趣味全開にすることで仕事が捗る。クラシック音楽ファシリテーター・飯田有抄さんが作る「好きな音」のある部屋
ワークスペースの美学

趣味全開にすることで仕事が捗る。クラシック音楽ファシリテーター・飯田有抄さんが作る「好きな音」のある部屋

#アイデア・工夫 #カルチャー #ライフスタイル #仕事・働き方 #在宅ワーク #趣味・遊び

仕事や趣味などに気兼ねなく取り組むことができるその人だけの空間、ワークスペース。持ち主の考え方や行動様式が、色濃く反映される場所でもあります。「ワークスペースの美学」は、自分自身の心地よいライフスタイルを実践している方にご登場いただき、そこに至った経緯や魅力、結果として得られたものなどについて伺うインタビュー連載です。


5回目のゲストは、クラシック音楽ファシリテーターの飯田有抄さん。クラシック音楽関連の翻訳・執筆、音楽イベントでの司会や講演、YouTubeでのオーディオ関連の発信など多岐にわたり活躍する人物です。そんな飯田さんのワークスペースは、さまざまな趣味アイテムで満たされています。そのなかでも大きな存在感を示しているのが、本格派のオーディオ機器たちです。


仕事で活用するのはもちろん、趣味全開でチョイスしたというそれらの製品は、どことなく昭和の雰囲気が残る仕事部屋に、アクセントあるアイテムとして違和感なく収まっています。そんな、雰囲気のよい、それでいて実用的な飯田有抄さんのワークスペースの魅力を紹介していきましょう。

「クラシック音楽っていいな」と思える瞬間を共有するための仕事

—「クラシック音楽ファシリテーター」という肩書きはあまりお見かけしませんが、どのようなことをされているんですか?

飯田

確かに、あまりきかない肩書きかもしれません。端的にいいますと、クラシック音楽をより多くの人に理解してもらうため、分かりやすく紹介・促進する仕事です。


私たち日本人にとって、クラシック音楽は外国の遠い昔の音楽なので、分からなくて当然のことがたくさんあります。ただ、分からないことを少しずつひも解きつつ、自分たちの暮らしのなかに取り入れてもらえれば、存分に楽しめるものなんです。そういった、「クラシック音楽っていいな」と思える瞬間を皆さんと共有したい、という気持ちを軸にしながらいまのお仕事をスタートさせました。


具体的には、クラシック音楽のCDやコンサートのパンフレットにある楽曲解説の翻訳・執筆をしたり、都内のプロオーケストラのコンサートに小中学生の子どもたちを招待する企画に携わったり、音楽イベントで講演をしたりと、クラシック音楽にまつわるさまざまなことに携わっています。

クラシック音楽ファシリテーターの飯田有抄さん

どのような経緯でクラシック音楽ファシリテーターになったのでしょうか?

飯田
高校生の頃は語学が好きだったので、将来的に通訳や翻訳の職業に就きたいと思っていたんです。でも、当時習っていたピアノの先生から「語学は"手段"だから"目的"とするものじゃないよ。音楽を"目的"として、語学という"手段"を活かしたほうがいいんじゃない?」と、東京藝術大学の楽理科を勧めていただいて。


楽理科とは、音楽学(西洋音楽史、日本・東洋音楽史、音楽民族学、音楽美学など)をアカデミックに研究し、将来、音楽の学問的研究やそれに関連した仕事にたずさわる人材の養成を目的とする学科です。私は同大学院の修士課程まで進みました。


その後、同大学の研究センターで仕事をしていたんですが、通訳・翻訳の仕事をしたい気持ちが再燃してマッコーリー大学(シドニー)で通訳・翻訳の勉強をすることにしたんです。その時期に、音楽之友社(クラシックを中心とした音楽専門雑誌や教科書を発行する出版社)に就職した楽理科の同期から「翻訳の仕事をしてみないか?」と打診があり、クラシック音楽関連の翻訳の仕事を始めたのが今の仕事につながっています。

語学への関心、音楽学の研究、通訳・翻訳の学習という変遷を経て、「音楽を"目的"として、語学という"手段"を活かす」仕事につながったわけですね。

飯田

そうですね。やっぱり、クラシック音楽は約400年間の歴史があり、その文脈や背景を理解していないと正しく翻訳ができないんです。実際、いまクラシック音楽の通訳・翻訳で活躍されているのは、音大出身者など音楽に精通されている方々が多いですね。

飯田さんが楽曲解説や翻訳、イベント開催に関わったパンフレットやCD(ライナーノート)の数々

最初はパソコンとデスク、椅子だけだった仕事部屋

主に翻訳や執筆などのデスクワークはお仕事部屋(ワークスペース)で行うわけですが、このお部屋はお住まいとは別の場所ですよね?

飯田

はい、歩いて数分の距離に自宅があります。

こちらのお仕事部屋を借りたきっかけは?

飯田

以前は原稿執筆などのお仕事は自宅のリビングでしていたのですが、10年ほど前に母が体調を崩しまして。毎週末のお見舞いがあるなか、仕事量を減らさず働き続けたところ、ライフスタイルが完全に崩れてしまったんです。


その後、母が他界したタイミングで、いまの状況や気持ちを一旦リセットするために仕事部屋を別で借りよう、と思い立ちました。家から近くであればお風呂はいらないしトイレさえあれば充分、家具は机と椅子があればいいや、あ、ネットは引かなきゃダメか……などと思いつつ探したところ、運良く自宅のすぐ近くにいまの部屋が見つかったんです。本当に、最初は机と椅子、パソコンだけで仕事をしていました。

いまではオーディオ製品はもちろん、観葉植物や小物(雑貨)なども置かれていますね。

現在の飯田さんの仕事部屋。6畳の室内には複数のオーディオ製品やデスク、チェア、照明、観葉植物、小物などが置かれているが、狭さを感じさせない開放的な雰囲気
飯田

はい、しばらくは机と椅子だけのままで過ごしていました。そのうち、お茶が飲めるように電気ポットを買ったり、好きな小物を置いてみたりしましたが、それほど変わらず。


大きく変化したきっかけは、コロナ禍です。コンサートがほぼ全て中止となり、第二の仕事場といえる音楽ホールに行かなくなったため、仕事場のオーディオ環境をちゃんとしないと、と思うようになりました。また、毎月クラシックCDのレビュー記事を書かせていただく仕事もあったので、最初にネットワークCDレシーバー「M-CR612」(marantz)を購入しました。ここがオーディオにハマるきっかけといっていいでしょう(笑)。

CDやFM/AMラジオ、Bluetoothのほか、Spotifyなどのストリーミングサービスとも接続ができるネットワークCDレシーバー「M-CR612」(marantz)。オーディオ入門に最適な製品として定評があり、多様な接続形式のスピーカーにつなげて使える(写真提供=飯田さん)

音のよさは当然ながら、部屋に馴染むデザインも重要

オーディオへの関心が高まった後、製品はどうやって選ばれていったのでしょうか?

飯田

欲しいものを次々に購入し並べていったらこうなった、というのが正直なところです。仕事にも使う製品なので、当然、音質も気にしてはいますが、同時に可愛らしさや素敵さも重要だと思っています。


たとえばメインスピーカー「PersonaB」(Paradigm)は、オーケストラの演奏がホールに響きわたる様子まで緻密に感じ取れますし、メリハリがよくキレのある音で、低音もしっかりと感じ取れるので、CDの音がとてもよく分かるようになりました。さらに、この素敵な外観もあって購入を決意しました。

お部屋の奥に配置されたブックシェルフ型スピーカー「PersonaB」(Paradigm)。落ち着いた深緑色の筐体と銀色のバッフル・音響レンズが、和室に自然と溶け込んでいる

—「PersonaB」に組み合わせているのは、真空管アンプ(※)ですね。

※アンプ=CDやレコード機器などから入力された音の情報を増幅させ、スピーカーへ送る機材。真空管を使ったアンプは、温かみのある音質が特徴

飯田

TRIODEの「TRV-A300XR」です。真空管アンプならではの可愛らしさに惚れたのがきっかけでした。私はオーディオ専用のラックを使わないので、省スペースで置くことのできる真空管アンプとして、「TRV-A300XR」を選びました。あとから同じTRIODEのCDプレーヤー「TRV-CD6SE」も導入しましたが、現代の技術向上により、機材同士を積み重ねて設置ができるというのも、嬉しいポイントでした。どちらも、TRIODE製品ならではのルビーレッドカラーが素敵ですよね! また、このごろは真空管を交換して、音が変わる様子を楽しんでいます。

赤が映える可愛らしいデザインの真空管アンプ「TRV-A300XR」とCDプレーヤー「TRV-CD6SE」(以上、TRIODE)、コンパクトでレトロな風合いのアナログレコードプレーヤー「LP12」(LINN)

—アナログレコードを選んだのも、デザインのよさからですか?

飯田

和風のインテリアに合いそうな、オリエンタルな雰囲気で全体をコーディネイトしていますので、「LP12」(LINN)はそれにぴったりでした。アナログレコードプレーヤーの定番といえる製品が、和風のインテリアにマッチするというのも、ユニークですよね。


また、ロングセラーモデルである「LP12」は様々なカスタムパーツが豊富に用意されているので、私のような普段はステレオ、時々モノラルで使いたい場合でも、手軽にカートリッジ(針先の部分)が交換できるような構成にして貰えたのも、大いに助かっています。


いろいろと調べてECサイトや家電量販店購入するのもいいですが、専門店で自分好みのものを相談して作り上げる、というのもオーディオ製品の楽しみのひとつだと思います。

デスクトップの音響システムも個性的ですね。

飯田

デスクトップ用のミニスピーカーは、私がナビゲーターの一人として携わっているWebマガジン「ONTOMO」(音楽之友社)の企画で自作したものなんです。ONTOMOのオンラインショップから工作キットが販売されたんですが、天然無垢材の見た目が最高に素敵で……! 工作キットを設計したオーディオ評論家の生形三郎さんにアドバイスいただきながら、自分好みの音になるよう仕上げました。


そのスピーカーの上にはスーパーツイーター(※)のムジカノート「S-STW01」を乗せています。音もよいですが、とても可愛らしいでしょ!? いちばん長くいる場所ですから、気に入った音とかたちのものを選んでいるんです。

※人間の可聴領域の20kHzを超える帯域の音を出すスピーカーのこと。音の鮮度を向上させたり、音像をよりクリアにしたりする効果がある

自作スピーカー上に置かれている、スーパーツイーターのムジカノート「S-STW01」

ここまでの立派なオーディオ製品を音が漏れやすい和室で鳴らそうとすると、周りへの騒音問題が気になります。

飯田

実は、一度も苦情を受けたことがないんです。仕事用として活用しているとはいえ聴き疲れするのがイヤなので、あまり大きな音で鳴らさず、長時間心地よく聴ける音量で聴き続けているためかもしれません。

部屋に彩りを加えてくれる小物の数々。実は小物を置くことで音を適度に乱反射するので、音響的にも効果的とされている

仕事と趣味はかけ算。もっと“楽しさ”に満ちた“仕事が捗る”空間に

いまや見た目にも楽しいお仕事部屋ですが、オーディオ製品を充実させてからどのような変化がありましたか?

飯田

我々のような仕事は、仕事か趣味か境界が曖昧に感じられると思いますが、それを逆に活かしているのがいまの部屋なんです。仕事へのモチベーションを高めるために、趣味の製品を並べる。それによってますます仕事をする気になり、日々の効率が上がっているように感じています。実際、仕事の幅も広がって、オーディオ製品関連の企画の提案やレビューをする機会も増えています。

仕事と趣味を切り分けず、自分の気持ちが高まる空間にしていくことが良い結果を生み出しているわけですね。最後に、今後このお部屋を通してやっていきたいことがあれば、教えてください。

飯田

まずは、これからもあえて仕事と趣味をかけ算することによって、自分にとってベストな仕事部屋が作り上げられたと思っています。


加えて、この部屋を通して、オーディオシステム選びの提案もできるようになりたいと考えています。オーディオはひとつひとつの製品にフォーカスされがちですが、このセットで聞いたときにピアノがとても良かった、チェロはやっぱりこの組み合わせが良いな、など音楽側を主体とした製品選び、システム構築を今後は提案できればと思っています。


これまでも、私のYouTubeではそういった内容の話もしていますが、更新頻度が少なく(汗)。ここから先は、皆さんの意見を自分のなかに取り入れつつ、もっと“楽しさ”に満ちた“仕事が捗る”空間に進化していけたらと思います。

PROFILE
川村健一
飯田 有抄(いいだ ありさ)
クラシック音楽ファシリテーター

東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Macquarie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。音楽専門雑誌、書籍、CD、コンサートプログラム、Webマガジンなどの執筆・翻訳のほか、音楽イベントでの司会、演奏、プレトーク、セミナー講師の仕事に従事。

Facebook:https://www.facebook.com/arisa.iida.31

CREDIT

ライター:野村ケンジ 撮影:藤原葉子 編集:野阪拓海(ノオト)

ブランド名

商品名が入ります商品名が入ります

★★★★☆

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PROFILE

山田 太郎

CO-FOUNDER & CTO

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。

山田 太郎

CO-FOUNDER & CTO

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。

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