親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。
読書や情報収集を習慣化したいけれども、実際には時間が取れずに本や資料を読み始められなかったり、読み切れずに積読状態になってしまったり……。そんなことを繰り返すうちに、本との距離が広がっている人も多いのではないでしょうか。
今回は、速読を身につけるために200万円以上を自己投資した経験を持ち、独自の勉強法を確立した自称“日本一の速読オタク”の宇都出雅巳(うつで まさみ)さんが、誰でも実践できる「速読」のコツを伝授。単に「速く読む」だけでなく、「理解を深める」ための速読術を身につければ、限られた時間でも情報をしっかりと吸収できるようになるとのこと。読書に対する思い込みを覆す、アイデアに富んだ速読術について詳しく解説していただきました。
速読の秘訣は「予測」と「ストック」にあり
こんにちは、宇都出雅巳です。今回は、時間に追われるビジネスパーソンに向けて、私が効果的だと考える速読の実践方法についてお話しします。
最近、本から情報を取り入れたいと思っても、なかなか時間を確保できないという声をよく耳にします。『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅香帆著、集英社)という書籍がベストセラーになるなど、思うように本を読めないことに関するお悩みは、多くの人が抱いているようです。
速読は、そうした方々にとって非常に有効な方法です。
「速読=文字を速く読む技術」と誤解されがちですが、その本質はもっと奥深いものです。
では、皆さんに質問です。読書をしているとき、皆さんの頭の中では何が起きていると思いますか? もしかすると、「ただ目で文字を追っているだけ」と思われるかもしれませんが、実は私たちは無意識のうちに内容を「予測」しています。
もう少し丁寧に説明しましょう。私たちは文章を読みながら、すでに持っている知識や経験を基に、次にどんな情報が出てくるかを予想しながら、文章を理解しているのです。
たとえば、皆さんは本や記事を読もうとするとき、まずはタイトルや見出しを見た瞬間に、「次にどんな内容が続くのだろう?」と無意識に考えているはずです。私たちはこれを活用して効率よく情報を処理しています。
そして、この「予測」のプロセスこそが速読の基盤になります。それを支えるのが「ストック」、つまり蓄積された知識や経験、記憶です。たとえば、アラビア語の知識がなければ、アラビア語の本を読むことはできません。これと同様に、私たちは読書をする際、常にすでにある自分の知識や経験を引き出し、それをもとに次の展開を予測しています。
人間の脳は、文字をただ受け取るだけではなく、既存の記憶や知識と新しい情報を関連づけて整理し、理解を深めています。このプロセスこそが、効率的な読書、さらには速読の基盤となると言えます。
速読の誤解を解く!高速大量回転(KTK)法で「繰り返し読む」重要性
速読にはたくさんの知識が必要と考え、「ストックを増やすために百科事典の内容を記憶する」といった極端な方法を実践する人もいるかもしれません。もちろん、それも一つのやり方です。ただ、速読においてもっと重要なのは、「読みたい本をさっさと読み始めること」、そして「ざっくり読むこと」です。
速読に関してよくある誤解の一つに、「一度で全てを理解しなければならない」というものがあります。しかし、これは間違いです。
一度に完璧に読むことを目指すのではなく、ざっくりと全体を捉えた上で、何度も読み返すことが重要です。この「何度も読み返す」アプローチがポイントです。繰り返し読むことで記憶に定着させる。そうすることで、ストックを増やすことができます。
私はこれを「高速大量回転(KTK)法」と呼んでいます。1回読んで全てを理解しようとするのではなく、まずはざっくりと全体を把握し、すばやく繰り返し読むことで、徐々に理解を深めていく。わからないところで止まらずに、何度も繰り返し読んでいくうちに、内容が次第に頭のなかで整理され、記憶に定着し、自然と理解が進みます。
この方法は、難解なテキストに触れる際にも役立つだけでなく、ほかにも試験勉強を行う際にも効果的です。
速読というと、目をすばやく動かして視覚的なスピードを上げることや、言葉を頭の中で音声化せずに読む方法などが注目されがちです。もちろん、これらのテクニックも速読には有効ですが、私はそれだけでは真の速読は実現しないと考えています。
本当に重要なのは、読者自身のストックを増やし、それを活用して速く理解する能力を養うこと。「高速大量回転(KTK)法」を起点にストックを増やすことで、わからないことが減り、さらに速く読むことができるという好循環が生まれます。
これは、ビジネスにも応用がききます。ビジネスの現場では、限られた時間の中で効率的に情報を吸収することが求められますよね。一つひとつの資料をゆっくり、じっくり精読することも大切ですが、忙しいビジネスパーソンにとって、高速大量回転(KTK)で資料に目を通して理解する速読スキルを身につけておいて損はないはずです。
目次と見出しを駆使して、戦略的に読書する
では、もう少し具体的な速読の方法について掘り下げてみましょう。本を手にしてまず最初にすべきなのは「目次・見出しを確認する」ことです。
目次や見出しは、本文の要点をわかりやすく示すために作成されます。私もいくつか本を書いていますが、編集者の皆さんはかなりこだわって目次や見出しをつくっています。
目次や見出しをざっと見ることで、その本の全体像を掴み、予測をしながら読み進めることができます。これにより、頭の中で内容を整理しやすくなり、どの部分を重点的に読むべきかが自然にわかるようになるはずです。
また、目次や見出しを眺めることは、知らない街で地図を見るようなもの。先にガイドマップをみておくことで、その先をよりスムーズに読み進められるようになるでしょう。
目次から要点を掴むと、自分が興味のあるページが見つかるはずです。その部分を優先して読んでみるのもアリですよ。もしかしたら、「ページの最初から順番に読まなければならない」「飛ばし読みは良くない」という思い込みがあるかもしれません。しかし、これらの固定観念こそが、読書のハードルを上げてしまっているのです。
読書は本来、もっと自由で柔軟なもの。興味のある章から読み始めたり、目次や見出しを活用して必要な情報だけを抽出したりしても構いません。興味を持てる部分から、高速大量回転(KTK)法で読むことで、速読の効果が高まりますし、必要な情報に素早くアクセスできるようになるのです。
読書に対する思い込みを捨てることで、読書がより身近で手軽なものとなり、結果として知識の吸収効率も向上するはずです。
速読の技術を身につけることは情報収集において有益であり、読書の楽しみを損なうものでもありません。もちろん、小説などの文学作品のように、ゆっくりと味わいながら読むことで深く感情移入し、作品の魅力をより一層感じることができるジャンルもあります。ここでは遅読(スロー・リーディング)がおすすめです。
だからこそ速読と遅読を使い分けて、ビジネス書や専門書から効率的に情報を得た上で、一層文学作品を楽しむといった方法でも良いでしょう。読書の目的や内容に応じて読み方を変える柔軟性を持つことで、読書体験が豊かなものとなります。
読書のハードルを下げて、習慣化につなげる
最後に、読書を習慣化するためのコツをお伝えします。最も重要なことは、「読書に対するハードルを下げる」ことです。まとまった時間が取れない場合でも、3分や5分の隙間時間に目次をざっと見てみる。これだけでも良いんです。
読書は、特別な時間を設けて行うものではなく、食事や睡眠のように、日常の中で自然に行うものだと考えましょう。ちょっとした隙間時間に本を手に取り、興味のある部分だけでも読んでみる。これを習慣化することで、自然と読書が日常の一部となり、結果として知識のストックも増えていきます。
読書を習慣化する方法として、以下の3点を意識しましょう。
1. 隙間時間を活用する
2. 興味のある部分だけでも読む
3. 完璧主義を捨てる
速読は単に「速く読む」ことではなく、読書に対する考え方やアプローチを見直すことから始まります。
思い込みを捨て、読書をもっと自由で身近なものと捉えることで、知識の吸収だけでなく、読書そのものを楽しむことができるようになるはずです。
ぜひ、今日から速読の考え方を取り入れて、豊かな読書生活を始めてみてください。
宇都出雅巳
学習法・速読・記憶術インストラクター、著者
1967年生まれ。東京大学経済学部卒。30年にわたり、記憶術と速読を実践研究し、脳科学や心理学、認知科学の知見を取り入れた独自の勉強法を確立。学生や社会人向けの著書多数。全国でセミナーや講演を行うなど、誰でも実践できるノウハウを提供している。
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ライター:末吉陽子 アイキャッチ・図版:サンノ 編集:桒田萌(ノオト)
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