親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。
「オフィスチェアは、どこでどんなふうにつくられているの?」――そんな疑問を胸に、私たちOKAMURA Lifestyle Store編集部はオカムラの追浜事業所に潜入しました。そこで私たちが目にしたのは、プラスチックや金属部位を、工場内で一からつくりだす様子でした。前編に続く中編では、椅子の座り心地を左右する、オフィスチェアの最重要部位の「秘密」に迫ります!
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甘い香りの正体は、座り心地抜群のクッション
どこからともなくから漂ってきたパン屋のような甘い匂い……その正体は、できたてホヤホヤのクッションでした! ここはウレタンを使って、椅子の背もたれや座面のクッション部分をつくる「軟質発泡成形」のフロアです。
椅子の種類ごとに用意された「型」に、ロボットが2種類のウレタン剤の混合溶液を流し入れ、オカムラ独自の硬さの異なるウレタンが一体になった「異硬度クッション」をつくっています。
・異硬度クッション
硬さの異なるウレタンを一体成型したオカムラ独自のクッション。お尻は身体を支えるため硬めに、太ももは圧迫しないように柔らかめにつくることで、長時間座っていても疲れにくい座面を実現しました。
異硬度クッションのイメージ
異硬度クッションは、硬い部分と柔らかい部分があることによって、着席時の座り心地や疲れ方が大きく変わってくるのだとか。外からは見えない部分にも、こんな工夫がなされているんですね!
生地を無駄にしない! ロボットによる精密な裁断
続いて足を踏み入れたのは、椅子づくりの要とも言える、「裁断・縫製・張り」のフロアです。これまで見てきたどのフロアよりも、たくさんの作業員が働いています。ここでは、背もたれ部分や座の部分で使用される生地の「裁断」から「縫製」、それをフレーム部分に張っていく「張り」と呼ばれる作業が行なわれています。まずは、生地の裁断から見ていくことにしましょう。
素材や色など多種多様な生地のストック、おおよそ700種類のなかから、その日つくる椅子に必要なものだけが取り出され、大きな裁断機に載せられます。その大きさは、エアホッケーの台ぐらいでしょうか。
布の裁断機。最大20枚の布を一度に切ることができる
ここでも機械が大活躍。あらかじめインプットされた図面のとおり、縦横無尽に生地を切り出していきます。生地が無駄にならないよう、切り出す位置を綿密に計算しているとのこと。
生地の端切れを集める作業員
メッシュ生地に秘密の糸。縫製は一枚一枚ていねいに
裁断された生地は、その後作業員の手に渡り縫製されていきます。あちこちから、ミシンの音が聞こえてきます。
座面の曲線に合わせた立体的な縫製や、プラスチックの芯材に縫いつける作業など、作業員たちの鮮やかな手さばきは、まさに見惚れてしまうほど。オカムラの「ものづくり」を支えている方々です。
この工程では、オカムラが独自に開発したロボットも活躍しています。簡単な縫製のみではありますが、疲れ知らずで動き続ける働き者です。
ここでメッシュ生地を1枚拝借。よく見ると、光る糸が見えませんか? この糸は弾性糸(だんせいし)といい、伸びる性質を持っています。これをポリエステルの糸に織り込んだオリジナルの生地を使うことで、座り心地と手触りの良さを実現しているんです。
椅子の張り地はサステナブル。熟練の技術がキラリ
続いて目撃したのは、縫製が終わった生地をフレーム部分に張っていく「張り」と呼ばれる工程です。この作業も一つずつ人の手によって行なわれます。
背もたれ部分が均一な「張り」になるようスピーディに調整しています。この作業は簡単そうに見えるかもしれませんが、慣れていない人にとっては、とても難しい作業なんだとか。
座面の張り地は、なかに仕込まれた絞り糸を引っ張るとクッション部分にフィットする「巾着方式」を採用しています。機械で圧力をかけながら覆っていますね。この方式は椅子を廃棄するときにクッションと張り地を簡単に分解することができ、リサイクルしやすいんです。
こうした製品や部品のリサイクル性は、SDGsの重要課題になっています。オカムラはサステナビリティへの取り組みの一つとして、資源の循環を目指すサーキュラーデザインの考え方を推進。ものづくりの現場でも積極的に生かされているようです。
オカムラで働く人の声
縫製・張り部門のエキスパートである製造技術課の荒井孝夫さん。長らく現場のリーダーを務めたあと、現在は新製品の開発などで、具体的な縫製技術や実現性を検討する役割を担っています。「オカムラのオフィスチェアは、パーツの成形から縫製、組立に至るまで、すべてメイド・イン・ジャパンで行なっていることが誇りです」。
こうしてオフィスチェアを構成する、すべてのパーツが完成しました。次回の後編では、いよいよ「組立」の工程に入ります!
撮影:タケシタトモヒロ 編集:OKAMURA Lifestyle Store編集部、CINRA, Inc.
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