古ビルの立ち並ぶ歓楽街。レトロな看板が目を引く

商店街の新たな価値と可能性を見つけ始めたんですね。

末永

その頃、すでに商店街内にある「やながせ倉庫」が実験的な取り組みを始めていました。ここでは、アトリエやギャラリーショップとして古い雑居ビルのテナントを若いクリエイターに安価で貸して、思い思いに面白く使ってもらっていて。柳ヶ瀬商店街という空間を若者にも活用してもらおうという動きが始まっていたんです。

やながせ倉庫

マーケットを通じて、「商業の在り方」を考える機会に

柳ヶ瀬商店街では、アーケードの通路や空き物件にさまざまなショップが出店する「サンデービルヂングマーケット(以下、サンビル)」が話題となり、人が集まっています。このイベントを始めた経緯を教えてください。

末永

当時、商店街に「私たちが来てほしい人」を集めるための戦略的なプランを考えていました。「まず人を呼んで、街そのものにファンをつくり、お客さんが集まる場所にお店ができる」というのが、街づくりのスキーム。そこで、「ここにしかない、ひと・もの・空間」をコンセプトにしたマルシェ・サンビルを企画しました。

サンビル開催中の様子

(写真提供:柳ヶ瀬を楽しいまちにする株式会社)

—サンビルを始めた当初は、どのような反響がありましたか?

末永

マルシェイベントがブームになる前に立ち上げたこともあり、新しい取り組みとして、当初から多くの方に足を運んでいただき、出店者さんのおかげで口コミも広がりました。今年でサンビルは10周年を迎えますが、出店数も50店舗から始まり、現在では飲食や物販など180店舗ほどに拡大しています。

—私もサンビルに参加したことがあるのですが、お客さんが出店者に商品について質問したり、お互いが会話を楽しんだりするシーンもよく見られますよね。商店街に新しい「買い物のかたち」が生まれているのではないでしょうか。

末永

マルシェイベントは街の活性化と位置づけられることが多いですが、「消費のあり方を考える」という大きな命題に対しても取り組めるはずです。

サンビルでは出店者の「手作りとこだわり」を大切にしています。「作り手の想い」といったお金に換算できない価値に注目し来場する方々は、きっと物だけでなく、作り手本人も大事にすると思うんです。サンビルを通して街にそういった文化が醸成されると、ものづくりをする人は励みになるし、いい店も集まる。より良い循環が生み出されていくんです。

サンビル開催中は、アーケードの通路にたくさんのショップが並ぶ

(写真提供:柳ヶ瀬を楽しいまちにする株式会社)

「ここでしか会えないひと・モノ」を求める場所になる

現在、サンビルの取り組みは第三日曜だけでなく偶数月の第一日曜の開催と、第四日曜にはGIFU ANTIQUE ARCADEを行っているそうですね。マーケットと商店街のにぎわいは比例していますか?

末永

日常からすごくにぎわっているわけではないですが、ここ3年ほどで大きく変わりました。それは柳ヶ瀬を面白いと感じている若い人が増えていることです。柳ヶ瀬の中にシェアハウスやシェアキッチンも立ち上げていて、そこを使ってくれる人や、柳ヶ瀬近郊で暮らす子育て世代も増えています。私たちの会社にもサンビルのボランティアがきっかけで20代のスタッフが入社するケースも。

商店街内にあるシェアキッチンでのイベントには、老若男女さまざまな人が集まる

(写真提供:株式会社ミユキデザイン)

若い方が集まるようになって商店街の関係人口は増えていると思いますが、昔から柳ヶ瀬で生活する方、お店を構えている方は、街の変化をどのように捉えているのでしょうか。

末永

もちろんポジティブ・ネガティブの両面ありますが、若い世代の活動を応援してくれる人は多いですね。会社のスタッフが毎週水曜の朝に始めたラジオ体操は、商店街に暮らす方も一緒に参加されています。共助とまではいかないにしろ、お互いに健康管理をしたりご近所付き合いが生まれたりしているように思います。

世代を問わない、新しいコミュニケーションが生まれているんですね。

末永

私たち世代が主になって構築した仕組みの中では関係性が生まれなかった人たちも、街で日常を過ごす若い世代が接点を持っています。人によって関係性のグラデーションが異なるからこそ、街全体の雰囲気が変わりつつあるのかもしれません。

どんな人でも街に参加できる仕組みをつくり出す

人が集まる商店街であり続けるために意識していることはありますか。

末永

結局、大切なのは「人」だと思っています。名物店主のような面白い人がいると足を運びたくなりますよね。どこでも同じサービスが受けられる便利さではなく「面倒くさいけれど、わざわざ来た」という出来事が起こる商店街になってほしい。そのためには面白い人がいて、面白い人が訪れたくなる場所をつくることを意識しています。

—その意識は、街で何かを始めてみたい人の受け皿にもなりそうです。

末永

私たちが運営している街の交流体験プログラム「柳ケ瀬日常ニナーレ」も、そういった取り組みの一つです。柳ヶ瀬周辺地域をフィールドとした体験プログラムを企画したり参加したりできる取り組みで、柳ヶ瀬によく遊びに来ている人の街歩きプログラム、食べるのが好きな人と食べ歩きするプログラムなど、街を活用して好きなことを実践できる仕組みです。

特別な仕事や事業をしていなくても、街に参加できる企画なのですね。

末永

実は、サンビルも商店街に出店する体験であり、街に関わる仕組みの一つです。個人の価値観がたくさん集まることが街の面白さとなり、関わる人を増やすことにつながっているはず。サンビルや柳ケ瀬日常ニナーレ、トークライブ、シェアキッチンなど人によって関わる入口はさまざま。それぞれが柳ヶ瀬商店街に人を集める仕掛けになっています。

2024年4月には、柳ヶ瀬商店街を拠点にお店を出せる「サンビルストア」がオープン

今後、柳ヶ瀬商店街で実現したいことはありますか?

末永

商店街に宿泊施設をつくりたいと思っています。朝は喫茶店でのモーニングから始まり、昼に街を散策、夜は古き良き歓楽街を楽しむなど、一日の過ごし方にもバリエーションがあります。商店街は、まるでテーマパークに感じられるほど昭和の風景と文化が詰まった存在です。独自の魅力を体験できる宿泊施設を手掛けたいですね。

—柳ヶ瀬商店街の中で宿泊できたら、暮らすように街を楽しめそうです。

末永

岐阜市には、岐阜城がそびえ立つ金華山や清流・長良川もあります。自転車で移動できる距離で商店街の雑多な雰囲気とゆったりとした自然のどちらも享受できる豊かな街です。将来的には、柳ヶ瀬商店街だけで捉えるのではなく、街の全体を愛でていけるような環境をつくりたい。岐阜の街にあるものをもっと広く面白がって、大事にして、次の世代につなげていけたらいいですね。

PROFILE
川村健一

末永 三樹

柳ヶ瀬を楽しいまちにする株式会社 クリエイティブディレクター

株式会社ミユキデザイン 代表取締役

1977年岐阜県生まれ。設計事務所勤務を経て、2012年にミユキデザインを設立。「あるものはいかそう、ないものはつくろう」を理念に、建築的な視点を持って「まちをアップデートし、次世代へ手渡す」ことを目指し、設計、デザイン、企画などを包括的に考え実践。


柳ヶ瀬を楽しいまちにする株式会社:http://ysbmkt.com/company/

株式会社ミユキデザイン:https://miyukidesign.com/

CREDIT

ライター:笹田理恵 撮影:加藤美岬 編集:モリヤワオン(ノオト)

ブランド名

商品名が入ります商品名が入ります

★★★★☆

¥0,000

PROFILE

山田 太郎

CO-FOUNDER & CTO

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。

山田 太郎

CO-FOUNDER & CTO

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。

SHARE

この記事を読んでいる人に人気の記事