作曲は思考の集積結果。AIではなく人間だけに与えられた知恵と好奇心から音楽を書く、坂東祐大さんのワークスペース
ワークスペースの美学

作曲は思考の集積結果。AIではなく人間だけに与えられた知恵と好奇心から音楽を書く、坂東祐大さんのワークスペース

#アイデア・工夫 #カルチャー #キャリア #ライフスタイル #仕事・働き方
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Contessa Ⅱ(コンテッサセコンダ)

仕事や趣味などに気兼ねなく取り組むことができるその人だけの空間、ワークスペース。その人の考え方や行動様式が、色濃く反映される場所でもあります。「ワークスペースの美学」は、自分自身の心地よいライフスタイルを実践している方にご登場いただき、そこに至った経緯や魅力、結果として得られたものなどについて伺うインタビュー連載です。


31回目のゲストは、作曲家の坂東祐大さん。映画『ルックバック』やドラマ『銀河の一票』、『報道ステーション』など、次々と話題の映像作品や番組の音楽を手掛けています。


今回は、作曲やリサーチ、また音楽家仲間やパートナーとの共同作業をおこなうワークスペースを取材。すると、坂東さんが作曲のために膨大に時間を費やしているという「インプット」の跡が見えてきました。

基礎研究としての作曲と、多くの人に届けるための作曲

―坂東さんは近年、ドラマや映画でよく名前をお見かけします。現在は映像の音楽を多く手がけてらっしゃるのでしょうか。

坂東

最近は映画やドラマの仕事がたまたま重なってしまって。信頼しているプロデューサーさんや映画監督からのお声かけで、「これはやらなきゃいけない」と思ったら即答でお受けするようにしているのですが、本当に連続して続いてしまいました。

作曲家・坂東祐大さん

―もともとは東京藝術大学大学院で作曲を学ばれていたとのこと。学生時代はクラシック音楽に連なる現代音楽を学んでいたのではないかと思います。

坂東

そうですね。いわゆるコンサートで上演するための音楽であり、映像の仕事とは違って、こちらが僕にとっての「基礎研究」であり、「本業」とも言えます。


たとえばファッションショーって、ブランドが量産するための服を発表する場ではないですよね。モーターショーで展示されているコンセプトカーも同じく。これはブランドにとっての理念そのものなんですよね。それがなければ量産するための服や車もつくれない。


自分のコンサートで発表している作品もそうで、たくさんの方にウケたり量産できたりするものではないけれども、自分の創作や研究の軸になっている。それを現代音楽というトピックのなかでやっているという認識です。その基礎研究があるから、映画やドラマといった音楽をつくることもできるというか。

―なるほど。基礎研究と映像の音楽のお仕事には、そういった坂東さんならではの棲み分けがあるんですね。

坂東

この言い方が正しいのかはわからないのですが、こうした映画やドラマの音楽は、自分にとっては「アルバイト」の感覚かもしれません。量産というわけではありませんが、より多くの方が手に取りやすいかたちで音楽をつくる。それが僕にとって映像作品のお仕事の位置付けです。

作曲や思考のための部屋であり、パートナーや仲間との共同作業の場

―このお部屋での過ごし方についてもお伺いできればと思います。

坂東

ここは僕のパートナーで詩人の文月悠光との作業場になっています。僕はここで楽譜を書いたり、ピアノを弾いたり、考えごとをしたり。


一緒に仕事をしている音楽家との共同作業や打ち合わせの場でもあります。ギターも置いていて、僕はまったく弾けないのですが、ここに楽器さえあれば誰かが上手に弾いてくれるんです。

坂東

もう一つの作業部屋があって、そちらはMacとモニターがメインで。メインの部屋のほうには大きなテーブルがあるので、A3サイズの楽譜を広げてじっくり読み込んだり、読書をしたり、資料を読んだりすることを重視しています。

—気になる機材もたくさん積まれていますが……。

坂東

シンセサイザーコレクションですね。どれも手元に置いておきたい、と思ったものです。先輩から譲り受けたヴィンテージのものもあり、持っていたら自慢できるものばかりだと思います(笑)。

坂東

上から3段目にあるコルグのシンセサイザーは、限定100台しかない記念モデル。どうしても欲しくて、コルグの人に「どうしても欲しいです」と頼み込んで購入させていただきました。

KORGのPS-3300(1977年)の復刻版「PS-3300 FS」を演奏する坂東さん

―ちなみに、曲のつくりかたは鍵盤を使ったり、PCで打ち込んだりなど、作曲家によって異なるかと思います。坂東さんはいかがですか?

坂東

僕の場合も3つくらい方法があります。完全に楽譜を書きながら思考する方法と、ピアノを弾きながら考える方法、それからMacを使ってDAW上で考える方法ですね。最近だと『ルックバック』では、クラシックギターを使用した音楽が多いため、丁寧に楽譜へ手書きしながら音楽を作っていきました。 

―そうなると、座っている時間もかなり長くなりますね。

坂東

そうですね。基本的に、作業したりピアノを弾いたりするときは、いつもコンテッサ セコンダに座っています。

坂東

コンテッサ セコンダを買ったきっかけは、作曲家の先輩から「椅子だけはいいものを買っておくといい」とアドバイスされたことでした。ハリウッド超大作ばかり手掛けている作曲家のハンス・ジマーも、とにかくすごいプライベート・スタジオを持っているのですが、とにかく家具にはこだわれ、と言っていて。確かに作曲家は圧倒的に部屋にいる時間が長いので、そこにお金をかけたほうがいいというのは理解できるんですよね。


重視したのは、椅子とデスクモニターが自分にとって適切な高さ・大きさであること。そのため、もう一つの部屋では特注で作った昇降デスクを使用しています。もちろん音楽家なのでスピーカーも大切なのですが、極端な話、ミックスの良さを仕上げるのはミキシング・エンジニアの仕事なので、自分はスピーカーではなくデスク周りにお金をかけるほうが大事なんじゃないかと思ったんです。

―チェアをコンテッサ セコンダに決めた理由は何だったのでしょうか?

坂東

座り心地の良さですね。オカムラさんのショールームに行って、とにかく時間をかけてさまざまなチェアを座り比べました。


あと、見た目のかっこよさも気に入っています。ここにきた人にはよく「座らせてほしい」と言われるんですよね。で、誰が座っても「この椅子いいね」って。だから僕も作曲家の後輩が来たら、かつて先輩から言われたみたいに「椅子にはお金をかけたほうがいいよ」と伝えています(笑)。

―電子ピアノの赤色とピッタリです。

坂東

そうなんです。これは電子ピアノの色に合わせてカラーを選びました。最初はブルーのものを購入したのですが、こちらは2脚目。いまは来客用と合わせて、計3脚のコンテッサ セコンダが自宅にあります。


ちなみに文月個人の部屋にもコンテッサ セコンダがあります。僕が真剣に考えた昇降デスクとコンテッサ セコンダの組み合わせをそっくりそのまま真似していますね。コンテッサ セコンダの座り心地が気に入ったみたいです。

―現在はパートナーであり詩人の文月悠光さんと一緒に暮らしているとのこと。音楽家と詩人の生活、とても気になります……。

坂東

ここでは文月と一緒に仕事をすることもあるのですが、やっぱり僕は音を出す作業があるので、文月は考え込みたいときに自分の部屋に行っているみたいですね。今は別の階にもう一室を借りているからいいものの、以前はヘッドホンをして大変そうでした。

―とはいえ、どちらも芸術に携わるお立場として、与え合うものも多そうです。

坂東

それはあるかもしれません。僕自身、文芸の界隈に関するトピックはあまり詳しくなかったのですが、文月と結婚して知ったことがたくさんあります。


文月自身も僕を通じて音楽家と知り合う機会が増えたことで、耳が肥えてしまったらしくて。「この人の演奏はいいね」などといろんな感想を共有することが増えました。

文月さんが関わったお仕事に関する書籍も部屋に飾られている

作曲という行為の手前と奥に欠かせないインプット

―部屋の奥にはさまざまな資料が置かれています。

坂東

作曲にはとにかく資料が必要で。自分で言ってしまうのもなんですが、ずっと勉強しているんですよね(笑)。ここだけではなく書斎にもたくさん資料を詰め込んでいるのですが、ここにはすぐに手に取りたいものを中心に置いています。

―和声や楽器に関する専門書などが多いですね。

坂東

たとえば、現代音楽においてファゴットの作品を書くとしますよね。となると、やはり楽器に関する知識や奏法を詳しく知っておく必要がある。取扱説明書として片手に持ちながら、作曲していきます。

―よく見ると音楽には関係のない本も……?

坂東

最近は古代ローマにハマっていて、上段にはそれに関する本が多く並んでいます。


新婚旅行でローマに行ったのですが、すごく良いガイドの方に案内していただいたことがきっかけでまったく歴史の捉え方が変わったというか。自分が学んできたクラシック音楽もまたヨーロッパを起源にした文化なので、歴史を深く学ぶことで文化への認識が変わった部分もあります。

―坂東さんは音楽に限らずさまざまな知識やカルチャーを凄まじいスピードと量でインプットされているイメージです。

坂東

確かに、一見作曲とは関係のない本もここには多いですね。東洋史学や日本史学などの本もあります。


多分、自分が受けてきた教育の外側ばかりが気になるんだと思います。人の趣味趣向や考え方、あとは「どうしてこうなっているのかわかんないな」と自分の理解に及ばないものなどにも強く興味をもちますね。


本を読むだけでなく、もちろん実地も必要で。例えばブランドショップでかかっている音楽を音楽検索アプリで特定しては、「このブランドの立ち位置や客層的に、どうしてこの音楽が適しているのか」と分析する、といったことは日常的にしてしまいます。


そうやってありとあらゆることを調べて分析すれば、自分の中で整理して文化圏、要素ごとにマッピングすることができる。その結果として、音楽というアウトプットになっているんですよね。

―なるほど。作曲することが目的ではなく、思考の末に音楽がある。

坂東

音楽を書くための技術や方法に関する訓練はこれまでの教育でたくさん受けてきたわけで、作曲家なのだからいい音楽を書けるのは当たり前のこと。でも、それ以前にインプットの質を大切にしたいと思っているんです。


僕にとってインプット行為は、音楽を書く手前やその奥にある根拠や理由づけに必要な要素を蓄えるためのもの。本来、音楽というのはそれがなくとも形になってしまう芸術なんですよね。でも、自分にとってはそういうことじゃないなって。ただ音楽を量産するだけならば僕がやっても仕方がないし、自分が何をやるべきなのかをきちんと考えた上で作曲がしたい。その意味づけがしたいんですよね。

―そうした緻密で膨大なインプットが、自身のコンサートワークや、映画やドラマといった映像作品の音楽にもつながっていくんですね。となると、黙々と作業をするわけではなく、考えごとやリサーチをするための部屋も重要になるというか。

坂東

そうですね。たとえば映像作品の音楽を書く場合も、まずは脚本から受け取る情報やカルチャーにいかにフォーカスして音楽にしていけばいいのか、そしてそれはどんな人にどんなふうに受け取られる可能性があるのかを徹底的に考えます。そしてストーリーを分析して解釈することによって、音楽にしていく。これはきっと、音楽の知識だけではできないことなんです。

坂東さんの思い入れのあるLPもずらり。

右上は坂東さんが音楽を手掛けたドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』の音楽集

作曲は思考の集積結果

―坂東さんの好奇心の深さをみるに、これまでの生き方や進路次第でアウトプットのしかたは音楽でない可能性もあったのかも、と思いました。

坂東

確かに僕は「音楽がやりたい」と自分で言ったことは一回もなくて。母がピアノをやっていたこともあり、たまたま音楽教育に投資しすぎたから自然とここまできたというか……(笑)。


たまに「作曲家になりたい方にアドバイスはありますか?」と聞かれることがあるのですが、結局はありとあらゆるものへの興味を持つことが大切なのではないでしょうか。じゃなきゃ、これからはAI相手に戦えないと思うんです。


人間だからこその知恵や興味関心を、自分の中にどんどん貯めていく。そこで感じたものをアウトプットとして反射的に形にしていく。量産したり計算したりするのは、どうしたってAIの方が速い。だから、人間ならではのフィジカル的な行為や感覚を重視したいなと。

―では、そういったインプットや考えるための時間が、この部屋では繰り広げられているわけですね。

坂東

そうですね。自分にとって、作曲とは思考の集積の結果なんだと思います。これからもこの部屋で、たくさんの資料を読み込み、考えながら曲を書いていきたいですね。

Contessa Ⅱ
[コンテッサセコンダ]
PROFILE

坂東祐大

作曲家

1991年、大阪府出身。東京芸術大学作曲科を首席で卒業。「キメラ―あるはずのないメソッドの空想」「花火-ピアノとオーケストラのための協奏曲」といった現代音楽のメインワークのほか、ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』、TVアニメ『怪獣8号』、映画『箱の中の羊』『ルックバック』、『報道ステーション』などの音楽も手がける。米津玄師 5thアルバム『STRAY SHEEP』における全面的な共同編曲や宇多田ヒカル 「少年時代」の 編曲なども行う。

CREDIT

取材・執筆:桒田萌(ノオト) 撮影:篠原豪太 編集:モリヤワオン(ノオト)

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ブランド名

商品名が入ります商品名が入ります

★★★★☆

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PROFILE

山田 太郎

CO-FOUNDER & CTO

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。

山田 太郎

CO-FOUNDER & CTO

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。

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