親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。
建築を学ぶ学生から、イラストレーターの道へ
—Masakiさんといえば、『着ぐるみ家族』が人気ですね。あの可愛らしくもにぎやかな家族像はどうやって生まれたんですか?
元をたどると、小さい頃からよく一緒に遊んでくれた家族との思い出ですね。それこそ、ごっこ遊びとかをしていたんですよ。そういう断片的な記憶が自分の中にずっと残っていて、2020年に緊急事態宣言が出たときに「おうち時間が少しでも楽しくなればいいな」という思いから、家の中の出来事を普段と違う目線からおもしろく描くことを始めました。
—作中には家事や育児のあるあるも散りばめられていますが、あれはMasakiさんのご家族をモデルに描いたものですか?
—Masakiさんはフリーランス2年目とのことですが、もともとイラストレーターを目指していたんですか?
いえ、大学のときは建築を学んでいました。子どもの頃から絵を描いたり、レゴで遊んだりするのが好きだったので、将来はものづくりがしたいと漠然と思っていて。大学受験のときに「ものづくりと言っても幅広いなあ」と考えて、資格があって仕事に困らない建築を選んだんです。
—そこからなぜ建築の道ではなく、イラストレーターの道に?
—いきなりフリーランスのイラストレーターにはならなかったんですね。
作家活動とクライアントワークの両輪で実現する、バランスの良い創作活動
—フリーランスになった現在、1日の仕事の流れは決まっていますか?
いまは基本的に在宅ワークです。だいたい朝10時ぐらいから作業を開始するのですが、基本的にはずっとiPadでイラストを描いていますね。仕事内容としては、個人の作家活動である『着ぐるみ家族』と、クライアントワークとして企業様から依頼をいただいたイラストカットを作成しています。
—作家活動とクライアントワークの仕事の配分はありますか?
週の前半は自分の作品、週の後半はクライアントワークをメインに取り掛かるようにしています。以前はスケジュールを決めず〆切が近い仕事から取り掛かっていたんですけど、あるとき筆が乗っているときと、そうでないときに描く線に違いがあることに気付いたんです。それからは、週の初めに自分の描きたいものを描いて、腕が慣れてきた後半にクライアントワークを進めるというサイクルにしています。
—それも合理的な働き方ですよね。そのとき描きたいものが描ける自分の作品に取り掛かることで気分を上げて、万全の状態でクライアントワークに臨めるようにする、と。
そのやり方が自分に一番合っていましたね。クライアントワークをすることで、作家活動への良い影響もありまして。クライアントワークでは、今までやったことのないジャンルに挑戦できるので、そこで得た経験をまた自分の作品に還元できています。
ふたりでデスクワークしやすい、ちょうどいいレイアウト
—普段仕事をしているこの部屋は、パートナーさんと一緒に使われているんですね。
—Masakiさん側はL字型にデスクが配置されていますが、どう使い分けているんでしょうか?
デザイン作業やメールチェックなど、いわゆるPC作業をするときは手前側のデスクを使い、iPadでイラストを描くときは壁側のデスクを使っています。同じデスクだと仕事内容が変わるたびに片付けをする必要があって面倒なので、デスクをL字に配置しました。これだと、椅子を回転させるだけで作業スペースを変えられるのでラクなんです。
必要な仕事道具を集めた後、存在感のあるグッズで余白を埋める
—モノが少ないわけではないのにとてもスッキリしたワークスペースだと思うのですが、どのような考え方で作った空間なんですか?
まっさらな状態から、まず絶対に必要なモノだけを一度並べて、余白を自分の好きなモノでバランスよく埋めていきました。余白がありすぎると集中できないので、モノはちょっと多いくらいがちょうどいいかなと思っています。
—部屋のベースとなる色味も統一していますよね。
そうですね。なるべくシンプルな白やベージュで統一することで、自分が好きで置いてる小物や雑貨の色が映えて、キャラクター性が出るようになればいいなと。床にもタイルシートを貼っているんですけど、それもモノが引き立つような色味を選びました。
—モニター周りにはフィギュアが並んでいますね。
ここには、好きな作家さんの作品や、子どもの頃に好きだったモノを置いていますね。イラストを描くときに直接インスピレーションを受けることはないですが、造形として曲線部分や人の形、等身などを参考にしています。
—Masakiさんはデフォルメされたイラストを描くので、その参考にもなっているんですか?
そうですね。デフォルメってすごく難しいんです。キャラクターのどこを誇張してバランスをとって言ったら良いのか。対象物自体をしっかり観察して、何が「そのモノらしさ」「そのキャラクターらしさ」を担っているのか見定めたうえで、それを崩さないようにして誇張や省略をしていくわけです。日頃から、そういう造形の部分を見てしまいますね。
—そう思って眺めてみると、奥から手前に行くにつれて、フィギュアがだんだん抽象的になっていますね。
意識していませんでしたが、確かにそうですね(笑)。
前のめり姿勢になりがちなイラストレーターの強い味方「シルフィー」
—最近、新しく「Sylphy(シルフィー)」を使い始めたとお聞きしました。
そうなんです。もともとはゲーミングチェアを使っていたんですけど、座面が固いのでお尻が痛くなったり、革なので夏場は蒸れて暑かったりして……。そもそも長く使いすぎて劣化していたので、新しい椅子が欲しいなとはずっと思っていました。
—なぜシルフィーを選んだのですか?
イラストを描くときって、どうしても背中が丸まる「前のめり姿勢」になってしまうんです。でも、この姿勢は背中と腰、お腹に一気に負荷がかかり、長時間維持するのは体に良くないと整体の先生に言われたので、腰への負担が和らぐ椅子を探していました。
そんな折に見つけたシルフィーは、背もたれを前に倒した状態でロックをかけることができるんです。この機能のおかげで背中が丸まらず、腰から頭までが一直線になる「前傾姿勢」を維持できます。これ、見た目以上にすごくラクなんですよ。
—確かに、ちょっと背中が反る感じで固定されていますね。
あと、ワークチェアって「大きい」というイメージを持っていたので、部屋が狭くならないかなということは気にしていましたが、置いてみたら思ったよりもコンパクトに感じましたね。シルフィーはカラーバリエーションが豊富で、この部屋のベースカラーであるベージュを選べたことで空間に馴染み、圧迫感が出なかったのかもしれません。
—使い始めてから、何か仕事に大きな変化はありましたか?
長時間作業していても、お尻も腰も背中も全然痛くならないことが一番の変化ですね。体や首が痛くなって集中力が切れることがなくなりました。むしろ「え、もう6時間経ってる。夕飯の支度をしなきゃ」ということが増えるくらい、集中力が上がりましたね。
一方で、リラックスするときもこの椅子です。寝室にもソファチェアがあるんですけど、結局シルフィーに座っているときが一番落ち着きます。だからたまに、ぼーっとしながら漫画を読んだり、スマホを見たりするようになって、椅子の上で生活している時間が、いま増えています(笑)。
楽しい部屋づくりをして、自分らしい表現を模索していく
—ワークスペースは、Masakiさんの中では理想の形が完成していますか?
いつか、どちらかのデスクを昇降式デスクにしたいです。椅子をシルフィーに替えたことで姿勢の改善はできたんですけど、結局、座りっぱなしは体に悪いんですよね。イラストレーターは体が資本だと思っているので、絵を長く描き続けるためにも、昇降式デスクを導入して、股関節や足に負担が集中しないようにしたいです。
あとは、部屋の中をもう少し彩りたいです。自分の作品をもっと飾りたいですし、造形の参考になるようなフィギュアも増やしたい。壁付の棚には影響を受けた漫画を飾っていて、絵柄や線が安定しないとき自分に立ち戻るために読んでいるのですが、ここの漫画を増やしてもいいですね。とにかく、楽しい部屋にしたいなと思います。
—では最後に、今後の活動としてやりたいことを教えてください。
いま僕はWeb上で漫画を描いていますが、書籍にしたいですし、アニメーションもやってみたいです。今後はイラストという表現だけではなく、さらに広いところまで挑戦したいと考えています。
世の中にすごいイラストレーターはたくさんいて、画力や創造性だけで戦っていくのは自分にはなかなか難しい世界だと思っています。それなら、僕は一つのコンテンツをいろいろな表現方法で作品にできるクリエイターになれればなと。まだ少しずつの挑戦にはなりますが、自分にできる表現方法を増やしていきたいです。
大学院まで建築学を学び、デザイン事務所を経て2023年に独立。「いつもの暮らしをちょっぴり面白くする」をコンセプトに、ポップな作風を得意とする。着ぐるみを着た家族の日常を描く「着ぐるみ家族」がSNSで注目を浴び、現在も多くのファンを獲得。
取材・執筆:早川大輝 撮影:藤原葉子 編集:野阪拓海(ノオト)
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