神社アドバイザー・フリーライターの井口エリさんが心がける「偏りすぎない偏愛」
となりの偏愛LIFE

神社アドバイザー・フリーライターの井口エリさんが心がける「偏りすぎない偏愛」

#カルチャー #キャリア #仕事・働き方 #健康的なくらし #趣味・遊び

日々をいきいきと過ごしている人=さまざまな「好き」を探求している人にお話をうかがう連載企画「となりの偏愛LIFE」。第7回のゲストは、神社アドバイザーとフリーライターという、二足のわらじで活動している井口エリ(ちぷたそ)さんです。


普段から神社にまつわるお話をSNSでも発信している井口さん。現在は、ライターとして活動するかたわら、小野照崎(おのてるさき)神社の御朱印をはじめとした参拝者向けの企画立案のほか、過去には穴守稲荷(あなもりいなり)神社へのネオン奉納のお手伝いなども行っています。


今回は、神社・御朱印との出合いや神社アドバイザーを始めたきっかけ、普段の活動内容などのほか、2つのお仕事どちらも楽しむためにバランスを保つコツを、井口さんに伺いました。

御朱印企画から執筆まで。幅広い神社アドバイザーのお仕事

—井口さんが、神社や御朱印に興味を持ち始めたのは、いつのことですか?

井口

2016年ごろに読んだ小説で、五色不動と呼ばれる目白不動尊、目赤不動尊、目青不動尊、目黒不動尊、目黄不動尊の存在を知り、「参拝してみたいな」と思いました。


そして、訪れた証しとして御朱印をいただいてみようと思い立ちました。そのとき初めて、その場で書いてくれる、世界で1枚だけの御朱印の存在に感動したのです。お寺ごとのデザインの違いにもワクワクしました。 


いまでは、御朱印帳が26冊(約1000体)まで増えました。

当時井口さんが五色不動に訪れた際、いただいた御朱印

すごい量ですね! 現在は神社アドバイザーとライターという二足のわらじですが、いつ頃から始め、どのような割合でお仕事されているのでしょうか。

井口

神社アドバイザーとして名乗り始めたのは最近のことで、何かアドバイザーとしての資格・検定があるわけではないんです。神社さんとのお仕事が増えるにつれて、「この仕事を表す言葉はないだろうか?」とずっと考えていました。 


実は、ライターについても最初は「自分がライターと名乗っていいのか!?」という気持ちもあった中、「えいや!」と名乗り始めた経緯があったんです。だから、神社アドバイザーも「これはもう、名乗っていいよね?」と思って「えいや!」と(笑)。


仕事の割合的には、今ではライターよりも神社アドバイザーのお仕事の方がやや多くなってきました。

神社アドバイザー・ライターの井口さん

—神社アドバイザーとしては、普段どのような業務をされているのでしょうか。

井口

具体的には、小野照崎神社さんで日本の文化や神社にまつわるコラムをnoteで発信したり、参拝者の方に神社の楽しさを体験していただくための企画のブレストに参加したり。ほかにも、小野照崎神社さんは月ごとにデザインが異なる御朱印を用意しているので、そのアイデア出しにも関わっています。

井口さんが神社アドバイザーとして携わっている小野照崎神社(東京・入谷)

井口

とくに御朱印については、令和に改元した時に「令和元年」の特別な御朱印を各神社さんが出したことで注目を集め、世間的に盛り上がりが起きました。御朱印のデザインも多様化して、箔押しのデザインや切り絵デザイン、透明の御朱印などが増えていた時期でもありました。もともと小野照崎神社さんも注目されていたタイミングで、令和の御大礼(天皇ご即位の儀式の総称)の御朱印がテレビで取り上げられ、さらに大きな話題を呼んだんです。


だから、それ以降も引き続き話題にしてもらえるような御朱印のアイデア出しを毎月行いつつ、御朱印のテーマやモチーフにも興味をもってもらい、知識を深めていただけるようにリーフレットも作成しています。御朱印には神社の神事や行事、お祭りをモチーフとしたものが多くあります。そこで、御朱印とリーフレットを通じて、モチーフとなった事柄への理解を深めてもらえるきっかけになればと思っています。


コロナ禍では参拝客が減りましたが、その間も御朱印は毎月作成し、神社として知識を蓄えていました。私としてもこの仕事があったおかげで、コロナ禍でライターとしての仕事が減っても、そこまで困らずに済みました。

井口さんが企画・執筆に携わった御朱印とリーフレット。神嘗祭と新嘗祭にまつわる御朱印で、つなげると一枚の絵としても完成する

東京・大田区羽田にある穴守稲荷神社に祀られている「無窮の鳥居ネオン」。井口さんは、ネオン広告を手掛ける企業がこの鳥居ネオンを奉納する際のサポートを行ったそう

最初の一歩はイベントで作った本。ご縁が繋がって神社アドバイザーに

—現在は幅広い範囲の活動をされていますが、神社関連のお仕事は、どのように始まったのでしょうか。

井口

ライターのお仕事絡みで「Webメディアびっくりセール」という即売会イベントに出展することになり、そこで作った神社にまつわる本(同人誌)がきっかけです。


この本を見返すと、「今ならもっとよく書けるのに!」と恥ずかしいと感じてしまうところもあります……。でも、自分の好きなモノを形にしたことで、神社関係者の方とご縁ができ、小野照崎神社さんを取材する機会をいただけたんです。その取材からしばらくたった頃、小野照崎神社さんから直接お声がけいただき、現在の仕事へつなげることができました。今思い出しても、ラッキーなご縁でしたね。


そう考えると、ライターをしていなければ、「Webメディアびっくりセール」に出ることもなかったですし、最初の1冊を作らなければ、神社アドバイザーという仕事にもつながらなかったかもしれないです。

Webメディアびっくりセールで出した同人誌『いろいろな神社と出合える本』。井口さんなりの神社との出合い方や、オタク趣味と神社趣味との親和性などが書かれている

—世の中には好きなことを仕事にしたいタイプと、趣味として楽しみたいタイプがいるかと思います。井口さんが、好きなことを仕事にできている原動力は何でしょうか。

井口

好きなことは、すぐ人に教えたいと思うんです。だから、好きなことを仕事にしても、苦痛じゃない。「知ってくれ!」という気持ちの方が強いし、伝えることが楽しいんです。趣味と仕事が一体化しているところがありますね。


改めてどこが仕事と趣味の境界線だろうと考えると、SNSでつぶやくだけなのは趣味、誰かに伝えるために考えて発信するのは仕事なのかもしれません。好きなことを仕事にすることで、自分の好きが誰かの役に立てる。それが自分にとっての原動力かもしれません。

好きを守るために深入りしない。二足のわらじだからバランスが取れている

2つの肩書きを両立するなかで、楽しいこと、辛いことはありますか?

井口

企画に関わった御朱印が世に出て、受けてくれた方がSNSに「かわいい」とアップしているのをみると最高な気持ちになります! 企画から出来上がるまでの工程を見ているので、感動もひとしおですね。


辛いことは、特にないですね。ただ、「好き」のバランスを崩さないように、関わり方の割合には注意をしています。全然違う分野について触れたり考えたりできるライター業があるからこそ、神社も楽しく関われていると思うのです。視点の変換ができる場がある、というのは大きいですね。


それに、神社アドバイザーにしてもライターにしても、ひとつのことだけを考えていると文章も硬くなってしまう気がします。気持ちの側面だけでなく、アウトプットのバランスを取るためにも、二足のわらじがちょうどいいのかもしれません。

それぞれのお仕事が、良い影響を与え合っているのですね。

井口

はい。今、とてもバランスがいいし、穏やかに過ごせています。それに、神社以外にも好きなことはあります。ゲームも好きだし、神社と関係がないところを歩くのも好き。神社以外のことにも興味を持つことで、仕事面以外でも自然とバランスを取っているのかもしれません。


神社のお仕事ができてからは穏やかに仕事ができているので、周りのフリーライターさんに「おすすめの神社を教えて」と言われたら、いい流れを生んでくださった小野照崎神社さんをおすすめしているほどです(笑)。

—偏愛がありながらも、仕事や生活において偏りすぎないようにされているのは、素晴らしいです。

井口

ライター業も、元々は別の仕事をしているときに副業として始めたんです。二足のわらじでバランスを取っていましたが、ある程度売上が立って状況も変わってきたので、思い切ってライターに絞ることにしたのです。このときの決断も、思い返せばバランスを取る行動だったのだと思います。


自分にとって「好き」はとても大事だからこそ、その気持ちを守るためにも、昔から心地よい環境になるようにバランス感を持って立ち回るようにしているんです。

街歩き、御札、歴史……。御朱印から「好き」の世界が無限に広がる

―神社・御朱印を好きになったことで、増えた楽しみはありますか?

井口

もともとよくお出かけをするほうでしたが、神社を好きになってから、さらに行動範囲が広がりました。今まで降りたことがない駅で降りようと思うときも、神社という目的ができたことで、行きやすくなります。どこの街にも神社はあるし、街歩きの目的としてちょうど良いんです。


また、新たな街やお寺、神社だけでなく、2度3度と訪れた場所で新たな発見に出合うこともあります。最近あった発見は、何度も足を運んでいる永田町の山王日枝(さんのうひえ)神社の敷地内に150年以上の歴史を誇る老舗のうなぎ屋さんを見つけたことです。


あとは御朱印だけでなく、御札も好きになったので、お寺にも足を運ぶようになりましたね。御朱印は、新しいことにどんどんチャレンジして、デザインも進化しきっている感じがありますが、御札は昔ながらのデザインで逆に新鮮なんです。

御札への興味が高じて、『御札ハンドブック』という小冊子も制作。御朱印や神社の木札に比べ、お寺の御札は信仰の対象そのものが描かれることが多いのだとか

—御札の世界も広い! 御朱印から、“好き”の世界が広がっているように感じます。

井口

そうですね、エンドレスです。知れば知るほど、楽しいポイントが増えていくように感じます。歴史にも詳しくなれるし、御朱印から入った世界が無限に広がって、今に至っていると感じます。

—奥が深い寺社の世界ですが、これから神社や御朱印を楽しんでいきたいと考えている人がいたら、入口としてどんなことをおすすめしたいですか?

井口

まずは、住んでいる地域の神社(氏神神社)に参拝するのがいいと思います。毎月同じ神社へ参拝すると、何か発見があるかもしれないし、なにより近場に精神的なよりどころがあるとメンタルにもいいんです。


参拝するときは、心を落ち着かせて自分と向き合う時間になります。月に1度でも、そういう時間を作ることができれば、自分自身のメンタルも安定するし、前の月からどれだけ自分が成長できたか考えることもできますよ。

PROFILE
川村健一

井口エリ(ちぷたそ)

フリーライター/神社アドバイザー

デイリーポータルZ、ねとらぼなどで活躍するフリーライターとして活躍するかたわら、神社の授与品の企画など行う神社アドバイザーとしても活動する。イラストレーター。元非常勤巫女。宝石鑑定士の資格も持っている。


X:https://twitter.com/chip_potekko

CREDIT

ライター:ミノシマタカコ 撮影:栃久保誠 編集:野阪拓海(ノオト)

ブランド名

商品名が入ります商品名が入ります

★★★★☆

¥0,000

PROFILE

山田 太郎

CO-FOUNDER & CTO

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。

山田 太郎

CO-FOUNDER & CTO

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。

SHARE

この記事を読んでいる人に人気の記事