“最強”の漫画家になるために。漫画家・丸山恭右さんがたどり着いたこだわりの働き方とアイテム選び
ワークスペースの美学

“最強”の漫画家になるために。漫画家・丸山恭右さんがたどり着いたこだわりの働き方とアイテム選び

#ライフスタイル #仕事・働き方 #健康的なくらし #在宅ワーク

仕事や趣味などに気兼ねなく取り組むことができるその人だけの空間、ワークスペース。その人の考え方や行動様式が、色濃く反映される場所でもあります。「ワークスペースの美学」は、自分自身の心地よいライフスタイルを実践している方にご登場いただき、そこに至った経緯や魅力、結果として得られたものなどについて伺うインタビュー連載です。


15回目のゲストは、漫画家の丸山恭右さん。漫画配信サービス「サイコミ」で連載中の『TSUYOSHI 誰も勝てない、アイツには』は累計部数570万部超えの人気作です。さらに、丸山さんの技術や経験を発信するYouTubeチャンネルも注目を集めています。


大勢のアシスタントと同じ部屋に集まり、徹夜も厭わず作品を生み出す……そういった日常がイメージされがちだった漫画制作の現場ですが、そんな風景も今は昔。丸山さんは規則正しい生活を送りながら、身体づくりにも熱心に取り組まれているといいます。


そんな丸山さんは、作業空間に“居心地の良さ”を求めていると断言します。ワークスペースへ伺い、こだわりを一つ一つ深堀りしました。

「太極拳使いが世界最強」という設定が生まれたきっかけ

―見た目は弱そうなコンビニ店員の主人公が実は太極拳の使い手で、相手を次々と倒していく漫画『TSUYOSHI 誰も勝てない、アイツには』(小学館)。丸山さんが手掛けるこの作品は、どのように生まれたのでしょうか?

丸山

7年くらい前、『イップ・マン 序章』という中国武術のカンフー映画に感化されて、太極拳教室に通うようになったんです。で、その話を編集者で本作の原作担当でもあるZooさんに話したら「太極拳が強いわけないじゃないか」と言われ、太極拳の使い手がボコボコにされる総合格闘技の動画を見せられたんですね。


その動画を見て「あれ……?」と呆然としたのですが、そこから「逆に太極拳使いが世界最強で、見た目が陰キャで、さらにコンビニ店員だったらめちゃめちゃおもしろくないか?」という話になり、この漫画は生まれました。

『TSUYOSHI 誰も勝てない、アイツには』第一話より(提供画像)

丸山

ジャンルは格闘漫画なのですが、当時の僕は格闘技のセオリーを知らないし、格闘シーンを全然描けなくて。それで、キックボクシングやシュートボクシングのジムへ実際に通うようになりました。

―その経験は格闘シーンを描く際に役立ちましたか?

丸山

はい。パンチのフォームをはじめ、受けた攻撃をどっちの方向へ捌くか……そういう細かい部分にめちゃくちゃ活きています。さらに、ちゃんとトレーニングをすることで、結果として体力もすごくつきました。

―たしかに、漫画制作はハードだといいますもんね。丸山さんは毎日、どのようなスケジュールでお仕事をされているのでしょうか?

丸山

朝は午前8時半ぐらいに起きて仕事を始めます。そこから夕方の4~5時ぐらいになると集中力も切れ、「あ、もう無理」となるので、リフレッシュも兼ねてジムへ行きます。

―健康的な生活ですね! ジムには毎日行くんですか?

丸山

週5ぐらいです。漫画家って下手したらすごく孤独な仕事になってしまいますから、人に会う目的でジムに通っているというのもあります。


そこで2時間くらい体を動かし、帰宅。食事などをした後、だいたい夜11時くらいまで仕事をします。

―ジムから帰ってきてからも仕事をするんですね!

丸山

はい、もちろん。体を動かしてスッキリしているので、「もう一回できるぞ」という(笑)。そして、12時から1時くらいに寝ます。

漫画家・丸山恭右さん。ジム通いだけではなく、昨年はアメリカ横断のトライアスロンにも参加

―漫画家の方はどちらかというと夜型の生活のイメージがあったのですが、ちゃんと朝起きて夜に寝る毎日を送っていらっしゃるのですね。

丸山

アシスタントさんは全員リモートなんですが、あえてシフト時間を昼に設定しています。そうすると、ペースが自分本位にならず僕も起きざるを得ません。そういうところも意識して仕組み化しました。

―なるほど、令和の漫画家の働き方という感じがします。

丸山

無理をしていると結局は長く続いていかないし、作品のクオリティも下がっていきますしね。

人生の大部分を過ごす作業場を“いい場所”にするためのこだわり

―作業場の環境づくりで大切にしていることはありますか?

丸山

居心地の良さですね。人生のほとんどをこの場所で過ごすので、できるだけ“いい場所”にしようと心がけています。


そのために意識していることの一つが、香りです。やっぱり、いい匂いするのって大事じゃないですか? 僕は茶葉を燻して香りを楽しむ茶香炉を使っています。変に匂いも残らないので、気に入っています。

丸山

Netflixなどを見るときに使うスピーカーもこだわって選びました。実際にお店で試聴したらすごく音質が良かったので、40万円くらいするBowers & Wilkinsのスピーカーを買いました。

―ほかに、ワークスペースでこだわっているものはありますか?

丸山

デスクライトはオカムラのもので、すごく使い勝手がいいです。関節が2つあるからポジションをうまく調整でき、モニターの上から照らせるのも便利です。

オカムラのデスクライト「プレール」

―机の天板は、自然な風合いが印象的ですね。

丸山

これ、手づくりなんです。もともとは違う天板だったんですけど、別で買った天板をつけ直し、カスタムしました。僕は仕事で机の高さを変えることがあまりないので、昇降機能は電動ではなくあえての手動です。でも、ストレスは全然ないですね。

―モニターが2つありますが、どのように使い分けているのでしょうか?

丸山

片方は資料を映しています。たとえば、格闘シーンを描くときは参考になる資料を映したり。あらゆる状況に応じた資料を映します。


もう片方のモニターには、NetflixやYouTube、Prime Videoなどのコンテンツを流し続けています。

―動画を見ながら、漫画を描くんですね。

丸山

ネーム(シナリオをもとにコマ割りや絵の構図を決める作業)だけはどうしても頭を使わないとできないので、その作業のときは動画は見れないですね。


ただ、土台が決まれば、あとはひたすら絵を描き続けるだけ。ずーっと描き続けていると辛くなってくるので、脳のリソースを作業に向かわせすぎないように心がけてます。


「僕は今、作業をしているのではなく、あくまでNetflixを楽しんでいるんだ!」と思い込み、作業はむしろ“ついで”みたいな。膨大な作業のことを考えると嫌になるのでそこは見ないようにして、でも手元だけは動かし続けるという。だから、精神的には完全に「無」ですね。


それに、なにかが画面いっぱいに映っていたほうが、僕はなんだか仕事がはかどるんです。

普段は右側のモニターに資料を、左側のモニターにNetflixを映しているという

―本棚には漫画や画集がたくさん並んでいますね。

丸山

絵の資料として見ることが多いです。お気に入りの画集を見て、気合を入れることもありますよ。

漫画や画集、フィギュアが並ぶ

“椅子ガチ勢”がたどり着いたBaron

―丸山さんが座っているのはオカムラの「Baron(バロン)」ですね。

丸山

はい。実は、バロンにたどり着くまでには、紆余曲折がありました。

漫画家になって最初に買ったワークチェアは安価な1万円程度のもので、それは腰を全然支えてくれなかった。だから、椅子の上に低反発クッションを乗せてみたのですが、腰が余計痛くなりました。逆に高反発クッションを使うと、それはそれで付け焼き刃にしかならなかったです。


「これは限界だな……」と思っていたら、友人がある高級オフィスチェアメーカーの椅子を譲ってくれました。でも、それもいまいち自分には合わなかった。


それで、ワークチェア専門のセレクトショップ「WORKAHOLIC(ワーカホリック)」(東京都中央区)へ行きました。「バーっと座らせてもらっていいですか?」と、短時間の間にいろんな椅子に座らせてもらったんです。


そこで、「これだ!」という椅子に出会って購入したんですが、使い続けたら腰が爆発しました。お店でパパっと座ったときは良かったんですけど、長時間座り続けると腰が窮屈で動かせないのがキツかったんですね。高価だったので粘って使っていましたが、次第に「うー……っ」と苦しくなり、これはダメだと。

丸山

それで、WORKAHOLICを再訪しました。コンシェルジュさんの説明をちゃんと聞きながら、椅子をしっかり選び直したんです。そのときに座り心地が圧倒的に違う椅子があり、「なんだ、これは!?」と思ったのがオカムラのバロンでした。僕は腰の支え具合を重視するのですが、バロンはものすごくフィットしてくれました。


もともと、周りのクリエイターでオカムラの椅子を使っている人はすごく多かったんです。評判も良かった。それもあって「これがあのオカムラの椅子なのか」と、購入を即決しました。

―漫画家さん同士でそういう話はよくされるのですか?

丸山

椅子の話題は、かなりホットなテーマです。僕の周りは、オカムラ率が一番高いですよ。


特に、バロンには僕の欲しい機能が全部ついていました。リクライニングもそうだし、高さが変えられるし、椅子の座面を前に出せる。


あと、長時間座る僕にとって重要なのは座面がメッシュということ。蒸れないためにも、これはマストですね。そういう痒いところを全部拾ってくれています。

―大きなヘッドレストも付けていらっしゃいますね。

丸山

僕、リクライニングを結構使うので「これはほしいな」と思って付けました。作業で一区切りついたら、寄っかかる体勢になることが多くて。頭を支えてくれる部分があるのは大きいですね。

丸山さんが使っているのは、バロンのエクストラハイバック。頭までしっかり寄りかかってパワーチャージする

―バロンを使い始めてからどのくらい経ちましたか?

丸山

3~4年くらいです。今まで、買い換える気はまったく起きていません。


もし、売れ始めの漫画家さんが「身の丈に合った椅子を選ぼう」と思っているなら、ちょっと背伸びしてでも最初からオカムラの椅子を買っちゃったほうがいいですね。僕はちまちま中途半端な課金を繰り返し、無駄な時期を過ごしてきましたから。それならば、いきなり正解へ行っちゃったほうがいい。

―納得がいくまで椅子を変え続け、バロンにたどり着いた丸山さんに言われると、説得力があります。

丸山

はい。僕は“椅子ガチ勢”なので(笑)。

―ちなみに、バロンに座るようになってから、作業効率に変化はありましたか?

丸山

長く座っていられるので、そういう意味でシンプルに生産性が上がったと思います。腰の違和感が一番ストレスだったので、そこがなくなったのはとても大きいです。

目指すは「漫画家で最強」

―今後の活動としてやりたいこと、目標があれば教えてください。

丸山

すっごい個人的な目標なんですけど、漫画家のなかで最強になりたいです。

―どういうことでしょう!?

丸山

漫画界で体を鍛えている人って意外といるんですよ。しかも、群雄割拠の状況でライバルが多いんです。なかでも『嘘喰い』『バトゥーキ』(ともに集英社)の作者、迫稔雄先生がすごく鍛えていて、めちゃくちゃ強いんですよ。「ザ・おやじファイト」という中高年を対象としたボクシングの大会があるのですが、そこで迫先生は優勝してるんです。


今、僕もシュートボクシングをやっていますが、迫先生がいるから「漫画家だし、そこまで強くなくてもいいよね」と言い訳できないんです(苦笑)。だから、迫先生をはじめとした強い人たちを老いる前に倒したいですよね。下り坂の時期に倒すのではなく、全盛期に勝ちたいです。


『TSUYOSHI 誰も勝てない、アイツには』の主人公と同じように、漫画を描いている僕も、いつか“誰も勝てない”存在になれたら……嬉しいですね!

Baron
[バロン]
PROFILE

丸山恭右

漫画家

1993年、静岡県生まれ。2015年、読切『アシュリー=ゲートの行方』が少年ジャンプ+に掲載されデビュー(Rickey名義。原作は白井カイウ)。2018年より『TSUYOSHI 誰も勝てない、アイツには』をサイコミにて連載中。


YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@kyosukemaruyama4552

CREDIT

取材・執筆=寺西ジャジューカ 写真=塩川雄也 編集=モリヤワオン(ノオト)

ブランド名

商品名が入ります商品名が入ります

★★★★☆

¥0,000

PROFILE

山田 太郎

CO-FOUNDER & CTO

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。

山田 太郎

CO-FOUNDER & CTO

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。

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