失敗から学んだ心地よさ。PIVOT木野下有市さんが20年間、同じ椅子を使い続ける理由
ワークスペースの美学

失敗から学んだ心地よさ。PIVOT木野下有市さんが20年間、同じ椅子を使い続ける理由

#キャリア #仕事・働き方 #在宅ワーク
Contessa Ⅱ(コンテッサセコンダ)

仕事や趣味などに気兼ねなく取り組むことができるその人だけの空間、ワークスペース。持ち主の考え方や行動様式が、色濃く反映される場所でもあります。

「ワークスペースの美学」は、自分自身の心地よいライフスタイルを実践している方にご登場いただき、そこに至った経緯や魅力、結果として得られたものなどについて伺うインタビュー連載です。


今回のゲストは、ビジネス映像メディア「PIVOT」を運営するPIVOT株式会社COOの木野下有市さん。広告代理店で大手飲料・製薬メーカーの広告キャンペーンなどを担当し、その後奨学金を得て映画プロデュースの芸術学修士をアメリカで取得。ロサンゼルスで子会社の経営を経て、帰国後起業をし、2021年にPIVOTをスタートさせました。そんな木野下さんが行き着いた「ハイブリッドな働き方」とは? 新卒時代から20年間も愛用しているというオカムラのチェアのお話から、「心地よい仕事環境」について伺いました。

チューニングできる仕事環境の先に見た、アメリカのワークスタイル

—国内外で華々しいキャリアを築いてきた木野下さんですが、そのワークスタイルはどんなものなのか気になります。

木野下

僕は家で働いていたほうが集中できるタイプなんです。あんまり大きな声ではいえないんですけど、20代の頃から会社とクライアントのオフィスの間に自分の家を借りて、得意先に行っているフリをして家で仕事をしていましたね(笑)。特に新人時代は電話がかかってきたら取らなきゃいけなかったり、上司に話しかけられたりすることもあるじゃないですか。だから企画書作成など集中したい作業はなおさら家のほうがはかどりました。

会社員でありながらも、若手の頃から自立して働くことができていたんですね。

木野下

というか、僕自身がじつは結構デリケートなんです。空調の温度調節やBGM、飲み物、服装など、デスクワークに付随する環境を自分にとって心地よい状態にしたくて。会社に行くとなるとスーツを着なきゃいけないし、いろんな音がしたり、誰かに話しかけられたりするし、空調も自分一人に合わせるわけにはいかないですよね。そういうものを全部自分にフィットするようチューニングしたいので、やっぱり家で仕事するのが好きでしたね。上司や先輩からすると「アイツいつも会社にいないな」って思われていたと思います(笑)。

そんな独自のワークスタイルをある程度確立されていたなかで、アメリカに渡られましたが、現地のビジネスカルチャーで記憶に残っていることはありますか?

木野下

そうですね。ロサンゼルスで会社の代表を任されてからまず驚いたのは、現地のビジネスパーソンたちが、会議をなるべく通話で済ませようとすることでした。というのも、ロサンゼルスは東京とは比べ物にならないくらいの車社会なんです。車での移動だとアポ先への到着時間が読めないことも多く、本当に大事な話以外はなるべく電話やオンラインの会議ツールで完結できるようにしていました。

木野下

それに、アメリカ人の部下たちもオフィスから車で2時間もかかる場所に住んでいたりして。それなら、毎日通勤に往復4時間もかけるより、その分の時間を家や家の付近で仕事してもらった方が効率がいい。なので当時は月水金の週3日出社というかたちにして、火木は原則リモートワークにしていました。その分、出社したときにメンバーと直接コミュニケーションを取っていたので、当時からハイブリッドな働き方にはなっていたのかな。

木野下さんにとってアメリカのワークスタイルがフィットしていたのですね。

木野下

そうですね。ロサンゼルス時代は社員それぞれがプロフェッショナルで自分よりも年上だったので、「自立したプロとして一緒に働く」という感じだったのも大きいかもしれません。実力主義なアメリカならではの効率的なワークスタイルを経験して、自分のなかにあった日本の大企業的な働き方が少し変わった気もします。

職種ごとに最適な環境を選択できる、プロが集うオフィス

現在はPIVOTのCOOとして主にどんなお仕事をされているのでしょう?

木野下

基本的にはデスクワークですね。会議や資料づくりなどをしながら、経営全般やコーポレート、映像チームや広告事業の全体統括など、小さいスタートアップなので必要があるところはどこでも担当しています。


いまインタビューを受けているオフィスは2023年の4月に移転してきたばかりなのですが、出社のスタイルもそのときの仕事によってさまざまです。午前中はリモートで会議をして、用事があったらちょこっと会社に来てまた帰ったり。基本的には週に3日くらいは会社にいて、1日は外回り、1日はフルリモートで作業をしていることが多いかもしれません。

社内メンバーの方も、ワークスタイルをある程度自由に決められるようになっているのでしょうか?

木野下

そうですね。コロナ禍は特に、経営判断としてワークスタイルを変えなければならない会社もあったと思うのですが、ウチはそういう意味では、創業当初からハイブリッドな働き方をしていこうという考えがありました。


なかでもエンジニアは集中できる環境の方が作業効率も上がるので、金曜日の全体定例会議に出席する以外は、出社は個々人に任せています。反対に、映像を作るチームはオフィスにスタジオがあり、リアルで集まって仕事をしているので、出社が多いですね。


ちなみに、金曜日は全員出社しましょうということで、お弁当を用意しているんです。毎週違うものを用意していて、それをみんな楽しみに来てくれて、会議のあとにみんなでご飯を食べてコミュニケーションを取っています。

木野下

ウチはできたばかりのスタートアップではありますが、即戦力になるプロフェッショナルが多数在籍しています。それぞれがパフォーマンスを発揮できるようある程度自由なワークスタイルにしていますが、Slackでメンションを飛ばせばすぐに反応が来ます。自由に働けるけれど成果主義でもあるので、シビアな面はあるかもしれないですね。

—オフィス環境も含め、仕事での快適な環境づくりで心掛けているのはどんなことですか?

木野下

椅子は結構重視しています。会社の創業期ってリソースが限られているので、どこに資金を配分するかが大事だと思っています。ここに移転する前は原宿のマンションの一室を間借りしていたのですが、デスクは中古のものでも、椅子にはこだわっていました。


というのも、「仕事のパフォーマンスを左右するのはやっぱり椅子だな」いう実体験があって。じつは、新卒の頃に奮発して購入したオカムラのチェアを20年間くらい使っているんです。

「コンテッサ」をアメリカに輸送。椅子が仕事のパフォーマンスを左右する

20年間もオカムラのチェアを使用されているんですね。そこまで愛用している理由は何でしょうか?

木野下

社会人一年目のときに一人暮らしを始めて、そのときに買ったんです。当時は海外製のチェアが人気だったようですが、自分のなかでは「日本人の体型には日本のものが合うのかな」という気持ちもあって。インテリアショップで実際にいろんな椅子を試したなかで出会ったオカムラの椅子は、メッシュ素材なので蒸れにくいし、オレンジ色も華やか。オフィスとは気分が変わるかなと思い、購入しました。

実際に木野下さんが20年間使用しているオカムラのチェア「コンテッサ」。右は海外生活時の様子。現在販売している「コンテッサ セコンダ」の前のモデルにあたる。

先ほど「仕事のパフォーマンスを左右するのはやっぱり椅子だな」いう実体験があったとおっしゃっていましたが、それはどのような場面で感じましたか?

木野下

28歳の頃にアメリカの大学院に留学したのですが、どうせ2年間だからと思って家具類を全部現地で調達して、椅子も安いものを使っていたんです。そしたら、腰が痛くなっちゃって。何回か買い替えたのですが改善されず、留学中の2年間は結構椅子で苦労しました。だから、ロサンゼルスに駐在するときにはオカムラのチェアをわざわざ日本から船便で持っていったんです(笑)。

辛い思いをしたからこそ、オカムラの椅子の良さを実感されたんですね。

木野下

いいものを使っているとストレスって何にも感じないんですけど、「そうじゃないもの」を使ったときのストレスで気がつくこともあるんだなって思いましたね。そういう意味で、この椅子を「意識して長く使っている」というわけではなく、20年間使っても壊れないし、ストレスも感じないので、「買い換える気にならない」というのが正直なところです(笑)。

木野下

僕、社会人になってから13回も引っ越ししているんです。そのたびに断捨離をしてきたんですが、唯一僕の引っ越しについてきているのがオカムラのチェアなんですよ。僕が持っているもののなかで、これ以上に長く使っているものってないかもしれません。

ご自宅でのワークスペースは、ほかにどんなもので整えているのですか?

木野下

何度か買い替えているのはモニターですね。仕事柄、ビデオ会議が多いので、デュアルモニターにしているんです。正面を向いてビデオ会議をしたいなと思ったので、マイクとカメラも付いているモニターに変えたりとか。デスクも、何種類か使って試すなかでこれくらいのスペースがある方がいいな、とかね。

まさに冒頭でお話しいただいたように、少しずつご自身の快適なワークスペースへとチューニングしていったのですね。

木野下

そうですね。ワークスペースはファッションと一緒で、自分に合ったものがわかるまで失敗をしたり、時にはお金の無駄遣いになってしまったりもするけれど、少しずつ整っていくものなんじゃないでしょうか。仕事用に淹れるコーヒーも色々と試して、いまは「これ!」というものが見つかったので、そればかりを大量にストックしています。

今回お話を伺って、木野下さんがいかに自然体で心地の良いワークスタイルを大事にしているかがわかりました。

木野下

スタートアップは若いときに立ち上げる人が多いですが、僕はある程度歳を重ねてから立ち上げました。そのとき、自分自身の体ってやっぱり資本だなと思ったんです。現在はジムに最低週2回通っているのですが、最近スタートアップ界隈の起業家で体を鍛えている人が多いのは、仕事と体のコンディションは切っても切り離せないというのがあるかもしれません。仕事環境も同じです。いかに体に負荷をかけずに働くかが大事なのではないでしょうか。

Contessa Ⅱ
[コンテッサセコンダ]
PROFILE
川村健一
木野下 有市(きのした ゆういち)
PIVOT株式会社 取締役COO

三菱商事を経て電通入社。Dentsu Entertainment USA社CEOとして日本原作のハリウッド映像化や、NewsPicks Studios社COOとして経済番組の収益化を牽引。2021年にビジネス映像メディア「PIVOT」の創業に参加。

CREDIT

ライター:山越栞 撮影:豊島望 編集:岩見旦(CINRA.Inc,)

ブランド名

商品名が入ります商品名が入ります

★★★★☆

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PROFILE

山田 太郎

CO-FOUNDER & CTO

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。

山田 太郎

CO-FOUNDER & CTO

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。

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