親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。
オフィスで、お家で、サードプレイスで……さまざまな仕事スタイルが増えた昨今。しかし、どこで働いていても仕事の悩みはつきまといます。連載企画「専門家に聞く!WORK GOOD」では、そんな悩めるワーカーのモヤモヤを解消し、スッキリとした気持ちで仕事に臨むためのヒントを、さまざまな分野の専門家が解説します。
在宅ワーカーからよく聞かれる「ワークスペースが常に散らかっていて、仕事に集中できない」「デスク周りにものがあふれている」といった悩み。解決するには、機能的なワークスペースをつくり出す片付け方を知る必要があります。
今回お話を聞いたのは、整理収納アドバイザーとして活躍し『集中できないのは、部屋のせい』など片付けに関する多数の著作のある米田まりなさん。片付けの正しい手順は? ワークスペースに必要なもの・不要なものとは? 米田さんのメソッドをたっぷりとご紹介します。
片付けは「1.整理」「2.収納」「3.整頓」の手順を守る
片付けの際、とりあえず引き出しにしまう、手当たり次第に捨てるなどの手段をとる人は多いもの。しかし、それではものの定位置が定まらず、またすぐに散らかってしまいます。そこで覚えてほしいのが、片付けを「1.整理」「2.収納」「3.整頓」の3段階に分ける考え方です。
最初の「整理」では、片付けたい場所にあるものをすべて出し、使用頻度や愛着を基準に「いる/いらない」を判断します。次の「収納」では、必要と判断したものの快適な定位置をひとつずつ決めていきます。最後の「整頓」は、使ったものを定期的に定位置に戻す作業です。整理と収納がきちんとできていれば、それほど難しくないと思います。
3つのステップのうち、もっともつまずきやすいのが収納です。どこに何を置いていいかわからず、とりあえず便利そうな収納グッズを買ったり、ワゴンなどを買い足して収納力を高めようとしたりする人は多いですが、本質的な解決にはなりません。それよりも、あるべきものがあるべきところに収まっていることが大切です。

ワークスペースの場合は、チェアに座った状態で手を真横に伸ばし、上下30度ずつ動かすと届く「ゴールデンゾーン」に必要なものが揃っている状態が理想ですね。ここにほとんど読まないビジネス書などを並べていると、せっかくの空間を無駄にしてしまいます。
本当に使うものを見極める方法としておすすめなのは、整理で絞り込んだものをいったん紙袋などにしまい、デスクまわりに何もおかず1週間過ごしてみること。必要に応じて袋から取り出し、「毎日使う」と思えたものにだけ、定位置を割り振りましょう。
そのまま2週間、3週間、1か月と同じ過ごし方をしても1回も使わなかったものは、ゴールデンゾーンに置く必要はありません。おそらく、整理したもののうち9割は実際には使わないのではないでしょうか。
整頓が苦手なら、とりあえず置ける「仮置き場」をつくる
整理と収納がうまくいっていれば、基本的には日々の整頓はスムーズにできるはず。それでも、仕事が忙しくて毎日整頓するのは大変と感じることもあるでしょう。そんなとき、やってみてほしいことが2つあります。
1つめは、週に1回、10分でもいいので「この日・この時間は必ず整頓する」と決めること。例えば「毎週土曜の午前中にデスクやモニターを拭き、散らばったものを定位置に戻す」といったように、自分が無理なくできるルールをつくって実行してみましょう。それが習慣になれば、頻度を増やす、他の空間も整頓するといったステップに進みやすくなります。
2つめは、「とりあえずなんでも置いていい仮置き場」をつくること。毎回必ず定位置に戻そうとせず仮置き場を活用すれば、気持ちが楽になります。仮置き場は、デスク横の棚など平らでものが置きやすい場所に設定します。ものでいっぱいになったときか、週末などにまとめて整頓しましょう。
書類の整頓が苦手という人も多いですよね。細かく分類してラベリングする、穴を開けてバインダーに綴じるなどの面倒な作業は、片付けの失敗のもと。肝心のときに必要な書類が見つからなかったり、せっかくファイリングしたものが古くなって不要になったりする可能性があります。
書類の片付けは、大まかなジャンルごとに分けたシンプルなクリアファイルに入れるだけで十分です。100円ショップの自立する書類ケースにクリアファイルを入れると、すっきりと収納できます。

だいたい1シーズンくらいでファイルがいっぱいになるので、衣替えなどのタイミングで中身をすべて取り出し「いる/いらない」を判断しましょう。必要な書類のうち、原本でなくていいものはスキャンしてデータ化するのがおすすめです。量が多いなら、スキャン代行サービスを利用するのもいいですね。段ボール1箱分で1000円ほどでお願いできるところもありますよ。依頼の際は、機密書類が混ざらないよう気をつけてください。
片付けが苦手なら、インテリアよりも機能性を優先
片付けが苦手なら、インテリア優先の考え方はいったん捨てましょう。理想の家をつくろうとするときに「来客に素敵だと思われたいから、北欧風の食器棚を置こう」「映画が好きだからスクリーンを置きたいな」などと思う人は少なくありませんが、それらは本当に、毎日必要なものでしょうか?
本当に優先すべき機能を洗い出したいときは、普段の家での過ごし方を円グラフで可視化してみてください。「来客の時間が1パーセント未満なのに、そのために置いた家具が床面積の25パーセントを占めていて、ワークスペースが圧迫されている」となったら本末転倒ですよね。円グラフの大きいものから順にスペースを確保し、整えていくのが基本です。
ワークスペース自体はさほど広い必要はなく、1畳分ほどあれば十分です。それよりも、その他のスペースときちんと区切られていること、業務に適したデスクとチェアを使い、高さが自分に合っていることが大切です。ベストなのは、壁や窓に向かってデスクが配置され、横に収納棚が置いてある状態ですね。収納棚は、ワゴンなどの凝ったものでなく、シンプルなカラーボックスで十分です。
デスクの上に置くものは最小限にしましょう。ついおしゃれな洋書や小物を置きたくなりますが、それらが目の前の仕事に役立たないなら、単に作業領域を狭めるだけです。よく、在宅ワーカーの方から「仕事に集中できないからカフェに行く」という声を聞きますが、自宅よりカフェのほうがデスク自体は狭いはず。それでも集中しやすいのは、デスク上にものが少なく、実際に使えているスペースが広いからです。せっかく自宅にワークスペースがあるのに、わざわざカフェに行くのはもったいないですよね。
また、デスク周りがごちゃついていると余計な視覚情報が常に入ってくるので、いっそう集中しにくくなります。大きめのマウスパッドをデスクに敷いて、「ものを置いていいゾーン」と区切ると、視界がすっきりしますよ。
カラーボックスをダイニングテーブル専用の収納に
家族と同居していて仕事部屋がなく、リビングやダイニングで仕事をしている人もいると思います。その場合は、たとえ狭くても部屋の一角に専用のワークスペースをつくってほしいです。
ダイニングテーブルで仕事をすると、家族の存在や終わっていない家事が気になり、どうしても集中が途切れやすくなってしまいます。できれば視界を遮り、人の気配をブロックできる空間をつくりましょう。
とはいえ、実際にはダイニングテーブルで仕事をせざるを得ない場合もありますよね。そうした人は「仕事のたびに卓上調味料をどかし、食事のたびにPCやモニターを片付けるのが面倒だな」と感じているのではないでしょうか。
おすすめは、ダイニングテーブルのすぐそばにカラーボックスを置くこと。例えばある段にはモニターやPC、ケーブル、ほかの段には卓上調味料、ティッシュといったように、ダイニングテーブル上で使うものすべてを片手で放り込めるような場所をつくっておくのです。

カラーボックスは中身がむき出しで見栄えはよくありませんが、だからこそ取り出しやすいというメリットがあります。目隠しのカーテンなどをつけると一気に使いにくくなり、出しっぱなしの原因になるので避けましょう。ただし、クリアファイルを入れる書類ケース、ケーブルの絡まりを防ぐカゴなど、実用性の高い収納グッズはぜひ使ってください。
一度完璧に整えたあとにカスタムすると満足度アップ
片付け術を身につけ、理想のワークスペースを維持できるようになれば、在宅ワークの効率は格段に上がります。私の著書の読者からも「カフェに行かなくなった」「出社よりもリモートワークのほうが集中できるようになった」という声がよく聞かれます。
もちろん「散らかっているほうがアイデアが生まれやすい」「インテリアは軽視したくない」という人もいるでしょう。しかし、ワークスペースがすっきり整っているに越したことはありません。
そうした人には、いったん片付けに専念してワークスペースを整え、使い慣れてきた段階で自分好みにカスタムすることをおすすめします。片付け上手になったあとに目指してほしいのは、機能性とワクワク感を両立した「クリエイティブに散らかったデスク」。今回ご紹介したメソッドを意識して、あなたにとって最適なワークスペースをつくってくださいね。
取材・執筆:小晴 アイキャッチ・図版:サンノ 編集:モリヤワオン(ノオト)
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