親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。
オフィスで、お家で、サードプレイスで……さまざまな仕事スタイルが増えた昨今。しかし、どこで働いていても仕事の悩みはつきまといます。連載企画「専門家に聞く!WORK GOOD」では、そんな悩めるワーカーのモヤモヤを解消し、スッキリとした気持ちで仕事に臨むためのヒントを、さまざまな分野の専門家が解説します。
新卒入社や転職、部署異動などで、新しい仕事に臨む機会の多い春。新たな業務でたくさんの疑問が浮かぶ季節でもあります。
そんな中、よく聞かれるのが「上司から『結局、何を聞きたいの?』と言われてしまった」「疑問はたくさんあるのに、どう質問したらいいかわからない」という“質問下手さん”たちのお悩み。自分の疑問を確実に伝え、欲しい情報を効率よく得るには、どのように質問をすればいいのでしょうか。
第21回は、執筆や講演、研修を通じて言語化やアウトプットの実践的なノウハウを提供する、ライター&インタビュアーの山口拓朗さんに、上手な質問のコツを聞きました。
質問の目的が明確になれば「何を聞きたいかわからない」は減る
実は、質問が苦手な人には共通した特徴があります。それは「状況説明が長すぎてわかりにくい」「事前に情報を整理せず、相手に判断を丸投げしている」ということ。
質問する目的は、自分の疑問を相手に正確に伝え、欲しい情報を引き出すことです。曖昧な質問や相手に丸投げする質問では、あなたが何に困っていて、何を知りたいのかが伝わらないため、相手も答えようがありません。
具体的かつ要点のまとまった質問をするには、準備が大切です。自分の中で明確にしておくべき情報は2つ。1つめは、質問をすることで何をどう解決したいのか、という「目的」です。質問下手さんは、意外とこの部分を見落としているため、とりとめのない質問になってしまうことも。
2つめは「現在地」です。現状起きている課題に対し、自分がどこまで把握しているのか、質問する前に整理しておくと、相手はポイントを絞って答えやすくなります。
ただ、新たな課題に直面すると、「そもそも、何をわかっていないのかわからない」ととまどう場面もあるでしょう。そんなときに私がおすすめしているのは、わからないことをノートに書き出し、「具体抽象ピラミッド」に当てはめる方法です。

事業のコンセプトやビジョン、方向性などに関する課題が「抽象」に、実務として何をすべきかといった細かい課題が「具体」にあたります。ピラミッドを使って課題を整理し、自分がどこでつまずいているのかを自覚できれば、質問の内容を明確にできるはずです。
たとえば、とあるプロジェクトの概要を書くのに手間取っているとしましょう。それは、「プロジェクトのコンセプト(抽象)」がわかっていない場合もあれば、「会社の通例となっている文体(具体)」がわかっていないというパターンもありえます。あるいは、どちらもわかっていなかった!なんてこともあるかもしれませんね。
課題は「概要が書けない」ということに共通していますが、「わからない」ポイントによって、質問の仕方も変わってきます。まずは「なにがわからないのか」を丁寧に紐解くことで、質問で重視すべき点が見えてくるのです。
いよいよ質問! 押さえておきたい基本テクニック
いざ質問しようとすると、「嫌な顔をされたらどうしよう」「仕事ができないと思われるんじゃないか」といった不安が頭をよぎり、躊躇してしまう人も多いのではないでしょうか。しかし、わからないことを放置していると業務が滞り、全体の進行に影響を及ぼすおそれがあります。まずは、勇気をもって一歩を踏み出しましょう。
質問の際は、貴重な時間を割いてくれたことへの感謝を伝えられると、コミュニケーションがスムーズになります。「お手数をおかけします」「お忙しいところ恐れ入りますが」などのクッション言葉を添えることを、ぜひ習慣にしてください。
最初に「〇分だけお時間よろしいでしょうか」と伝えるのも大切です。◯分は、短ければ短いほどいいですね。相手の心理的なハードルを下げるとともに、自分自身も「大事なことを凝縮して伝えよう」と意識できるからです。「伝え上手な人は時間を区切り、伝わらない人はダラダラ喋る」と肝に銘じましょう。
また、質問にふさわしいタイミングを見極めるのも欠かせません。相手が忙しいときは避けるのが無難です。相手を問わず成功確率が高いのは、ランチやトイレ休憩から戻ってきたとき、会議が終わったとき、雑談したあとなど、相手の仕事が一段落しているタイミングです。とはいえ、余裕があって機嫌がいい時間帯は、やはり人によって違います。普段から周囲の人の様子を観察する癖をつけましょう。

「よくある場面」ごとの具体的な質問テクニック
ここからは、場面別の具体的な質問テクニックを紹介します。
① ⾃分なりに調べたけれど、正解に確信が持てないとき
自分なりの結論を伝えたうえで、具体的なアドバイスを求めましょう。このときに押さえておきたいのが、思考のプロセスや迷ったポイントも簡潔に共有すること。情報のソースや思考プロセスは、質問相手にとって重要な判断材料になります。
② 指⽰の内容が抽象的すぎて、ゴールが⾒えないとき
「いい感じにやっておいて」のような曖昧な指示を受けたときは、必ず言葉の定義を明確にしてから動き出しましょう。「いい感じ」という言葉ひとつ取っても、定義は人によって異なります。自分なりに「どんな状態がいい感じか」を言語化し、数字や固有名詞に落とし込んで、相手に確認してください。
さらに、「AかBの状態に持っていけるといいのではと思うのですが、○○さんはどう思われますか?」といったように、複数の案を提示するのもいいですね。選択肢があると、相手がより理想に近いものを選ぶことができるうえ、考える過程で自分の頭を整理することもできます。
③ 教わったことを忘れてしまったとき
以前教わった内容を忘れてしまうこともあるでしょう。そんなときは、覚えているふりをしてごまかそうとしないこと。「ごまかそうとする人」という印象は、忘れてしまった事実以上に信頼を低下させます。
記憶に自信がないなら、「念のため再確認させてください」と伺いを立てると良いですね。うろ覚えでもいいので自分なりに覚えていることを伝え、「このやり方で合っていますか?」と確認すると、相手も答えやすくなります。
入社後や異動後は情報量が多い環境に置かれがちで、どうしてもいろんなことを忘れてしまいがちです。自分の記憶力を過信せず、必ずメモをとるようにしてください。
質問がうまくいかなかったときは、切り口を変えて再挑戦する
勇気を出して質問したものの、「意図がうまく伝わらず、的外れな答えが返ってきた」「やはり『何が言いたいの?』と言われてしまった……」ということもあるでしょう。そんなときは諦めず、問いかけ方を変えて再度質問してみてください。
質問し直すときは、次の2つの点を意識しましょう。
①質問の切り口を変える
「この資料作成をどう進めればいいですか?」のような曖昧な聞き方をしていたのなら、「資料をどう作成しようか悩んでいます。ここまではできているのですが、ここからはどう進めるべきかアドバイスをいただきたいです」のように、具体的な部分に焦点を当てた聞き方に変更しましょう。あなたがどこでつまずいているかが相手に伝わり、課題解決につながる答えを引き出しやすくなります。
②噛み合わなかった部分を特定する
1回目の質問で、相手に質問の真意が伝わっていない可能性があります。「どこまでは伝わって、どこが伝わらなかったのか」を質問相手に尋ねるのも大切です。たとえば「私の説明がわかりにくくて申し訳ないのですが」と前置きすれば、失礼にはあたりません。
チャットでの質問で意識したい⽂章術とマナー
リモートワークの日などには、口頭ではなく、チャットなどのテキストメッセージで質問することもありますよね。チャットでの質問自体はNGではありませんが、相手やタイミングによって向き不向きがあると認識しておきましょう。
特に、急ぎの用事をテキストでやりとりするのは嫌がられがちです。チャットでの質問は、「手が空いたときに返信をもらえればいい」くらいの緊急度のものに限るのが望ましいといえます。
メッセージを書く際は、冒頭で「○○についての質問があります」と用件を明確にしましょう。質問と背景のどちらを先に書くかはケースバイケースです。背景がある程度共有できている場合は質問を先に書き、そのあとで背景を簡潔に説明しますが、背景がまったく共有されていない場合は、先に背景を説明します。
質問の際は、どうしたら相手が受け取りやすいかを常に考えましょう。相手にとって必要のない情報をダラダラと書かないこと、「可否」「方向性」「AとBのどちらがいいか」といったような「判断してほしいポイント」を限定し、相手の負担を減らすことを意識すると親切です。

細かい点まで確認・相談したいときは、アポを取ったうえで対面、またはオンラインミーティングで質問することをおすすめします。文章のやりとりでは言葉の微妙なニュアンスが伝わりづらく、コミュニケーションエラーが起こりやすいからです。文章での質問は、あくまで簡単で緊急度が低いものに留めましょう。
質問力は社会人としての総合力に直結する
質問力が身につけば必要な情報を効率よく集められるようになるため、仕事のミスやトラブルが減り、生産性がアップします。また、的確な質問をするために課題とじっくり向き合う習慣がつくと、観察力や洞察力が高まります。その結果、さまざまな物事を解像度が高い状態で見られる能力がつくのです。
質問するのが恥ずかしいという気持ちもわかりますが、”聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥”。「質問」という貴重な成長の場を大切にして、社会人としてのスキルを磨いていきましょう。

『正しい答えを導く質問力』(かんき出版/山口拓朗)もチェック!
取材・執筆:小晴 アイキャッチ・図版:サンノ 編集:モリヤワオン(ノオト)
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