親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。
在宅勤務で心地よく仕事を続けるためには、作業環境を整えることが何よりも大事。頭ではわかっていても、星の数ほどある商品から自分にぴったりなチェアを選ぶのは難しい……。
そんな悩みに応えるべくスタートしたのが、連載企画「椅子選びのトリセツ」。初回は、認定人間工学専門家としてオカムラタスクシーティングの商品開発に携わる浅田晴之さんを講師に迎えてタスクシーティングの基礎知識を、第2回目からはOKAMURA Lifestyle Store店長も参加し、オカムラのタスクシーティングを3つのグループに分けたうえで、それぞれの特徴について学んでいきました。
さて、いよいよ最終回となる今回は、ここまでの連載を読んで気になるシリーズまで選ぶことができた、もしくは欲しい椅子の方向性を定めることのできた方に向けて、オカムラタスクシーティングの機能やポイントをより細やかに解説。「このパーツやオプション、いる?いらない?」を判断していくことで、きっと理想的な椅子とめぐり会えるはずです。
前回の記事はこちら
解説は認定人間工学専門家の浅田晴之さん(左)と、OKAMURA Lifestyle Store店長(右。以下OLS店長)。浅田さんは、オカムラではワークプレイスの構築に関わる運用・評価に関する調査研究業務や、人間工学的な視点に立った製品の研究開発を手がけている
—まずは前回までのおさらいを。タスクシーティングとは1日8時間座れるようにつくられた仕事の作業に適した椅子であり、オカムラでは価格と機能性のバランスから「フラッグシップグループ」「オールラウンドグループ」「カジュアルグループ」の3つに大きく分類できるとうかがいました。今回は、特に選択可能なパーツやオプションに着目して解説いただけるそうですね。
「OKAMURA Lifestyle Store」にて取り扱っている主な製品のみを選定
浅田
はい、そのとおりです。特に「フラッグシップグループ」と「オールラウンドグループ」にはさまざまなパーツやオプションがありますが、選んだシリーズによっても選択の幅が変わってくるので注意が必要です。
例えば、体格に合わせて調節できる代表的な機能として「座面の奥行き調節機能」がありますが、これは「フラッグシップグループ」と「オールラウンドグループ」にデフォルトで搭載されていて(※スフィアは奥行き調節がないタイプも選択可能)、「カジュアルグループ」には搭載されていない機能です。オカムラでは好ましい姿勢として「足裏をきちんと床につけて深く腰掛けた際に、膝裏と座面までの間に指2本くらいのスペースが空く状態」を推奨していますが、座面の奥行き調節はどんな体格な方でも好ましい姿勢を取るために重要な機能です。
また、背もたれのリクライニング機能の一種で「前傾ポジション」がとれるシリーズもあります。通常、直立を起点に後傾していくと思うのですが、「シルフィー」や「サブリナ」は前傾10°程度まで調節することができるのです。座面を前傾させることで骨盤がより立ち姿勢に近い状態になります。これは作業中どうしても姿勢が前のめりになってしまう場合、身体が「くの字」の状態が続くと内臓や腰椎が圧迫されてしまうため、それを防ぐための機能です。
このように、カスタマイズの選択肢がある項目とない項目がありますので、どの機能やオプションが欲しいのかによってシリーズを絞り込むこともできます。そして、お気に入りのシリーズを絞り込んだあとでより自分の好みや体格に合った“ワタシ仕様”の椅子に仕上げるためには、さらに8つのポイントに注目して細かなパーツを選んでいく必要があります。ここからはそのポイントを解説していきますね。
この機能やオプションいる?いらない? 知っておきたいオカムラタスクシーティングの主なポイント
ハイバック / ローバック
背もたれの高さによってローバック、ハイバックの2種類に分類できます。ローバックは肩を動かしやすく、横にあるものや背後にあるものを取るといった動作もラクにできます。一方でハイバックは肩まで丸ごとホールドしてくれるので、姿勢を安定させてくれるメリットがあります。
ローバックは高さが抑えられるので、部屋に置いたときもそこまで圧迫感がありません。限られたスペースに置きたい場合はローバック、より安定した姿勢を重視する場合はハイバックがおすすめです。ちなみに、ハイバックにヘッドレストをつけたものをエクストラハイバックと呼びます。
ヘッドレスト
後頭部を優しく支えるためのオプションパーツです。座っているときはもちろん、休憩中深く後傾するときにも首の支えになってくれます。ヘッドレストには固定式と可動式があり、後者は高さや角度を変更できます。作業中、よりフィットするかたちで頭を支えたい方は可動式ヘッドレストがおすすめです。
たとえば「バロン」は可動式のみですが「シルフィー」は固定式のみなどシリーズによっても差があるので、可動式がマストならそれだけでシリーズが絞られてきます。なお、カジュアルグループはすべてヘッドレストをつけることはできません。
ハンガー
ハンガーは背につけるオプションのひとつで、衣服を掛けられるものです。上下120mmのストロークで高さを調節でき、使わないときは収納できます。ハンガーをつけることで、直接背もたれに掛ける場合と比べて衣服が型崩れしづらくなります。ただ、「コンテッサ セコンダ」や「サブリナ」のように固定式になっているシリーズもありますので、ご注意ください。
メッシュ / クッション(座・背)
座面や背面の素材にはメッシュとクッションがあります。メッシュは通気性が高く、よりスタイリッシュな印象になりますね。なお、どちらの素材になっているかはシリーズに依存する場合もあります。
座り心地重視なら座面はクッションがおすすめです。オカムラでは「異硬度クッション」という独自技術を座面に採用していて、お尻のほうは硬めに、膝裏のほうはやわらかめに作られているんですよ。膝裏部分は圧迫されて血流が妨げないようにやわらかく、お尻のほうは骨盤が安定する土台となり、長時間座っていても疲れにくいように設計されています。
異硬度クッションのイメージ
肘掛け
肘掛けには可動肘(アジャストアーム)、固定肘(デザインアーム)、肘掛けなしの3パターンがあります。肘掛けがあったほうが、立ち上がるときの手がかりなったり、姿勢をかえたりするのに便利です。
好みの問題もありますが、私個人としては、せっかくなら可動肘がいいんじゃないかなと思います。「コンテッサ セコンダ」「フィノラ」「スフィア」のような上位クラスのシリーズだと、高さはもちろん、角度の変更や横スライドもできるようになっているんですが、これが意外と便利で。微調節できるぶん肘から腕の接触面積が増えるので、「もうちょっと近くにあったらいいのに」というニーズをカバーしてくれます。
ランバーサポート
シリーズによって追加でつけられる、腰部をしっかりホールドしてくれるオプションパーツです。「腰を支えられて心地よい」という方もいれば「背中に当たって違和感がある」という方もいて、個人によって好みの差が出やすい部分でもあるので、是非体感してから選んでもらいたいオプションの1つです。
ランバーサポート
脚
シリーズごとに選べる脚仕様は異なりますが、基本的には見た目の好みで選ぶことができます。素材としては、アルミ脚か樹脂脚の2種類です。
多くのシリーズは、同じアルミ脚のなかでも、ポリッシュ脚という磨き仕上げした光沢のあるタイプと、ホワイト・ブラック・シルバーなど塗装仕上げしたタイプからお選びいただけます。ポリッシュ仕上げは塗装仕上げや樹脂脚よりも若干お値段が上がりますが、高級感が出てスタイリッシュな雰囲気になります。
左から、アルミ脚のポリッシュ仕上げ、アルミ脚の塗装仕上げ(ブラック)、樹脂脚(ホワイト)
キャスター
一見違いがわかりづらいのですが、地味に大事な部分です。ナイロン製とウレタン製があり、簡単に言えばナイロン製のほうがよりすべりやすくなっています。
オフィスで使っている椅子のキャスターって、基本的にはナイロン製なんですよ。その理由は、オフィスには基本的にカーペットが敷いてあるから。つまらず動かすには、すべりやすいナイロン製がちょうどいいんです。ただ、自宅でフローリングに直置きする場合はナイロン製だとすべりすぎてしまうので、ウレタン製の選択をおすすめしています。
長く使うものだから。細部までこだわって、ぴったりの一脚を見つけよう
—ご紹介いただいたなかで、たとえば「肩こりの人にはこの機能」といった身体のお悩み別のおすすめ機能やオプションはありますか?
不調を感じている部分ごとにおすすめの機能というのはないんですよ。
それよりも、腰痛や肩こりは「普段の姿勢から生まれるもの」だということをぜひ覚えていただきたいです。タスクシーティングの機能がこれだけ充実しているのも、すべてはよりよい姿勢で座っていただくためです。逆に言えば、どんなにいい椅子を買っても悪い姿勢で座っていたら意味がないので、日頃から好ましい姿勢を意識して座ることが大事です。そして、たまには立ち上がってストレッチなどをして身体を動かしてください。
—不調の根元である姿勢を正していくんですね。機能もオプションも、実物を見ながらじゃないとわからない部分も多いと思うのですが、どこに行けば実際に試すことができますか?
ぜひお近くの家具屋さんやショールームにお越しいただき、実物をご確認ください。お店によっては取り扱っているシリーズも限られますが、店員さんとじっくりお選びいただけます。ショールームは完全予約制ですが、説明をさせていただくスタッフもいますし、ゆっくりご覧いただけますよ。
よい姿勢を保つためには椅子だけじゃなくデスクなど、作業環境の全体を見直すことも大切だと考えています。椅子と高さが合っていないデスクを使えばどうしても猫背になってしまいますし、PCのモニターにも同様のことが言えます。長く使うタスクシーティングだからこそ、後悔のないように細部までこだわり抜いて、自分にぴったりの一脚を見つけてもらえたら嬉しいです。
浅田 晴之(あさだ はるゆき)
専門はエルゴノミクス(建築人間工学)。ワークプレイスの構築に関わる運用・評価に関する調査研究業務や、人間工学的な視点に立った製品の研究開発に従事。認定人間工学専門家(CPE-J)。著書に『オフィスと人のよい関係』(日経BP)。
ライター:石澤萌(sou) イラスト:森優 編集:服部桃子(CINRA,inc)
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