親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。
働き方が多様化し、ワークチェアの活用場所が職場から自宅へと広がるようになりました。しかし「自分に合う椅子の選び方」に迷う人も多いのではないでしょうか?
オカムラでは、2025年より独自の社内認定資格「チェアマスター」が新設されました。現在、資格取得した約60名の社員がチェアマスター一期生として、サロンやショールーム、展示会などで、椅子に関する専門知識をお伝えしています。
今回は、チェアマスターの資格を持つ株式会社オカムラの柏原勇志さん、沼田健助さんに、資格取得に至った経緯や活動内容についてお伺いします。
オカムラの独自資格「チェアマスター」とは?
―まずは、チェアマスターとは何か? どんな資格なのか教えてください。
チェアマスターとは、オカムラが独自に設けている社内認定資格です。簡単にいえば、椅子にかかわる知識を幅広く、深く知っていると認定された人。実習とeラーニング、試験を経て資格を取得しました。
この資格は2025年に設立され、現在は第一期の合格者60名ほどが「チェアマスター」として活動しています。

オカムラチェアマスター/認定人間工学プラクティショナー 柏原勇志さん
私はECサイトの運営など、一般のお客様に対してチェアをおすすめする仕事をしているのですが、チェアマスターの資格を取ろうと思ったのには2つの理由があります。
ひとつは、自分自身が販売している製品についてもっと詳しくなりたいと思っていたこと。オカムラの椅子を販売してくださる代理店さんともお話しする機会も多いので、より深い知識をお伝えしたい想いがありました。
もうひとつが、本日お越しいただいているサロン「Chair isn't」のオープンが決まっていたタイミングだったこと。ここはオカムラ社員がエンドユーザーさんと実際にお話しできる場所です。「チェアマスター」の資格を保有している社員だと、かっこいいじゃないですか?(笑) ちょっと戦略的に取得した、なんていう背景があります。

オカムラチェアマスター/認定人間工学プラクティショナー 沼田健助さん
わかる、わかる。お客様にとっても、実際に「チェアマスターにおすすめしてもらった」っていうのは、うれしいですからね。
僕は入社から営業一筋で、主に法人オフィスの課題を捉え、最適なオフィス空間を提案業務する業務に携わってきました。営業職を続けていくと、どうしても仕事を効率良くこなすことや売上の数字ばかりを意識してしまうんですよね。でも、まずは自分がオカムラのものづくりや製品の特長をわかった上で提案しなければ、お客様に価値を感じていただけないのでは?と思うようになり、製品について学び直したいと考えていたんです。新たな資格の一期生になれるのも魅力的だったので、募集が始まった時点で取得に気持ちが向いていきましたね。
―資格取得に向けてはどのように勉強されたのでしょうか?
日本人間工学会の公的資格「認定人間工学プラクティショナー」の取得が前提となっていたので、その授業やeラーニングを受けるほか、オカムラの工場で研修が実施されました。すべて業務時間内で勉強できたんですよ。

オカムラ事業所の中で最も多くのチェアを生産する追浜事業所で行われた工場見学
―業務内とはすごい! 社員の方は、普段から自社工場によく行かれるのでしょうか?
携わっている業務によりますね。僕の場合は入社時の研修や、今の配属になってから4〜5回ほど行っていますが、自分が販売している製品がどのように作られているのか、自分の目で確かめられたのはとても貴重な経験になりましたね。
知識だけで説明するのと、自分の目で見た製品の情報を伝えるのでは伝わり方が違いますよね。僕も、自分の言葉でオカムラ製品の魅力を語れるようになったと感じています。
業種を超えた社内のつながりが生まれた
―資格を取得したことで、普段の業務にどのような変化が生まれましたか?
チェアマスター活動の一環で、全国の販売店さんに向けた椅子や座り方の「勉強会」を実施しています。オカムラ独自の「椅子とは何か?」「座るとは何か?」といった考えを伝える活動なのですが、実際に販売店さんとお話をする機会が増えたのはとても良かった点です。
またサロン「Chair isn't」では、予約していただいたお客様にチェアマスターが個別に接客をさせていただいているのですが、そこでお一人ずつじっくりご提案できるのも魅力です。チェアマスターの知識を活かして「あなたに合う椅子」をお客様と一緒に考えて、最終的に満足いただける姿をみると、この仕事をしていて良かったな、と感じますね。

僕の場合は、お客様1人ずつの提案ではなく、オフィスにいる“みんな”が心地よく座れる汎用性の高い椅子を提案することが多いんです。今までも概要的な部分はお客様にご説明していましたが、チェアマスターの肩書きを持つようになったことで、自社だけでなく他社製品にも興味がわくようになりましたね。
「オカムラの椅子は〇〇だけど、A社は△△で、B社は□□だな〜」と自分なりの比較や違いを見つけられるようになったことで、提案の幅が広がったと感じます。
またオルガテックというチェアマスター1期生が集まることもあったのですが、それも良かったですね。
―皆さんが集結するのですか?
はい。展示会中もなんだか文化祭のような雰囲気で(笑)。チェアマスターとして同じユニフォームを着て、展示会にいらっしゃる方々へ提案したり説明したりしている姿をみると、「チェアマスターになって良かったな」と思いました。

オルガテックで接客をしているチェアマスターたち
時代ごとに変化する椅子の価値
―コロナ禍以降、職場だけでなく自宅やコワーキングスペースなど様々な椅子に座って働く人が増えてきたと思います。チェアマスターとして時代の変化を感じることはありますか?
サロンに来られるお客様の動機として多いのは「会社で使っていた椅子と同じようなワークチェアがほしい」という方です。会社にある椅子のメーカーを調べたら「OKAMURA」と書いてあったから、と。
一時的にダイニングチェアなどでお仕事していた人も多いようですが、座る時間が長くなるほどに身体がツラくなってくる。テレワークが増えて「会社の椅子って座りやすかったんだな」という実感を持った方が多くなってきたように感じています。
―ワークチェアへの捉え方が変化してきているんですね。
昔は、椅子はオフィスで働いている人のステータスでもあったんです。例えばステータスシンボルとして椅子のひじ掛けがあります。
―椅子がステータスですか?
そうです。新入社員は、肘掛けがないけれど、主任や係長になると肘掛けがつくようになる。課長、部長に昇進するとヘッドレストがついて背が高い椅子に。そして社長室には革張りの椅子……。
―なるほど! 役職に合わせて、椅子のランクも上がっていく会社が多かったんですね。
昔は、社長がメッシュチェアを使うなんてありえない! と考えていた会社さんも多かったんですよね。それが時代と共に変化し、とくにコロナ禍以降は「従業員の身体にいい椅子」を提案してほしいと。そして、椅子の価格やランクではなく、そこで働く人たちの“座り心地”にフォーカスされるようになりました。
役職に合わせた椅子ではなく、ワーカーの身体に合う椅子を選ばれる会社さんが増えてきたのではないでしょうか。

―ピカピカの革張りのような「社長の椅子」への憧れもありますが(笑)、自分の身体に合う椅子を選ぶことが大事な時代になってきたんですね。ちなみに、チェアマスターであるおふたりは、どの椅子が好きですか?
僕は「コーラル」が好きです。身長が181cmあるので、ヘッドレストの位置や肘掛けの厚みが一番心地よくて、2年ほど前に自宅用に購入しました。
沼田さんが自宅で使用しているコーラル
僕が自宅で使っているのは「シナーラ」です。スタイリッシュでシンプルだけれど、オカムラっぽさを感じる椅子。とにかく軽いので、自宅で使っていても床が傷みにくいことと、「シナーラ」の顔(座面の後側)がお気に入りです。
柏原さんが自宅で使用しているシナーラ
ただ、仕事で使うなら「コンテッサ セコンダ」もおすすめです。デザインや佇まい、すべてがかっこいいでしょ? チェアマスターとして一番を選ぶとなったら「コンテッサ セコンダ」になりますかね。
わかります! ちなみにサロンに来るお客様の中には「シルフィー」がいいらしいという情報を聞いて座りにいらっしゃる方が多いです。色々と座り比べていただいた結果、「やっぱりシルフィー」という方も、別の椅子を選ばれる方もいらっしゃいます。
椅子って、「これが正解」っていうのはないんですよね。チェアマスターの2人でも好みが違いますし、実際に座ってみて自分に合う椅子が“いい椅子”だと思います。
車選びとも通じるところがあるかもしれません。コンパクトカーの利便性がほしいのか、都会でも4WDのようなゴツゴツとした車で走りたいのか。人によって好みは違うので、用途に合わせて選べるようになるといいですよね。
「椅子が好き」を胸に仕事をしたい
―最後になりますが、これからおふたりはどんなチェアマスターになっていきたいと考えていますか?
自分の好きなものが仕事になればいいな、と思っているので、椅子はずっと好きでいたいな、と。「柏原さんって椅子が好きだからチェアマスターなんだよね」と言われるような存在になりたいです。ほら、喫茶店のマスターでコーヒー嫌いな人はいないでしょう。
好きなことを続けていった結果、周りから「チェアマスター」と呼ばれている、そんな感覚が理想ですね。


チェアマスターに配られるバッジ(1枚目)と、「認定人間工学プラクティショナー」の認定証(2枚目)
―素敵! チェアマスターになるための資格というよりも、好きだからチェアマスターになっていたという感じですね。
僕も同じ感覚かもしれません。製品の細部については、事業所で椅子をつくっている社員の方のほうが詳しいことには間違いないので、それを売る立場として「椅子が好き」という気持ちは忘れずにいたいと思っています。
営業としてあまり大きな声では言えないのですが、オカムラの椅子だけでなく他社も含めて紹介できる方が、本当の意味でお客様のためになるのでは? と思うこともあるんです。その上で、「じゃあオカムラにします」と選んでいただけたらと思っています。
―フィスチェアのプロフェッショナルへと進化していけたらすごくいいですね。
沼田
先ほど柏原さんがオフィスチェアの歴史を振り返ってくれましたが、自宅で使うのも「オフィスチェア」ってちょっと違うような気がしていて。ライフファニチャーやタスクシーティングなど、言い方を変えるだけでも椅子の価値が広がるようにも感じています。
家でも、会社でも、どんな場所でも自分に合った心地よい椅子を提案できる、そんなチェアマスターになれたらと思っています。

▼サロン「Chair isn't」
https://lifestylestore.okamura.co.jp/pages/chair-isnt
https://lifestylestore.okamura.co.jp/blogs/stock/chair-isn-t
▼サロンのご予約(チェアマスターによるパーソナルフィッティングサービス)はこちらから

柏原 勇志(右)
ワーク&ライフクリエイション事業本部
日比谷支店 営業一課第二係
オカムラチェアマスター/認定人間工学プラクティショナー
沼田 健助(左)
ワーク&ライフクリエイション事業本部
ライフスタイル営業部 営業課
オカムラチェアマスター/認定人間工学プラクティショナー
取材・執筆:つるたちかこ 撮影:小野奈那子 編集:桒田萌(ノオト)
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