親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。
仕事をする場所とプライベートの時間を過ごす場所が、どちらも自宅になる在宅ワーク。「自宅で仕事をしていると集中できない」「仕事とプライベートの切り替えがうまくできない」といった悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。
今回は、著書「我慢して生きるほど人生は長くない」(アスコム)「心療内科医が教える本当の休み方」(アスコム)などが注目を集める内科医・心療内科医の鈴木裕介さんに、在宅でも仕事に集中する方法や、上手に頭を切り替える方法などについて教えていただきました。
交感神経を刺激するルーティーンを取り入れ、集中力アップ
在宅ワークの悩みでよく聞かれるのが、「仕事に集中できない」というお悩みです。その理由の一つには、在宅ワークの場合、副交感神経優位の状態から交感神経優位への切り替えがしづらいことが挙げられます。
交感神経は活動する際に働く神経で、副交感神経は休息やリラックスをするときに働く神経です。寝起きは副交感神経が優位な状態なので、仕事をするために、交感神経が優位な状態へと持っていく必要があります。
会社に通勤している人は、朝日を浴びながら歩いて駅やバス停に向かったり、階段を上り下りしたりしますよね。このように仕事に出掛ける過程で日差しを目に取り込み、活動量が増えることで、徐々に交感神経が優位になっていきます。しかし、在宅ワークには通勤の過程がないので、なかなか交感神経が優位になりません。
そのため、在宅ワーカーは意識的に交感神経が優位になるようなモーニングルーティーンを組む必要があります。朝起きたら、少し散歩をして活動量を上げる。朝日をしっかりと目に取り込む。朝にこうしたルーティーンを取り入れることで、在宅ワークでも「さあ、仕事をするぞ」というモードに入りやすくなります。
また、「在宅ワークだから」とパジャマのまま仕事をしていませんか? 着替えにはリラックスモードから仕事モードへと「モードチェンジ」する効果があります。起きたらすぐ、パジャマを脱いで着替えるようにしましょう。

“環境”と“モード”を結びつけ、集中できる場所を用意
仕事の集中力を高めるもう一つの重要な要素が「環境」です。人間は記憶を頼りにして生きているため、“仕事をする場所”と記憶した環境で働いているかが非常に重要になります。
例えば、「在宅ワークだから」とベッドの上で仕事をしている人がいるかもしれません。しかし、ベッドの上で仕事を続けていると「ここは仕事をする場所なんだ」と脳や身体が記憶し、ベッドで眠れなくなる恐れがあります。寝る前にベッドの上でスマートフォンを触っている人も多いと思いますが、これも同じく睡眠に影響が出る可能性があるので要注意です。
このように、人間にとって“過ごす環境”と“モード”は結びつきが強いもの。ですから、「仕事モードに入る場所を決める」ことも重要なのです。「自宅では仕事に集中できない」という人は、「自宅は休息モードに入る場所」との認識が強いと言えます。その場合は、カフェやコワーキングスペースなど、自宅ではない場所で仕事をすると良いでしょう。もしくは、自宅の中でも仕事をするゾーンを決めて、「ここは仕事をする場所」と脳に再学習させる方法もあります。

また、自宅で仕事をしていると、プライベートのことが気になって、なかなか集中できないという人も少なくありません。家事のように自分でタイミングをコントロールできるものは、時間を決めて管理するのがおすすめです。
家事は、集中力が切れてきたり、考えに詰まったりした時に意識的に取り入れると、気分を切り替える良い機会になります。お皿を洗ったり洗濯物を畳んだりといった単純作業に集中することで、瞑想的な効果を得ることができます。
コツは、「この家事には心を整える効果があるんだ」と思いながら取り組むこと。私も気分転換に皿洗いなどをしていますが、心は落ち着くし、妻からは褒められるしで、良いことづくめです。
「切り替え」が苦手な人は入浴や食事でモードチェンジを
会社に通勤しているのであれば、退勤後、自宅までの道中で「今日の仕事は終わり! あとはプライベートの時間だ」と切り替えられますが、在宅ワークだとなかなかうまく切り替えられない人もいるのではないでしょうか。そのため、就業時間以降も、つい仕事の続きをしてしまったり、いつまでも仕事のことが頭から離れなかったりする人もいるはず。
そんな「切り替え下手」な人は、意識的に「仕事モード」からモードチェンジをする必要があります。仕事が終わったら、「お風呂に入る」「パジャマに着替えてしまう」「ご飯を食べる」といった行動で、身体や心を休息モードへとモードチェンジをしましょう。
休息モードになっても、しなければならないことや仕事のアイデアなどを思い出してしまったら、それは書き出しておいて、明日以降の自分に託しましょう。そうすることで、それ以上仕事に対して意識が向かないようにします。また、仕事が終わったらメールやチャットの通知はオフにするなど、できるだけ仕事に気を取られないようにする工夫が必要です。
休日でも仕事モードをオフにするのが苦手な人は、自然に触れられる場所へ足を運んでください。自然の中にいるだけで、体が副交感神経優位のリラックスモードになるということがわかっています。緑地の中を散歩するだけでもかなり癒されるはず。ぜひ自然の多い場所に赴いて、ぼんやりする時間をとってください。
在宅ワークならではの疲労に注意
在宅ワークの悩みには、「なかなか疲れが取れない」といったものもあります。そもそもずっと家にいるからといって、「在宅ワークは疲れない」と思うこと自体が勘違い。
例えば、オンラインミーティングは、人にとって非常に負荷が高いものです。人間は、基本的に表情に気を取られるようにできています。そのため、オンラインミーティングで複数人の顔がいっぺんに表示されると、非常に大きな認知負荷がかかってしまうのです。また、対面での会話の場合、自分の顔が目に入ることはないため、画面に表示された自分自身の顔も、大きなストレスになります。

オンラインでのコミュニケーションは、神経学的に相手に親しみを感じづらかったり、タイムラグがあることで相手への理解力や親近感が低下したりします。実際、オンラインではコミュニケーションを通して得られるメリットが少ないということが研究でわかってきています。
このように、在宅ワークには特有の疲労があり、対策が必要です。特に、オンラインミーティングが1日に4つ以上続くとメンタルヘルスリスクが高まることがわかっているので、あまり詰め込まないようにしましょう。できればオンラインミーティングは40分実施したら20分休憩する、オンラインミーティングが続く場合はお手洗いに立って仕切り直すなど、意識的に休憩時間を入れるのも大切です。
自分の動物的感覚を大事にして、仕事の環境を整えよう
在宅ワークは、特有の疲れを感じることも多いですが、自宅なのでオフィスに比べて制約が少なく、自分で組み立てられる要素が多いのは大きなメリットでもあります。ですから、自分が心地よいと思う空間をつくったり、リラックスできる時間を意識的に取り入れたりと、自分の「動物的感覚」が好むような環境を組み立てて仕事をするといいでしょう。
私自身、テンションが上がるように、自分の仕事部屋には大好きなゲームのグッズを置いています。私たち人間は環境の中で生きているので、自分なりにやる気が出る環境を整えるのはとても効果的。自宅であれば、アロマを焚いたり好きな音楽を流したりもできるので、自由度はとても高いです。心と体が調和しやすい環境を整えて、上手にモードを切り替えつつ仕事に取り組んでください。
ライター:神代裕子 アイキャッチ・図版:サンノ 編集:モリヤワオン(ノオト)

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