親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。
デザイン、座り心地、サイズ感……チェックすべきポイントがたくさんある椅子や家具を選ぶ際には、実物を見てみたいという人も多いはず。もしオカムラ製品の購入で迷いがあるなら、全国各地に存在するショールームに訪れてみてはいかがでしょう? 大型家具店やショップと比べるとなかなか訪れる機会は少ないかもしれませんが、製品を詳しく知るのにぴったりの場所なんです。
今回は、モノ選びへのこだわりを持つゲストとともにオカムラショールームへ訪れ、「お気に入りの一脚」を見つけるまでを擬似体験する特別企画を実施。登場いただくのは、俳優・モデルとしてだけでなく、ものづくりブランドの立ち上げや雑誌でのエッセイ連載など、多岐にわたる活動を行う菊池亜希子さん。穏やかでのびのびとした印象でありながらも、自分自身の「好き」を軸にした暮らしぶりが印象的な菊池さんですが、一体どんな椅子を選んだのでしょうか? 家具に対する思い入れや、家族との生活についてもたっぷりとお話をうかがいました。
これからのオフィスは、働く人の心地よさのために
菊池さんが訪れたのは、東京・紀尾井町に位置するオカムラ ガーデンコートショールーム。チェアやデスクといった定番製品はもちろん、快適な労働環境を叶えるためのさまざまな提案や取り組みが紹介されており、実際に見て触って確かめることができます。チェア探しの旅は、まずは広々としたショールーム全体を見学するところからスタートしました。
大きなモニター画面のついたブースや働く人の健康を考慮して開発したオフィスファニチュアシリーズ「PARK WORK」など、従来のオフィスとは異なる仕掛けの数々に、菊池さんも「最新のオフィス環境ってすごくおしゃれなんですね!」と興味津々の様子。
「PARK WORK」のひとつであるバランスボール
オカムラではオフィスの緑化を推進する取り組みも行っている。写真に写っているのは、いきいきとした植物の質感を残せるよう、特殊な加工を施したプリザーブドフラワーの吸音パネル
菊池さんがとくに注目したのが、オフィスでの瞑想習慣をサポートする「マインドフルネスブース」。オフィスの限られた空間のなかでも、気軽に自分自身と向き合う空間をつくることができます。また、無理なく正座姿勢を保つことができる「マインドフルネススツール」とあわせて使用することをおすすめしています。
折り畳みできるフェルト製のマインドフルネスブースは、ちょうど大人一人が入れる大きさ。菊池さんが座っているのがマインドフルネススツール
在宅ワークが広く浸透するとともに、「働く」のあり方が大きく揺らいだ近年。生活と仕事を切り分けるのではなく、一人ひとりが健やかに生きていくためにはどうしたらいいのか……そんな問いかけの答えが、この場所にはぎゅっと詰まっているようです。そんな光景を目の当たりにした菊池さんは「働くことって、単純に大変ですよね」とつぶやいたあとに、こう続けてくれました。
労働って、どうしても心身ともに負担がかかってしまうものだと思うんです。でも、今日見学させてもらった空間からは、働く人への感謝やねぎらいのようなものを感じました。オフィスにいる人たちが、心地よく日々を送れるようにするための工夫がたくさん散りばめられているんだなって。
オフィスは「オン」の場所だけど、すこしでも緊張をゆるめて、フラットな状態で働くことも大事だと思うんです。きっと、そのほうがアウトプットもその人らしいものになるんじゃないでしょうか。もしこのショールームのようなオフィス環境で実際に働いている人がいたら、すごく人間らしくて、のびやかに過ごせているんだろうなって想像できます。
菊池さんが選ぶ「お気に入りの一脚」。選ばれたのはどのオカムラチェア?
ショールームの見学が一通り終わったところでいよいよ本題へ。オカムラチェアがずらりと並ぶシーティングエリアに移動して、10種類のチェアを試してもらうことに。はたして、お気に入りの一脚は見つかるのでしょうか?
ホームユース向けのコンパクトチェアから高機能なフラッグシップモデルチェア、さらにはゲーミングチェアまで、さまざまな特徴を持つ10種類を試してもらった
椅子ごとの個性を楽しみ、吟味する菊池さん
「カフェにありそうなデザインでかわいい!」「思ったよりも背面がしなっていいですね」と感想を漏らしながら、一つひとつたしかめるようにチェアに腰掛ける菊池さん。デザインも機能も多種多様なラインナップを比較しながら、特に気になる製品を3つまでしぼり込みます。
まず1つ目は「コンテッサ セコンダ」。流麗なフレームラインが美しく、世界クラスの強度と高い機能性を併せ持つ、オカムラチェアのなかでもフラッグシップモデルに位置づけられているシリーズです。
座ったときに腰や背中がフィットする感覚があります。肩も包み込まれるみたいで、首に不安がある人にもよさそう。あと、思ったより後ろに傾く! まるでハンモックに身体を預けているみたい。仕事のときだけじゃなくて、映画を見たりのんびりしたりいろいろな使い方ができるんだろうなと思いました。
コンテッサ セコンダ(写真は大型ヘッドレスト付きのエクストラハイバックタイプ)
2つ目に選んだ「サブリナ」は、背面のメッシュと、それを支えるフレーム部分が最大の特徴。Y字のリングフレームが背中をやわらかく受け止め、座ったままの状態でさまざまなシーティング調整を可能にしているチェアです。
背面部分がやわらかくてしなやかですね。背中の動きに追従してくれるし、ぐいーんと伸びをしても密着感があります。より身体と近いというか、まるで筋肉の一部のようにも感じられます。
サブリナスタンダード(ハイバック)
最後の候補に挙げられたのは、フレームやキャスターにいたるまで統一感のあるカラーコーディネートを叶える「シナーラ」です。オフィスチェアでありながら10kg程度と軽量で、インテリアに馴染むすっきりとしたデザインとなっています。
デザインではこれが一番好みでした! 背面から座面、脚のパーツまでワントーンで統一しているのが素敵です。なかなかこういうカラーリングの椅子は見ないですよね。可愛さとスタイリッシュさがいい塩梅なので、カフェにあってもおかしくないし、お家に置いてもなじみそう。
「コンテッサ セコンダ」「サブリナ」「シナーラ」と、それぞれ違った魅力がある椅子を前に悩ましい表情を浮かべながらも、「やっぱりこれかな」と菊池さんが最終的に選んだのは「コンテッサ セコンダ」。決め手は、座り心地とデザインのバランス感だと教えてくれました。
よくお父さんが座っているようなリクライニングチェアってあるじゃないですか。あれに近い座り心地のよさがありました。身体全体が包み込まれているみたいで、すごく楽です。仕事をするときにこんなに楽でいいのかなって思うくらい(笑)。同じ姿勢を続けて肩こりや腰痛が気になってきたタイミングで、頭を支えてもらいながら後ろにぐーっと伸びができるのもうれしい!
私はよく自宅のリビングで仕事をするんですけど、白いカラーだったら置いても圧迫感が出ず、スタイリッシュに見えそうなのもいいなと思ったポイントのひとつです。最近、自宅とは別で小さなアトリエを借りたので、そこに置きたいなと思いました。
ゆっくりと休む、余白の時間。家具は寄り添ってくれる存在
お気に入りの一脚が見つかったところで、インテリアや家具の選び方についてもお話をうかがいました。モデルや俳優としてだけでなく、お仕事で執筆したり、イラストや洋服のデザイン画を描いたりすることも多いという菊池さんですが、意外にも仕事環境に対するこだわりは薄かったそうです。
原稿を書く仕事が多いわりに、座り心地で椅子を選んだことってほとんどなくて。いつもはバランスボールや膝置きのあるバランスチェアを使っています。ノマドワーカーでいろいろな場所で作業するほうだからか、仕事環境を整えようという意識が薄かったのかも……。
ただ、椅子自体は好きでたくさん持っています。一期一会の出会いを大切にしながら、自分の心が動いたものを集めているので、用途もデザインも全部ばらばら。木製だったりレザーだったりジャンルもまちまちなんですが、不思議と部屋全体で見ると馴染んでいて、いい具合に仲良くしてくれています。
昔から古い家具に心惹かれることが多かったという菊池さん。手に取るものは、完成度が高すぎるものよりも、どこか面白みがあるものばかりでした。しかし、家族と暮らし始めてからは、また違った「新しい風」を取り入れたいとも思うようになったんだとか。
一人暮らしをしていた頃から集めていたものをいまの家にも取り入れているので、木の質感のものが多いんですよね。でも、最近はシャープで、モード感のあるものにも惹かれてきていて。今日座らせていただいた「シナーラ」なんかまさにそうなんですけど、色がパキッとしているものや、スチール素材の家具を探すことも増えてきました。
菊池さんが座っているのは、シナーラのオレンジレッドカラー
一人暮らしの頃と、小さい子どもと一緒に生活するいまとでは、家具の選び方も変わるのでしょうか。そんなふうに尋ねてみると「子どものことはほとんど意識せず選んでいます」という答えが。
最近、革張りの年代物のスワンチェアを買ったんです。そこに子どもが定位置みたいに座っていて、いつも「生意気だな!」って思います(笑)。自分のなかでは頑張って購入したデザイン性の高い家具も、子どもにとっては日用品でしかないんですよね。その線引きのない感じが見ていてすごく楽しそうで。
子どもが生まれて成長していくに伴って、家自体が子どもを育てるための「巣」っぽくなってきた感覚もあるんです。その状態で、いつもきれいに家のなかを整えることは難しいんですけど、きっといましかない空気感なんですよね。だからこそ、大人も子どもも心地よく過ごせる環境にしたいですね。
自分自身や家族の心地よさをひとつの軸にしながらも、新たな価値観を取り入れることも忘れない菊池さんですが、昔から変わらず大切にしている家具があるそう。
一人暮らしを始めたばかりの頃、近所の工務店でオーダーしたオープン棚があって。CDや本、小さい雑貨を収納したり、写真立てを飾ったりするのにぴったりのサイズ感なんですけど、時代によって置くものが変わるのが面白いなと思います。
昔はDVDをざーっと並べていたけど、いまは配信で見れる映画も多いから減ってきたし、子どもが生まれたばかりの頃、危ないからと撤収していた割れ物もいまでは置けるようになりました。ぎゅうぎゅうにものを詰め込んでいるから全然スッキリしてないけど、それが自分にとってはちょうどいいんです。
椅子、テーブル、収納棚……私たちの暮らしは、いつも家具とともにあります。長い時間をともに過ごしていると、代わり映えのないように思える瞬間もあるかもしれませんが、言い換えれば「じっとそばで見守ってくれている」とも考えられます。
最後に「快適な暮らしとは?」と尋ねると、こんなふうに答えてくれました。
ちょっとした余白があって、風通しのよさを感じることでしょうか。忙しくなってくると息が詰まってくるし、力を抜けないことも多くなると思うんです。でも、家にいる時間だけは無理せず、本来の自分自身に戻れたらいいですよね。忙しくなると部屋も散らかってきちゃうので、余白を保つためのお掃除や片づけも大事だと思います。
あと、私は忙しく暮らすことが本当に苦手なんです。基本的にちゃんとしてないし、すぐだらだらしちゃうし。でも、忙しくすること自体が美徳ではないと私自身は思っているので、自信を持って休むようにしています。子どもたちが寝たあとに、お気に入りのチェアに腰掛けて、ちょっと贅沢して買ったクッションにもたれて、ポップコーンを食べながら映画を観て……そういう時間が大好きなんです。家具は、そんなひとときに寄り添ってくれる大事な存在のひとつです。
多くの女性誌でモデルとして活躍する一方、その独特の存在感で女優としても注目され、映画『森崎書店の日々』(2010)で初主演を果たす。2023年はWOWOWドラマ「杉咲花の撮休」「ながたんと青と~いちかの料理帖~」や5月12日公開予定の映画「おとななじみ」などに出演。また、自身が編集長を務めるライフスタイル・ファッションムック『菊池亜希子ムック マッシュ』(小学館)は、独自の世界観を築き上げ累計56万部越えのヒットシリーズとなっている。イラスト&エッセーで綴った『みちくさ』(小学館)や『菊池亜希子のおじゃまします 仕事場探訪 20人』(集英社)、『へそまがり』『おなかのおと』など著者としても人気を集めている。4月1日よりInterFM「スープのじかん。」(毎週土曜9:30~10:00)も放送スタート。
ライター:石澤萌(sou) 撮影:寺内暁 編集:石澤萌(sou)、服部桃子(CINRA,inc)
衣装:ブラウス / エリテ(ケイエムディーファーム)、ワンピース / サイ(マスターピースショールーム)、その他スタイリスト私物
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