お笑い芸人・ロバートを愛して17年! ファンから仕事相手になったテレビディレクター・篠田直哉さんに聞く“推し活”の流儀
となりの偏愛LIFE

お笑い芸人・ロバートを愛して17年! ファンから仕事相手になったテレビディレクター・篠田直哉さんに聞く“推し活”の流儀

#カルチャー #キャリア #ライフスタイル #仕事・働き方 #趣味・遊び

日々をいきいきと過ごしている人=さまざまな「好き」を探求している人にお話をうかがう連載企画「となりの偏愛LIFE」。第11回のゲストは、名古屋テレビ(メ~テレ)のディレクター“メモ少年”こと篠田直哉さんです。


小学生の時に偶然見たネタの面白さに衝撃を受け、お笑い芸人・ロバートの熱狂的なファンに。いつしか芽生えた「ロバートの魅力をもっと広げたい」という思いを胸に突き進み、ついにはテレビ局に就職して共に仕事をするまでに至ります。


その揺るがぬ愛と猪突猛進ぶりから、「ロバートのストーカー」と言われたこともある篠田さんですが、実は“推し活”をするうえで密かに大切にしていることがありました。

偶然見たネタで一目惚れ! いつしか付いたあだ名は“メモ少年”

— 篠田さんがロバートと出合ったきっかけは、何だったのでしょうか?

篠田

小学校5年生の夏休みに、たまたまロバートのDVDを見たことですね。その頃から母がパートに行くことになり、僕は毎日暇を持て余していたんです。見かねた母が「DVDでも見たら?」と、レンタルショップに連れて行ってくれました。


店頭でふと目に入ったのが、ロバートの単独ライブのDVDでした。なんとなくそれを借りたんですが、家に帰って見た時に僕の中に衝撃が走りました。「なんだこれ、面白過ぎる!」と。


それからロバートにどっぷりハマって、1週間ずっと同じDVDを見続けました。DVDの返却日には、母に頼んで一度返却して再度借りてきてもらいました。そしてまた1週間見続けて、返却期限が近づいたら返してまた借りて……。そんなことを4回繰り返したタイミングで、母が「そんなに借りるなら、もう買いなさい」とDVDを購入してくれました。

メ~テレディレクターで、ロバートの熱狂的ファンである篠田直哉さん

運命的な出合いを果たしましたね! それから、ライブにも行くようになったんですね

篠田

はい。小学校6年生の夏休みに家族旅行で東京に行く機会があり、そこで初めてロバートのライブに参加しました。その時に、「どんなネタだったかをちゃんと記録しておきたい」と思って、ノートとペンを持って行きました。そしてライブを見ながらコントの流れとか、面白かったボケなどを書いていったんです。


僕が中学生になってからは父が東京に単身赴任していたので、東京に家族で旅行する機会も増えました。旅行の時期もなるべくロバートのライブ出演回に合わせてもらって、何回かライブに参加できましたね。


もちろんその度にメモを取り続けていたのですが、中学2年の夏休みに参加したライブでロバートに気づいてもらえて、「メモ少年」というあだ名を付けていただきました。


その後もライブに行くたびにメモを取っていたら、またあるライブの冒頭で秋山さんに「客席にメモ少年がいるぞ」と声を掛けてもらえたんです。しかもその日は「お前は何でメモしてるの?」とも聞かれて。そこで僕が「家でメモを見返して笑うためです」と答えたら、秋山さんが「いや、今ここで笑いなさいよ」とツッコんでくださったんですよ。


この掛け合いは以降のライブでも毎回繰り返されて、ライブの名物みたいになってきたんです。

メモしたノートは、合計で31冊に。今でもロバートと仕事をする前には読み返し、雑談のネタや企画のアイデア探しに使っているそう

何気ない一言から、ロバートまみれの人生が幕を開けた

ロバートの一ファンだった少年時代から、どのように今のお仕事をするに至ったのでしょうか?

篠田

転機になったのは、中学2年生の冬休みに参加したライブですね。いつものように会場でメモを取っていたら、ロバートの秋山さんから「お前、そんなにメモを取ってどうすんの? お笑い芸人になりたいの?」と聞かれたんです。


「芸人ではなくロバートのメンバーになりたいと思っています」と答えたら、「じゃあ、俺たちのマネージャーになってよ」と言われたんです。いつ、どういうネタをやったかをメモしてもらえると助かるから、って。


その言葉が“ボケ”であることは、もちろん分かっていましたよ。でも「ロバートと一緒に仕事をする道があったか」と、一気に視界が開けたような気がしたんです。そこから、実際にロバートと一緒に仕事をするために何をすべきか、具体的に考え始めるようになりました。

—ファンなら舞い上がってしまいそうな言葉ですが、篠田さんは冷静に実現のための道筋を見据えた、と。

篠田

はい。マネージャーになるためには吉本興業に入社しなければいけません。そのためにもまず勉強を頑張り、高校は地元・大阪の進学校に行きました。大学は京都の立命館大学と東京の法政大学の2校に合格したのですが、「ロバートは東京吉本の所属だし、吉本興業に就職した時も東京の大学出身のほうが東京の配属になりやすいのでは?」と思い、法政大学に進学しました。


大学では、学園祭の実行委員会に入りました。「学園祭にロバートを呼びたい、みんなに布教したい」という一心で、です(笑)。

そこはブレませんね!

篠田

そうですね。母校の学園祭では「お笑い企画」「アイドル企画」などの部門別に担当者が分かれており、2年生の時にお笑い企画の責任者になりました。そして、秋山さんが「昔からライブに来てくれている少年の頼みだから、行ってあげたい」とマネージャーさんにお口添えいただいたこともあって、念願のロバートだけのライブを開催できたんです。


お笑い企画に呼ぶ芸人さんが1組だけというのは初の試みだったのですが、当日は約3000人ものお客さんが集まり、会場周辺は人で埋め尽くされました。
篠田

そして学園祭が終わった後、僕にも気持ちの変化がありました。もともと「マネージャーになりたい」と思っていたのですが、学園祭でロバートと一緒にライブを作ったことを経て、「ロバートと一緒に面白いコンテンツ作りがしたい」という考えになってきたんです。だから、就職活動では番組の企画・制作ができるテレビ局を中心に応募していました。

—それで本当にテレビ局のディレクターになってしまうのだから、すごいです! ご家族は、ロバート中心の篠田さんの生活や進路選択に反対したり、「追いかけるのをやめろ」と言ったりすることはなかったのでしょうか。

篠田

それが、不思議とありませんでしたね。父はもともとお笑いが好きだったので、僕がロバートのライブに行けない時は代わりにライブに行ってメモをしてきてくれたぐらいです。父親もロバートに認知されて、「メモ少年のお父さん」とか「メモパパ」と呼ばれていました(笑)。


母は、あまりののめり込みっぷりにちょっと怖がっていましたね。でも、もともと引っ込み思案だった僕がロバートを好きになってからどんどん明るくなっていく様子を見ていたこともあって、進路や就職先の選択に反対されることはなかったです。

社会人になっても冷めない愛。仕事との両立のカギは“スキマ時間”

—実際にテレビ局に入社してみて、篠田さん自身に変化はありましたか?

篠田

一見あまり関係なさそうな経験も、いつかは推しの役に立つことを知りましたね。


入社して4~5年は音楽番組の制作を担当していて、元々はあまり詳しくなかったアーティストさんの番組を作ることもありました。でも良い番組を作るために、自分もそのアーティストさんのライブ映像や記事をインプットし、ファンになってから制作に取り掛かることを意識していたんです。


すると徐々に、「ファンはどういうシーンを写すと喜ぶのか」「配信サイトにアップする時、どういうサムネイルだとウケが良いのか」などが分かってきたんですよ。そしてそれが、僕が企画した「秋山歌謡祭2024」でも活きました。


秋山歌謡祭はロバートの秋山さんに“お笑い芸人”ではなく“アーティスト”として登場していただき、歌を歌ってもらう音楽番組です。秋山さん自身もオファーに戸惑うような異色の番組でしたが、音楽番組の制作で培ったスキルやノウハウをフル活用したのが良かったのか、視聴者に好評で、社内でも社長賞をいただきました。

「秋山歌謡祭2024」での、篠田さんと秋山竜次さんとのツーショット(©メ~テレ)

—篠田さんはテレビ局のディレクターとして、とても忙しく過ごされていますよね。そうした生活では、ロバートが出ているものも含めてたくさんの番組を見るのは大変ではありませんか?

篠田

いえ、大丈夫です。僕はもともとエンタメ全般が好きなので、「仕事に役立てるためにいろいろな番組をチェックしよう」というよりは、純粋に「自分が好きだから見よう」という気持ちが強いんですよ。一番好きなのはロバートではありますが、アイドルやYouTuberの動画も見ますし、恋愛リアリティーショーあたりも見ています。仕事とプライベートもそれほどはっきり分けていないので、どれも楽しく視聴できていますね。


ただ、そうなると時間が足りなくなってきてしまうので、ロバートが出演しているテレビ番組やラジオは、毎日のスキマ時間を活用してチェックしています。お風呂にスマホを持って行って倍速で再生したり、ロバートが出演している部分だけ見聞きしたりしていますね。

推しと仕事をしたいなら、あえて“遠回り”も一つの手?

―「篠田さんのように、推しと仕事がしたい!」と思ったら、どういったことを心がけると良さそうでしょうか。

篠田

あえて間接的なアプローチをするのもアリだと思います。


「推しと仕事をする」というと、マネージャーになる、メディア関係の仕事をするといったことが考えつくと思います。ただ、必ずしもそれだけではないですよね。例えば以前だと、エンジニアをしていて、ゲームを作るのが得意な方が、ロバートのネタをゲームにして展示会に出したことがありました。


その方のように、自分の好き・得意を推しと組み合わせられないかとか、持っているスキルを使って推しのためにできることはないかといったように逆算して動き続けていくと、いつの間にか推しと仕事ができる機会が生まれるかもしれません。

では逆に、推しをサポートする上で注意したほうが良いことはありますか?

篠田

推し活全般に言えることだと思うんですが、「自分が推しを引っ張っていこう、道筋を作ってあげよう」と思わないことでしょうか。


たとえ自分の推しでも「このネタはあまり面白くなかったな」とか、「この曲はイマイチだった、もっとこういう路線に行ってくれたらいいのに」と思うことがあるかもしれません。


ただ、そういう気持ちは各自の好みに過ぎなくて。推しに対してわざわざネガティブな感想を言ったり、「もっとこうしたら?」みたいに自分の願望を押し付けたりする必要はないですよね。


僕は「推しが『面白い、良い』と思っていることを後ろから一生懸命推す!」という立場の人間なので、そこははき違えないようにしています。推しとお仕事ができるかどうかも、推しとの関係性によりますし。

必ずしも今、推しが認められなくていい。愛し続けて、時を待つべし

篠田さんは「ロバートを布教する喜び」が原動力である印象がありますが、布教しても思うように周囲が推しにハマってくれず自分も傷つく、いわゆる“布教疲れ”になったことはありませんか?

篠田

めちゃくちゃありますよ(笑)。ただ、布教したらすぐに相手に推しを認めてもらわないといけないわけでもないと思うんですよね。


僕もロバートを小学5年生から布教し始めましたが、中学生ぐらいまでは友達がなかなか面白さを分かってくれなくて、辛い思いをしていました。でも、2011年にロバートがキングオブコントで優勝してから、一気に周りの空気が変わったんです。「ロバートを面白くないと思うのは恥ずかしいことだ」みたいな。


同時に、僕に対しても「お前は昔からロバートが面白いって言ってたよな」と、扱いがガラッと変わりました。結局のところ、推しが認められるまで「良い!」と言い続けることが大切だと思います。

なるほど、推しが輝くタイミングを待つ……といったことでしょうか。

篠田

そうですね。僕だって、キングオブコントで優勝する前から「ロバートが面白い」と言い続けてきていなければロバートの皆さんから信頼されておらず、一緒にお仕事もできていなかったと思います。


やりすぎは良くないですが、自分の心が折れない程度に推して、布教も続けていくのが大切なんじゃないでしょうか。

篠田さんが企画・運営するYouTubeアカウント「メモ少年(旧テレビ局の生活)」で「【ロバート秋山】元ストーカーがテレビ局員に。職権濫用で番組に呼ばれる」という動画を投稿。この動画がきっかけとなり、書籍出版に至る

愛を説き続けることが大切なのかもしれませんね。そんな篠田さんの、今後の展望を教えてください。

篠田

テレビ局のディレクターとしての目標は、「秋山歌謡祭」を今後も作り続けること。あとは、ロバートのバラエティ番組も手掛けたいですね。


僕個人の目標としては、ゆくゆくはコンテンツ全般のディレクターになりたいと思っています。最近はYouTubeや動画配信サービスもあって、テレビの視聴率が全てじゃなくなってきています。でもそれは悪いことではなくて、逆に言えば出演者が話題になるチャンスがあちこちにあるということなんですよね。


僕も10代まではたくさんテレビを見ていて、大学生ぐらいからはYouTubeを見てと、ちょうど過渡期に育ってきた自覚があります。そういった経験も活かしながら、「この内容は地上波で視聴率を取って、こっちはYouTubeでバズらせる」と、両軸で戦える人間になっていけたらと思っています。

PROFILE
川村健一

篠田 直哉(しのだ なおや)

メ~テレ 名古屋テレビ ディレクター

1996年生まれ。大阪府出身。法政大学社会学部メディア社会学科卒業後、メ~テレ(名古屋テレビ放送株式会社)に入社。現在はディレクターとして、多数の番組の企画・制作を手掛ける。著書に『ロバートの元ストーカーがテレビ局員になる。~メモ少年~』(発行:東京ニュース通信社、発売:講談社)

X:https://x.com/denkinokishida

YouTube:https://www.youtube.com/@Memo_Boy

CREDIT

取材・執筆:シモカワヒロコ 撮影:村山直章 編集:野阪拓海/ノオト

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★★★★☆

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PROFILE

山田 太郎

CO-FOUNDER & CTO

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。

山田 太郎

CO-FOUNDER & CTO

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。

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