親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。
会社や自宅などさまざまな場所で使われているオカムラのオフィスチェア。長時間座っていても疲れにくく、デザイン性に優れたこれらのチェアは一体、誰の手によって、どのようにつくられているのでしょうか?
その謎に迫るべく、OKAMURA Lifestyle Store編集部がオカムラの工場に潜入しました。オカムラ社員でも限られた部門の人しか見ることのない工場内部で目撃したものとは? オフィスチェアができるまでの全工程を、全3回にわたってレポートします!
広さ56,000平方メートルを超える、追浜事業所のなかへ
今回編集部が潜入したのは、神奈川県横須賀市にあるオカムラ追浜(おっぱま)事業所。設立は1958年で、国内外に16拠点あるオカムラの生産事業所のなかで最も古い事業所なんです。その敷地面積は、じつに56,000平方メートル! 東京ドームが丸々ひとつ入るほどの大きさです。
さらに、追浜事業所は生産事業所のなかで最大の椅子の生産数を誇り、つくっている椅子の数は一日あたり2,000脚以上。また、1脚の椅子は約200点の部品から組み上がっていますが、オカムラではその主要な部品を原材料からつくっているんだとか。それでは早速、追浜事業所に潜入してみましょう!
世界中で安心かつ安全に使えるよう日々試験!
最初に足を踏み入れた建物の扉の先に広がっていたのは、オフィスチェアの背もたれ部分を押し倒す動作を繰り返す機械や、砂袋をクッションに繰り返し落下させる機械……。まるでオフィスチェアのトレーニングルームのような光景が。
じつはこの部屋は、椅子の生産を行なうフロアではなく試験室。オカムラでは、新製品開発に向けた検証のための試験、製品保証のため定期的に行なう試験、多様な条件に対応する研究のための試験という3つを柱とした、さまざまな試験を24時間体制で行なっているんです。
背もたれ部分を押し倒す動作を繰り返し、耐久性を測っている
椅子の座面の耐久性を測るために、人の体重に見立てた砂袋を何度も繰り返し落下させている
なぜ、オカムラではこんなにたくさんの試験を行ない、オフィスチェアの安全性や強度を調べているのでしょうか? それは、お客さまに高品質な製品を提供するため。日本だけでなく海外にも進出しているオカムラは、世界各国の規格に対応できるよう独自の規格を設定し、その厳しい基準を満たした製品だけを出荷・販売しているんです。
オフィスチェアの規格
OIS:日本と世界の規格を包括したオカムラ独自の規格
JIS:日本における家具の強度・耐久性の規格
EN:ヨーロッパにける家具の強度・耐久性規格
BIFMA:アメリカにおける家具の強度・耐久性規格
椅子の座面の回転に対する耐久性を測る試験
延々と前後する床の上でキャスターを走らせ、耐久性を測っている
ここで行なっている試験は、オフィスチェアの限界値を探るという目的も。試験結果は設計を担当する部署にフィードバックされ、デザインの改善にも役立てています。お客さんが安全にオフィスチェアを使えるように、日々さまざまな試験を行なっているんですね。
大型の機械が自動でプラスチックパーツを成形
試験室を後にして、いよいよ椅子づくりの具体的な工程をチェックします! まずは、オフィスチェアの背もたれなど、さまざまなプラスチックパーツをつくる「射出成形(しゃしゅつせいけい)」のフロアです。
大型機械にペレットを入れ、熱で溶かして金型に注入。圧力をかけながら冷却し、さまざまなプラスチックパーツをつくっています。パーツは海外でつくったものを仕入れているのかと思っていたのですが、なんとこの段階から自社の工場でつくっているんです!
プラスチックパーツの材料となるペレット(粒状の合成樹脂)
このフロアはあまり人がいません。というのも、射出成形は自動化がすごく進んでいるんです。機械メーカーから導入した最新の大型機械が活躍しています。工場を進化させて、効率性・生産性を高めているんですね。
パイプの加工技術で見慣れた椅子のフォルムが。機械によるキレイな塗装も
続いてのフロアに潜入すると、大きな機械音と熱気が襲ってきました。ここでは「プレス加工・パイプ加工」と呼ばれるオフィスチェアの金属部分の加工を行なっています。
作業員たちが、オフィスチェアの部品ごとにつくられた特製の金型を使って、次々と金属部品を加工していきます。パイプ部品は「パイプベンダー」と呼ばれる設備を駆使して角度や寸法を微調整しながら曲げていき、見慣れた椅子のパーツに仕上げています。
溶接加工をしている作業員
こうしてつくられた金属部品は、ロボットによる「溶接」の工程を経たあと「塗装」に入ります。ここでも大型機械が活躍。その内部で、静電気を利用して粉体塗料をムラなく付着したのち、高温で加熱して焼き付け塗装を施すのだとか。大型機械の出口から、キレイに色を塗られた部品が次々と出てきました。
追浜事業所ではオフィスチェア以外の椅子もつくっている。こちらは、ミーティングチェアのフレーム
作業員は各々担当している業務に黙々と励み、流れるように手を動かす様子が印象的でした。国内屈指の椅子の生産工場だけあって、どの工程からも仕事に対する責任感の高さがうかがえました。
続いて潜入したフロアからは、なぜかほんのり甘い香りがしてきました。この香りは一体……? 中編もお楽しみに!
撮影:タケシタトモヒロ 編集:OKAMURA Lifestyle Store編集部、CINRA.Inc,
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