「小学生で卒業する楽器」じゃもったいない! 南川朱生さんが広めたい、鍵盤ハーモニカがもつ唯一無二な表現力
クオッカ店長とみんなの偏愛LIFE

「小学生で卒業する楽器」じゃもったいない! 南川朱生さんが広めたい、鍵盤ハーモニカがもつ唯一無二な表現力

#カルチャー #ライフスタイル

はじめまして! OKAMURA Lifestyle Storeのクオッカ店長です。


普段から椅子のことばかり考えていたら、すっかり椅子マニアになってしまったぼく。でも、世界には椅子だけでなく、いろいろな形で好きなものに愛を注ぐマニアがいるみたい……! そこでこの連載では、椅子マニアのぼくがワークスペースを飛び出して、あらゆるマニアに「好きなものを愛でる楽しさ」を聞いていきます!


今回訪ねたのは、鍵盤ハーモニカを愛する南川朱生(みなみかわ・あけお)さんです。


そもそも鍵盤ハーモニカってどんな楽器? たくさんある楽器の中でなぜ鍵盤ハーモニカなの? とギモンはつきません。南川さんの自宅におうかがいし、鍵盤ハーモニカの魅力をたっぷり語っていただきました。

PROFILE

南川朱生

鍵盤ハーモニカ奏者・研究家

昭和62年生まれ、大阪出身、東京在住、元銀座OL。鍵盤ハーモニカに魂を売り、鍵盤ハーモニカの全てを承る、鍵盤ハーモニカを生きる人。いかなる話題も全て鍵盤ハーモニカに関連づけられる特技を活かし、パフォーマンスや、学校・学術機関での講義やWS、メディア出演や執筆を行う。

Youtube:https://www.youtube.com/@pianonymous404/videos

公式HP:https://akeominamikawa.com/


クオッカ店長


クオッカ村出身の、クオッカワラビーの男の子。生粋の椅子マニアでOKAMURA Lifestyle Storeの店長を務めている。ほかのマニアがどんなことに夢中になっているのか、興味津々!

検索するとサジェストに「捨て方」が出てくる不遇な楽器

読者の皆さんこんにちは! 椅子マニアのクオッカ店長です。
今日は鍵盤ハーモニカ奏者・研究家の南川朱生さんのお宅へやってきました! おじゃましまーす。
クオッカ店長
南川
クオッカ店長、ようこそ! ここが私の偏愛部屋です。

南川さんのお部屋

わあ〜、鍵盤ハーモニカがこんなにたくさん! 秘密基地みたいでとってもかっこいいです!
クオッカ店長
南川
ありがとうございます。この自室は、鍵盤ハーモニカについての執筆活動やグッズ制作をしたり、鍵盤ハーモニカのメンテナンスをしたりする、活動の拠点になっています。寝るのもこの部屋なので、鍵盤ハーモニカたちといっしょに暮らしているようなものですね。
ここまで鍵盤ハーモニカが並ぶと圧巻ですね! そもそも南川さんと鍵盤ハーモニカの出会いはいつだったんですか? 小学校の授業?
クオッカ店長
南川
小学生の頃は海外にいたのですが、現地の学校では鍵盤ハーモニカの授業はありませんでした。高校2年生のときに、同級生と学園祭でバンドを組んだのが、鍵盤ハーモニカと向き合った最初の機会ですね。私はキーボード担当で、当時「エマーソン・レイク・アンド・パーマー」というバンドのキーボーディスト、キース・エマーソンにすごく憧れがあったんです。
鍵盤楽器を2台弾く人ですよね。
クオッカ店長
南川
そうそう! よく知ってますね。でも、高校生にはキーボードを2台買うお金がなくて。仕方なく片方を鍵盤ハーモニカにしてみたら、思いのほかしっくり来て、そこからのめり込みました。

外で演奏するときも持ち運びが楽だし、立ったまま吹くことができるという取り回しの良さも最高だなと。学校の図書室のパソコンで鍵盤ハーモニカについて調べて情報を集めるうちに、気づけば鍵盤ハーモニカのプロになる決意を固めていました。20歳のことです。

自らホースの分岐パーツを開発し、いまでは鍵盤ハーモニカの複数台吹きを行うことも。熱量がすごい……!

興味がありあまってプロの道へ! すごい!

でも実はぼく、そもそも鍵盤ハーモニカってどういう原理で音が鳴っている楽器なのかよくわかっていないです。
クオッカ店長
南川
いい質問ですね。鍵盤ハーモニカは、鍵盤の押下と呼気で発音させる楽器です。付属の吹き口やホースで息を吹き込むと、中のリードが振動して音が鳴ります。鍵盤楽器であり、フリーリード楽器であり、吹奏楽器でもある。そうした3つの特徴を兼ね備えたものが鍵盤ハーモニカなのです。

鍵盤ハーモニカの内部。T字の金属部分がフリーリード

鍵盤ハーモニカの中身ってこんな感じだったのか〜。
クオッカ店長
南川
こうしたシンプルな構造で、なおかつ鍵盤を有し、呼気で発音させるフリーリード楽器というのは、楽器分類学的にも唯一無二のポジションと言って良いかと思います。鍵盤ハーモニカの音色はアコーディオンほどゴージャスすぎず、ハーモニカほど抑揚がつきすぎず、電子楽器のようなピコピコ音でもない、他の類似楽器とキャラ被りしない魅力を備えています。

奏法のメソッドも確立していないので、吹き口をアレンジしたり、ボイスパーカッションをしながら吹いたりと、どのような自由な吹き方をしても正解になるのも魅力です。

シャウティングチキン(お腹を押すと叫び声のような音が鳴る鶏のおもちゃ)の頭をマウスピースにして演奏することもあるそう。チキンのシャウトと鍵盤ハーモニカの音色が混ざる!

南川
でも、楽器として高いポテンシャルを保有しているにも関わらず、小学校では不人気だし、卒業後に使用されることは稀なんですよね……。
もっと人気が出ても良さそうなのに!
クオッカ店長
南川
Webで鍵盤ハーモニカについて検索すると「鍵盤ハーモニカ 捨て方」とサジェストされちゃいます。小学校で使わなくなったら、捨てちゃう人も多いんですね。
そ、そんな……。
クオッカ店長
南川
鍵盤ハーモニカってすごく不遇な楽器でもあります。そんな不遇さも含め、もっと多くの人に魅力を知ってもらいたいと思って演奏活動や執筆活動を続けています。

「不遇」なところが鍵盤ハーモニカの魅力

悲しいお話を聞いたあとなんですが、あらためて南川さんが思う鍵盤ハーモニカの好きなところを教えてください。
クオッカ店長
南川
なんというか、そうした不遇で恵まれないところが好きなんですよね。鍵盤ハーモニカは1820年代にヨーロッパで生まれ、いろんな変化を遂げてきた歴史ある楽器です。現在でも教育番組の劇伴BGMで頻繁に使用されるなど、その音を日常的に耳にすることは多い反面、脚光を浴びることはありません。いい仕事はするけど、ずっとメジャーになれていないんですね。
鍵盤ハーモニカだけを専門とするプロ奏者は少ないんですか?
クオッカ店長
南川
そうですね。たとえば、著名なアーティストであるジョン・レノンが鍵盤ハーモニカを吹いている様子がDVDに残っているんですが、吹いている姿だけで、正規の録音作品としては残されていません。ジャズの巨匠のナット・キング・コールがコンサートで使用していたり、 「オアシス」や「レッチリ」をはじめとする錚々たるロック巨匠の面々が、アルバム内の楽曲で度々鍵盤ハーモニカを使用していたりしますが、取り立てて鍵盤ハーモニカだけがその働きを注目されるようなことはありませんでした。

アニメ『四月は君の嘘』や、漫画『おやすみプンプン』などさまざまな作品の中で、物語のキーとなる象徴的なアイテムとして登場しているんですけどね。鍵盤ハーモニカ自体がストーリーの主役になることは稀です。
応援してあげたい……。
クオッカ店長
南川
アイドルでも、歌もダンスもうまくて絶対センターという子よりも、ちょっとどんくさい愛らしい子のほうが目を離せなくなることってあると思うんです。そうした「自分が応援しなきゃ!」と思わせる愛らしさが鍵盤ハーモニカの魅力ですね。今後大スターになると信じています。

鍵盤ハーモニカ研究の使命感を奮い立たせた60年前のピアニカ

ちなみに、いま南川さんが持っている鍵盤ハーモニカの中で、とりわけ思い入れがあるものはなんでしょうか。
クオッカ店長
南川
いっぱいあるんですが、2015年に入手した、東海楽器というメーカーが制作した「TOKAI pianica PC-1」という機種でしょうか。鍵盤ハーモニカを「ピアニカ」という商標名で耳にしたことのある人は多いと思うんですが、これは1960年代に流通していた東海楽器製のピアニカです。

「TOKAI pianica PC-1」(東海楽器製)

南川
私は開発者の方をリスペクトしているので、誰が最初に作ったのかを知りたかったんですが、なかなか情報が見当たらず。「私が開発しました」と自称している人はいたんですが、それを客観的に証明する物的証拠がありませんでした。
今から60年以上前のものだと、情報を見つけるのも一苦労ですよね……。
クオッカ店長
南川
でも、鍵盤ハーモニカの恩恵で生きている私にとってはわからないままにしておくのは申し訳が立たないし、一番手をかけて頑張って工夫した開発者が忘れ去られてしまうのは非常に悲しいことです。

だから静岡にある東海楽器に行って、開発資料を見せていただけないか、当時の社長に直談判しました。

訪問時の様子

すごい行動力だ! でも、ぼくも気になる椅子があったら遠くても現地まで行っちゃうかも。
クオッカ店長
南川
先方もびっくりされていたんですが、なんとか当時の開発資料から開発者のお名前を見つけることができたんです。それをきっかけに鍵盤ハーモニカ研究の使命感が湧いてきて、活動にも影響を与えてくれました。一番思い入れがあって人生も変わったのがこの「PC-1」なので、私にとって非常に特別な一台です。
「PC-1」が南川さんに使命感を与えてくれたんですね……!

その他にユニークな鍵盤ハーモニカがあったら教えてください!
クオッカ店長
南川
とくに1800年代に作られた鍵盤ハーモニカがすごくおもしろくて、これは物理学者の人が作ったものなんですが、箱状でかなりメカニカルですよね。

箱型の鍵盤ハーモニカ・「シンフォニウム」。丸い穴から息を吹き込む

どうやって演奏するのかわからない!
クオッカ店長
南川
こういった1800年代のロマンある鍵盤ハーモニカについては『19世紀の鍵盤ハーモニカがこんなに可愛いわけがない』という本にまとめました。ずっと未熟な楽器だからこそ、演奏も形状も自由なんです。時代や国に合わせて、いろんな人の思惑を受け止めつつ、自分の役割を担い続けているのが鍵盤ハーモニカのすごいところなんです。
ちなみにこれまで鍵盤ハーモニカにかけた金額を聞いても大丈夫ですか……?
クオッカ店長
南川
正直、楽器自体にはそんなにお金はかかっていないんです。ほとんど人からもらったもので、自分で買ったのは全体の5分の1くらいですね。

楽器や音楽教育関係の学術書は1冊1万円近くするものもあるので、どちらかというと研究費にお金がかかっています。金額の内訳は鍵盤ハーモニカが1%で残り99%は研究費という割合です。

所有品のほとんどが中古品だそう。「鍵盤や本体に書かれたメモから前の持ち主のドラマを感じるのも鍵盤ハーモニカの魅力」と南川さん

小規模でも大胆に鍵盤ハーモニカの魅力を伝えていく

読者向けに、鍵盤ハーモニカのおすすめの愛で方を教えてください!
クオッカ店長
南川
もしまだ鍵盤ハーモニカが家にあったら、まず一度吹いてみてもらいたいですね。吹き方よりも「捨て方」が先に出てきちゃう今の状況はとっても悲しいので……。鍵盤ハーモニカほど参入ハードルが低い楽器もなかなかないと思います。

吹き口は中性洗剤で洗い、ホースなどの汚れがひどいときは塩素系の台所用漂白剤を薄めたもので洗って風通しのいいところで乾かすと基本的にはきれいになります。本体は金属のリードが入っているので水洗いはNGです。

何か鍵盤ハーモニカで困ったことがあったら、SNSでつぶやいてくれれば、もしかしたら私が助けに行くかもしれません(笑)。
それは頼もしい! ぼくも椅子で困ってる人の力になりたいな。
クオッカ店長
南川
そして鍵盤ハーモニカに興味が湧いたら、それぞれの個性を引き出す方向でいろんな吹き方を試してみてもいいかもしれません。

私は「温かみがあって優しい音色」として売られていた木製の鍵盤ハーモニカを、魔改造して爆音が出るメタルな鍵盤ハーモニカにしちゃったこともあります。中の構造を見て、鍵盤ハーモニカ自身も企画・開発者も気づいていない持ち味を引き出してあげるのがすごく楽しいです。それは私独自の愛で方のような気がしますが(笑)。

「見た目はナチュラル系だけど、性格(音)はメタラーかも!」とウッキウキで改造したとか

最後に、南川さんの今後の野望を教えてください!
クオッカ店長
南川
すごく役に立つことと、まったく役に立たない馬鹿馬鹿しいことを、みんなが混乱するぐらいのペースで出していきたいですね。みんなが求めてるものだけをやり続けるのがあんまり性に合わなくて。

少子化の影響で鍵盤ハーモニカの国内販売台数も少しずつ減っていますし、まだまだ演奏シーンを深堀りできる余地のある楽器です。だからこそ、世界中の鍵盤ハーモニカを愛する誰かと情熱を分かち合いたい気持ちが強いです。まるで誰かとハイタッチするように、小規模ですが大胆に鍵盤ハーモニカの魅力を世界に伝えていければと思います。
クオッカ店長はここが気になる!

南川さんのワークスペースに踏み入れた瞬間、たくさんの鍵盤ハーモニカにびっくり! デスクでは研究や執筆作業、楽曲のアレンジ、オリジナル吹き口の試作などをしているそうです。まさに、偏愛の拠点……! いつかぼくもたくさんの椅子に囲まれて暮らしてみたいなぁ。

CREDIT

取材・執筆:神田匠 写真:栃久保誠 イラスト:キタハラケンタ 編集:モリヤワオン(ノオト)

ブランド名

商品名が入ります商品名が入ります

★★★★☆

¥0,000

PROFILE

山田 太郎

CO-FOUNDER & CTO

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。

山田 太郎

CO-FOUNDER & CTO

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。

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