お風呂のソムリエ・松永武さんに学ぶ、「偏愛」を仕事にする魅力
となりの偏愛LIFE

お風呂のソムリエ・松永武さんに学ぶ、「偏愛」を仕事にする魅力

#アイデア・工夫 #カルチャー #ライフスタイル #仕事・働き方 #健康的なくらし #趣味・遊び

日々をいきいきと過ごしている人=さまざまな「好き」を探求している人にお話をうかがう連載企画「となりの偏愛LIFE」。第5回のゲストは、「お風呂のソムリエ」として活動する株式会社バスリエ代表・松永武さんです。


これまで5万点以上のバスグッズを試すなど、入浴の魅力を探究し続ける松永さんがお風呂の魅力に気づいたのは、約20年前のこと。睡眠時間を削って忙しく働いていたサラリーマン時代、お風呂の入り方をたった一晩変えたことが、「偏愛ライフ」を歩むきっかけになったそう。今回は、お風呂の魅力や気になる仕事内容、「好き」を仕事として楽しむ秘訣などたっぷりお話を伺うとともに、「やりたいことが見つからない」とお悩みの方へのアドバイスもいただきました。「好き」を突き詰める喜びが、きっと伝わってくるはずです。

起業のきっかけは、奥さんからプレゼントされた入浴剤のお風呂

― 松永さんは「お風呂のソムリエ」として、どんな活動をされているのか教えてください。
松永

「お風呂のソムリエ」とは、一人ひとりに合ったお風呂の入り方を提案する人、お風呂を通じて自らの想いを伝える人であると定義しています。それに則って、これまでお風呂の楽しみ方を伝える講演会への登壇、お風呂グッズの紹介やオリジナルの商品開発、お風呂に関する調査を行なってきました。

最近は、温浴施設のプロデュースにも力を入れています。サウナや温泉の入浴プランを開発したり、施設のコンセプトを考えたり、ソフト面からハード面までお手伝いさせてもらっていて、今年8月には北海道幕別町の老舗温泉ホテルをプロデュースさせていただきました。

株式会社バスリエ代表・松永武さん

―お風呂を軸に幅広い事業を手掛けているんですね。どうしてここまでお風呂に傾倒するようになったのでしょうか?

松永

2005年にバスリエを創業する前は、友人が立ち上げた枕の専門メーカーに勤めていました。通勤時間は家から会社までドアtoドアで2時間ほどかかり、忙しく働いていたので、終電帰宅も当たり前。睡眠時間はいつも3〜4時間で、疲れが取れない毎日を送っていました。


そんなある日、ガタガタの生活を見かねた妻が入浴剤をプレゼントしてくれたんですよ。さっそくそれを使って、いつもとお風呂の入り方も少し変えてみたら、次の日の朝、びっくりするくらい体調がよくて。「入り方ひとつでこんなに身体の状態が変わるんだ。もしかしてお風呂って面白いのかも」と思い、ついにはお風呂の専門店を立ち上げてしまいました(笑)。

具体的には、どんなふうにお風呂の入り方を変えたんですか?
松永

湯船でしっかりと汗をかいてリラックスし、身体を芯から温めるようにしました。それまでも毎日湯船に浸かっていましたが、当時は「深部体温を温める」ということを知らなくて、ちょっと汗をかいて、身体の表面だけ温まったらすぐにお風呂から上がっていたんです。でも、これだとすぐに身体が冷えてしまうし、疲れも取れにくい。


その日をきっかけに、芯から温めるという感覚を知ることができてからは、交互浴や半身浴など色々な入浴法を試すようになりました。そこから20年近く経ったいまでも、終わりなき旅に出ている感覚でお風呂の入り方を探求し続けています。

バスリエのオフィスに設置されたバスタブ

日本こそがお風呂文化の「黒船」に。松永さんを突き動かす原動力

起業当時、家族や友人などまわりの人からはどんな反応がありましたか?

松永

両親はとにかく心配していました。「なんでお風呂なの? 仕事としてやっていけるの?」って何度も言われて。実際、会社を立ち上げてから1年くらいはバイトとかけ持ちで、生活基盤を整えることに必死でした。ただ、僕自身はとにかくワクワクしていたので、あまり周囲の反応は気にしていませんでしたし、いまでもうまくいくかではなく、「やらなくちゃ」という使命感が原動力になっています。

―趣味でお風呂を楽しむという道もあったと思うのですが、仕事にされたのはその使命感ゆえのものなのでしょうか。

松永

最初から、趣味で楽しむだけという考えはなかったですね。昔から、自分のやることで人に喜んでもらうことにやりがいを感じていたので、やっぱり仕事にしたいなと思っていました。


僕は、疲れている人を笑顔にしたいという気持ちが強いんです。寝具メーカーで働いていたのも、疲れをとるには質のいい睡眠を、そのためには質のいい寝具を……と考えていたからです。そして、疲れにはお風呂というアプローチも有効なのだと気づくことができました。


入浴は、肉体はもちろん心や脳の癒しにもつながるので、どこをどう癒したいかによって入り方も変わってきます。近年注目されているスリープテック同様、お風呂の研究もどんどん進められていくべきですし、温泉大国と言われるほど昔からお風呂文化が根づいている日本こそが「黒船」的な存在になるべきです。世界中に入浴の価値をもっと伝えていくことが、僕の使命だと思っています。

お風呂に対して情熱をかけるあまり、壁にぶつかったり、苦労したりした経験はありますか? ひとつのことばかり考えていると、煮詰まってしまう人も少なくないのではないかと思います。

松永

もちろん苦労はありましたが、大きな壁にぶつかったことはないですね。身の丈を大事にしているので、自分のできる範囲でこつこつやってきました。ただ、最近は自分のやりたいことを叶えるために、身の丈を超えていかなきゃいけないなと感じています。


さきほどのお話とも通じますが、僕はお風呂を、食事と同じように楽しんでもらえるようにしたいんですよ。和食や中華やイタリアンみたいにお風呂にもいろんな種類があっていいし、コース料理みたいに五感で楽しめるようになってほしいなと。たとえばフレンチのフルコースは、お料理はもちろん、空間や会話、お酒のペアリングなど、さまざまな楽しみ方がありますよね。お料理自体も前菜から始まり、メイン、デザートとバリエーションが豊かです。一方で入浴は、自動湯沸かしボタンをぽちっと押すだけ。それって毎日同じご飯を食べているようなもので、つまらないなと。


自分たちが運営する静岡県裾野市のサウナ施設「サーマルクライムスタジオ富士」では、体を温めたり冷やしたり、いろんな熱のグラデーションを感じながら4〜5時間かけて深部体温を高める温浴体験を提供しています。性別関係なく、男女一緒に水着で入って楽しむこともできるんです。


お風呂文化をどう育んでいくか、という意味では、食文化というお手本があります。ゴールに向かってやるべきことは明確なので、悩んだりすることも少ないんですよね。

松永さんがプロデュースする「サーマルクライムスタジオ富士」。個性的な5つのサウナと4つの水風呂が体験できる

首肩の凝りにバスピロー。ぬるま湯に浮かんでストレス解消

松永さんはこれまで5万点以上のバスグッズを試してきたそうですね。魅力的なバスグッズを見つけるために、どんなことをしていますか。

松永

いまは昔ほど積極的に集めているわけじゃないんですけど、熱心だった頃はネットで調べたり、日用品や繊維の展示会を飛び回ったりしていました。おそらく、ほとんどの方は「バスグッズ」と聞くとバスルームのなかで使うアイテムを思い浮かべると思いますが、僕は入浴前後の行動も含めた幅広い意味で捉えています。お風呂を楽しむためには食事も運動も睡眠も関係してくるし、すべてはお風呂から始まるって本気で考えているんですよ(笑)。

なるほど……! 今日はそのなかでも、おすすめのバスグッズについてお伺いしたいです。たとえば、最近のシャワーヘッドで気になるアイテムはありますか?

松永

MTGの「リファファインバブル ピュア」はミストモードが搭載されていて、水圧を避けたい顔なんかにも使いやすいのがお気に入りです。浴び心地でいくと三菱クリンスイの「ウォータークチュール」は素晴らしい。水道水を軟水化してくれるというもので、ほんの少しのシャンプーでもものすごく泡立ちがいいんですよ。好みや気分に応じて変えられるように、何本かシャワーヘッドを持っていてもいいと思います。

松永さんは「疲れている人を笑顔にしたい」という思いをお持ちとのことですが、たとえば仕事で疲労困憊の人には、ほかにどんなバスグッズを勧めたいですか?

松永

タオルを平日と休日で使い分けるのをおすすめしたいです。仕事終わりに疲れているとき、何も考えずにこれを使えばいいや! と思える平日タオルと、すっごくふかふかで幸福感を得られる休日タオルと分けることで、お休みの日の満足度がきっと上がるはずです。


あと、首肩が凝っている人にはバスピローがおすすめです。お風呂は身体を温め血流の流れをよくするとともに、筋肉の緊張をゆるめてくれる効果があります。疲れているとつい浴槽のフチに首をもたれかけてしまいますが、頚椎を圧迫して血流を止めてしまうため、あんまりよくないんですよ。そんなとき、バスピローがあると首を圧迫せずに済みます。人間は水に浮いているときがストレスが少ないらしいので、お湯を32度程度のぬるま湯にして、バスピローを使って身体を湯船に浮かせてみるのもいいと思います。

バスピローの使い方を説明する松永さん

自分の好きなことがわからないあなたに。「偏愛」を見つける3つの方法

松永さんが思う、「偏愛」を仕事にする魅力を教えてください。

松永

僕は、人間誰しもに平等に与えられるものって、時間しかないと思うんです。それが濃かったり、楽しかったりするっていうのはすごくいいことで。もちろんいろんな波がありますし、人生をマラソンに例えるなら、ずっと同じペースで走り続けるのは難しい。でも、トータルで考えるとずっと好きなことをできているので、全部ひっくるめて楽しいんですよね。もはや、仕事をしていないときのほうが苦痛です(笑)。

山あり谷ありでも仕事を楽しみ続けるコツってありますか?

松永

「ギャップを楽しむこと」じゃないでしょうか。僕の場合、毎日入浴剤を入れたお風呂に入っていると、だんだん「つまらないな」と感じてくるんですよ。でも、そうしたら入浴剤を入れないお風呂が新鮮に感じられるようになるし、またそれに飽きたら、今度は銭湯に行ってみたり、温泉に入ってみたりする。そういう心の波やメリハリを楽しめるようになると、たとえお風呂に関係のない時間も「これはお風呂を楽しむための時間だ」と思えるようになってきます。「空腹は最高の調味料」と同じで、自分自身をいかにそのマインドに持っていけるかが一番の秘訣だと思います。

自分の好きなことがわからない人もたくさんいますが、どうしたら熱中できるものや「偏愛」が見つかると思いますか?

松永

おすすめの方法が3つあります。1つ目は、自分史をつくること。あのとき楽しかったな、嬉しかったな、逆にこういうのは嫌だったなという感情の動きや出来事を書き出してみるんです。ありきたりかもしれませんが、未来は、過去や現在の自分の延長線上に描くものです。体験していないところから何かを生み出そうと思っても、嘘になってしまうので。


2つ目は、なんでもやってみること。さっきの続きですけど、過去がないならつくればいいんですよね。体験したことは、必ず経験になり、自分自身をつくる過去になります。現状「これだ!」というものが見つからない人は、興味を持ったらとにかく試してみたらいいと思います。


最後は覚悟を決めること。進む道を決めたら覚悟を持って突き進まないと、何かを成し遂げることはできません。その過程で、きっとどうしてこれが好きなのか、本質はどこにあるのか、考えを深めることができるはずです。

ありがとうございます。最後に、今後の展望を教えてください。

松永

直近では僕の考えた「スポーツサウナ」を発祥させるのが目標です。簡単に言えば、サウナに入ることで心拍数をコントロールする競技なんですけど、老若男女誰でも参加できるので、オリンピックとパラリンピックの垣根を超えたスポーツになれるんじゃないかなって。スポーツ科学があるように、競技化することでお風呂の歴史や記録を残す意味でも叶えたいですね。


いま実現しようとしていることって、傍から見たらぶっ飛んでいるかもしれませんが、「ここでしか味わえない体験」ってすごく大事だと思うんです。こうやって言葉で伝えても、極論、その人自身が体験しなければ意味がない。お風呂の世界は思った以上に広くて深いので、自分なりの最高を見つけてもらえるような体験をこれからも届けていきたいです。

PROFILE
川村健一

松永 武(まつなが たけし)

お風呂のソムリエ

お風呂が好きすぎて脱サラ!5万点以上を試したバスグッズマニア。温泉や銭湯、自宅のお風呂など、様々なお風呂の楽しみ方を日々探索中。構想10年!極上のサウナ体験ができるテーマパーク、サーマルクライムスタジオを静岡県にオープン!『マツコの知らない世界』(TBS)、『ヒルナンデス!』(日本テレビ)などTV出演多数!


著書に『とことん楽しむサウナの世界』(日本文芸社)


ウェブサイト:https://s-d-m.jp/talents/matsunaga-takeshi/

CREDIT

ライター:石澤萌(sou) 撮影:タケシタトモヒロ 編集:岩見旦(CINRA.Inc,)

商標について

リファファインバブル ピュアは、ファインバブル産業会(FBIA)登録商標です。

ウォータークチュールは、三菱ケミカル・クリンスイ株式会社登録商標です。

ブランド名

商品名が入ります商品名が入ります

★★★★☆

¥0,000

PROFILE

山田 太郎

CO-FOUNDER & CTO

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。

山田 太郎

CO-FOUNDER & CTO

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。

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