うしろ向きで始まった食べ歩きも今や16年目!ハンバーグ測量士・五島鉄平さんが一線に居続けるための密かな矜持
となりの偏愛LIFE

うしろ向きで始まった食べ歩きも今や16年目!ハンバーグ測量士・五島鉄平さんが一線に居続けるための密かな矜持

#カルチャー #ライフスタイル #趣味・遊び

日々をいきいきと過ごしている人=さまざまな「好き」を探究している人にお話をうかがう連載企画「となりの偏愛LIFE」。第18回のゲストは、「ハンバーグ測量士」を名乗る五島鉄平さんです。


2008年にスタートした彼の食べ歩きブログはハンバーグ好きだけでなく、マスコミ関係者の間でも瞬く間に話題に。現在はメディア出演など、ハンバーグの評論家としての活動を続けています。


しかし、実は自発的に始めたブログではなかったとのこと。うしろ向きの姿勢で始まった「ハンバーグ測量士」としての活動が、ハンバーグマニアの第一線を走り続ける理由とは? そこには、愛がたしかにありました。

“逃げ”の姿勢で選んでいたハンバーグ

―ハンバーグに関して、五島さんはどのような活動をされているのでしょうか?

五島

普段は測量士の仕事をしているのですが、その日の現場近くにあるお店でハンバーグを食べ歩くことが活動のメインです。


測量士の仕事をするなかで、お昼ごはんって唯一の楽しみなんですね。だから、職場の先輩と「ランチで失敗したくないよね」と話し合い、事前にグルメブログなどで調べておいしいお店へ行くようになったのが最初でした。

ハンバーグ測量士・五島鉄平さん

五島

ただ、実は僕、偏食がすごくて野菜が一切食べられないんです。いつもランチを一緒に食べるその先輩は年齢が僕より一回り上で、測量士としては雲の上の存在でした。なので「先輩より早く食べ終わらなきゃ」と思い込み、よっぽどのことがない限りハズレに当たらないハンバーグばかり食べるようになったんです。

—おいしくないハンバーグって、なかなかないですもんね。

五島

先輩が選んだチャーハンのおいしい店へ行く日もあったのですが、ひょっとしたらレタスがふんだんに使われている可能性もある。それが怖いので、そんなお店でもハンバーグだけ食べるようになっていました。


するとある日、先輩から「なんで、ハンバーグばかり食べているの?」と聞かれ、「こういう事情でハンバーグへ逃げるようになっていました」と正直に告白したんです。

逃げる(笑)。

五島

そしたら、「好きなものは好きなように食べていいし、ゆっくり食べてもいい」と先輩は言ってくれました。その言葉に感動し、「人間できてるなあ」と思っていたら、「でも、それだけハンバーグを食べてるんだから、ずっとハンバーグだけ食べてブログに書け」といきなり言われて。

まさかの展開ですね。

五島

そんな感じで、強制的に僕の活動は始まったんです。


8~9月なんて異常な暑さなのに、鉄板がジュージューいってるハンバーグを食べなきゃならない。その僕の前で先輩はそうめんを食べてるんですよ……。

そんな感じだったんですか……。決して、前のめりで始まった偏愛ではなかったんですね。

五島

全然、違いますよ(笑)。でも、今は白米と同じ感覚でハンバーグを食べられるようになりました。たとえば、僕が風邪をひいたとき、妻は「これなら食べられるでしょ」という感じで、当たり前のようにハンバーグを焼いて出してきますから(苦笑)。

いまでは、ブログのほか、同人誌の制作やYouTubeなどの個人活動も

メディアに紹介していい店、してはいけない店

「ハンバーグ測量士」という異色の肩書きで活動中の五島さんが、多くのメディアへ出演するようになったきっかけを教えてください。

五島

ブログの開始から4年目にあたる2011年に『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)のハンバーグ企画で声をかけていただいたのが始まりです。

ハンバーグの評論家として、ですよね。

五島

はい。最初は好きなハンバーグをいろいろ紹介していたのですが、次第に“メディアに紹介していい店”と“メディアに紹介してはいけない店”があることに気付いたんです。


以前、某グルメブロガーが、ご年輩の方が一人でやっているようなお店を紹介したことがありました。そうしたら、もともとは1日に3~4人くらいのお客さんで回していたお店だったのに、メディア露出を機に一気に20人くらいの人が訪れるようになった。


すると、今までの常連さんが入れなくなり、いつしかお店へ行くのを諦めてしまったんです。で、テレビを見てやって来た人たちってお店に一回行けば満足しちゃうんですね。


嵐が来て、嵐が去って、常連客はいなくなり、遂にはそのお店自体もなくなってしまった。そんな結末をここ十数年で何度も見てきました。

ああ……。

五島

僕は洋食屋が好きなのですが、今、コテコテの洋食屋が新規オープンすることってほとんどないんです。後を継ぐ人材もほとんどいない。ただでさえ洋食屋は短命になりがちなので、メディアで紹介するお店については自分のなかでかなり線引きしています。

お店の紹介にも難しさと功罪があるんですね。ちなみに、五島さんは洋食屋のどんなハンバーグがお好きですか?

五島

デミグラスソースを使った普通のハンバーグですね。牛6:豚4くらいの比率の合い挽きが好きです。


逆にあまり好きじゃないのは、必要以上に肉汁が出るハンバーグ。「そのパティの大きさでその量はないだろう!」という“出すための肉汁”を仕込むお店に、僕は絶対行きませんね。

肉汁が多すぎるハンバーグはおいしくないんですか?

五島

いや、ハンバーグというだけで、ある程度の味のクオリティは確保できているし、おいしいですよ。だけど、「俺はいいや」みたいな(笑)。

「俺はいいや」、なるほど。

五島

ハンバーグって、挽きを変えたり、配合を変えたり、デミグラスソースをパティに合うものにしたり、手を加えれば加えるほどおいしくなるんです。


特に、今日お邪魔している「HAMBURG RESTAURANT Chami」(東京都墨田区)は、岩中豚(※)という銘柄にこだわる専門店です。お店の方に話をうかがって「これは長くなりそうだな……!」と思わせてくれるお店はこだわりが強いし、大抵はおいしいです。

※岩手中央畜産株式会社が生産する銘柄豚

取材は、五島さんおすすめのお店「HAMBURG RESTAURANT
Chami」(東京都墨田区)で実施

五島

あと、凝ったメニューがあるお店も間違いない。前菜で言えば、サラダって適当に買ってきた野菜にドレッシングをかければそこそこのものができちゃうんです。だけど、そこで「この季節にはこの野菜を使う」「この野菜にはこのドレッシングを使う」と気配りを怠らないお店はハンバーグも外さないです。いや、野菜を食べない僕が言うのもなんですけど(笑)。

取材中に、五島さんが注文したハンバーグが到着!

おいしそうですね!

五島

注文したのは、軟骨ハンバーグ+ゆずソース+ペッパー。軟骨のパティって、あんまりないんですよ。デミグラスソースを食べすぎて一回リセットしたいときは、この柚子ソースとペッパーの組み合わせが最高です。でも、Chamiさんはデミグラスソースももちろん美味しいので、初心者の方はぜひそちらから! 

ハンバーグの専門家として一線を走り続けたい

―ハンバーグへの偏愛を続けることによって生まれた苦しみなどはありますか?

五島

食べ歩きを始めて4年ぐらい経った頃ですかね? 痔になりまして。病院に行って、お医者さんに「なんか思い当たる節ある?」と聞かれたので、「毎日、ハンバーグを食べてるんです」と言ったら「何してるんですか。まず、それをやめてください」と言われて(笑)。


だから、これまでの食べ歩き生活のなかで1ヶ月だけハンバーグを絶っていた時期があるんです。解放された気分でしたね……。

―ただ、1ヶ月後には元の生活に戻ったんですね。

五島

はい。そんなこんなで、今は週4くらいのペースで食べ続けています。

―2008年から始めたハンバーグの食べ歩きをどうして今まで続けてこられたと思いますか。

五島

1つは、メディアに出たことが理由です。実は、ハンバーグの専門家ってあまりいないんです。ほかに誰かいればその人にお任せして、僕はやめていたかもしれない。


また、測量士という仕事は現場がいつも違うので、毎日23区内を動き回ります。つまり、いろんなお店を食べ歩くことができる。そんな職種の人ってほかにあまりいないんじゃないかな。

今、ハンバーグの専門家を目指している人は多いのでしょうか?

五島

はい。実際、いろいろな人から「私もハンバーグを食べ続けているんです」というDMが定期的に僕のInstagramへ送られてきます。でも、みんな半年もたないです。ハンバーグを食べ続けるのってキツいんです(笑)。体もキツいし、お財布にもキツいし、提供する店舗数はラーメンほど多くないので、調べ尽くさないとなかなかお店も見つかりません。

先輩からの圧で始まったハンバーグの活動は、大変なことも多かったんですね。今振り返って、ハンバーグという偏愛の対象を見つけたことは五島さんにとって幸せなことでしたか?

五島

幸せなことです。メディアに出させてもらうことで、お店の人とじっくり話す機会ができましたから。


料理人はもちろんですが、測量士にも職人のような側面はあります。実際、話を聞くと皆さん何かしらのこだわりを持っている。僕は職人への興味が強いので、あるお店で料理人の方とハンバーグについて夜9時から翌朝4時まで語り尽くしたこともあります(笑)。

このような偏食ブログの運営は、人におすすめしますか?

五島

やったほうがいいですよ。ブログを始めていろんなマニアの方と知り合ったのですが、偏愛って自分の子どもと楽しむことができるんです。マニア界隈で「子どもと一緒に活動している」という人は多いですよ。


特に、ハンバーグの食べ歩きは子どもと一緒に活動しやすいです。僕もよく息子とお店に行きますが、「あそこ、なんて書いてある?」「いわなかぶた?」「あれは岩中豚(いわちゅうぶた)といって、岩手県の豚で……」と、店内で自然と英才教育が始まったりします(笑)。

五島さんにとって、ハンバーグの最大の魅力はなんでしょうか?

五島

老若男女誰でも食べられて、苦手な人が少ないところです。極端な話、恋人の胃袋を掴みたい人はハンバーグ作っときゃいいくらいで。

たしかに、ハンバーグが出てきたらうれしいです!

五島

そうですよね? しかも、市販のハンバーグの素をひき肉と混ぜて焼くだけで、手作りできますから。

いつか、息子とハンバーグのフェスを開催するのが夢

ハンバーグにまつわる活動を続けるなかで、夢や目標はありますか?

五島

僕が好きなお店に声をかける形で、ハンバーグのフェスのようなものを開催できればと思っています。


会場内で食べられるのは、もちろんハンバーグだけ。小休止はないし、基本的に僕はデミグラスソース推しなので、お客さんはキツい目にあうかもしれません(笑)。

いや、ぜひ行ってみたいですよ! でも、今の五島さんならもう実現できるのでは?という気もします。

五島

かもしれません。ただ、問題が一つあります。フェスを開催する場合、その日はお店をお休みにしてもらわないといけないんです。それがどうしても嫌なんですよね……。


そう考えると、うちの息子に全店舗のハンバーグのつくり方を習得させて、会場でつくってもらうのがいいのかな(笑)。実際、彼はハンバーグが大好きだし、厨房でハンバーグのつくり方を教えてもらったお店がすでに4店舗ほどあります。

五島さんのYouTubeチャンネル「ハンバーグ測量士チャンネル」には、息子さんも出演中

恐るべき少年ですね(笑)。そういえば、今までのハンバーグ活動について奥様からご理解は得られていますか?

五島

一度、五島家が年間でどのくらいハンバーグにお金を使っているか、妻が僕のブログを遡って集計したことがあるんです。どうやら僕、1年間でハンバーグに40万円くらい使っているらしいんですよ。

えーーっ!

五島

でも、妻は「メディアにも出ているし、生きがいにもしているし、食育で助かっている面もあるから、そこは大目に見る」と。


あと、うちの妻がつくるハンバーグってなぜかメチャメチャうまいんです。だから、「妻のハンバーグが一番おいしい」という思いは僕の根底にあります。「嫁バーグ」と名付けて、Instagramでもよく紹介していますよ。「明日あたり、ミシュランの審査員が来るかも」って(笑)。

五島さんのInstagramより、「#嫁バーグ」。ハンバーグを通して、2人の絆が伝わってくる

すごくいい話! 自発的に始めた食べ歩きではなかったけれど、ご自身のなかにハンバーグを好きになる材料はやっぱりあったんですね。

五島

ええ、もちろん。そもそも僕は、ほっといたらハンバーグばかり食べていた人間ですから(笑)。

PROFILE
川村健一

五島鉄平

ハンバーグ測量士

測量の仕事の合間を縫って日々ハンバーグを食べ続ける「ハンバーグ測量士」。年間約200店舗、300食を食べ回っている。その食べ歩きブログは話題となり、『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)や『マツコの知らない世界』(TBS系)など出演も多数。


YouTube「ハンバーグ測量士チャンネル」

ウェブサイト「ハンバーグ測量士の挽肉本達」

ブログ「おこちゃまランチ ~ハンバーグ測量士のハンバーグ巡りブログ~」


CREDIT

取材・執筆:寺西ジャジューカ 撮影:小野奈那子 編集:モリヤワオン(ノオト)

ブランド名

商品名が入ります商品名が入ります

★★★★☆

¥0,000

PROFILE

山田 太郎

CO-FOUNDER & CTO

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。

山田 太郎

CO-FOUNDER & CTO

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。

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