親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。
在宅勤務で心地よく仕事を続けるためには、作業環境を整えることが何よりも大事。頭ではわかっていても、星の数ほどある商品から自分にぴったりなチェアを選ぶのは難しい……。
そんな悩みに応えるべくスタートしたのが、連載企画「椅子選びのトリセツ」。初回は「タスクシーティングって何?」と題し、その歴史やダイニングチェアなどほかの椅子との違いも教えていただきました。
基礎を理解したところで、今回からいよいよ実践編へ。じつに15種類以上あるオカムラのタスクシーティングのなかから自分にぴったりの一脚を選ぶには、一体何を足がかりにすればよいのでしょうか? 今回は、第1回に引き続き、認定人間工学専門家としてオカムラチェアの製品開発に携わる浅田晴之さんが、「OKAMURA Lifestyle Store」にて取り扱っている主なタスクシーティングの製品シリーズについて全体像を解説。さらに、日々お客さまの声を聞くOKAMURA Lifestyle Store店長も登場し、シリーズの詳細についてお話しいただきます。
前回の記事はこちら
解説は認定人間工学専門家の浅田晴之さん(左)と、OKAMURA Lifestyle Store店長(右。以下OLS店長)。浅田さんは、オカムラではワークプレイスの構築に関わる運用・評価に関する調査研究業務や、人間工学的な視点に立った製品の研究開発を手がけている
—前回、タスクシーティングとは1日8時間座れるようにつくられた仕事の作業に適した椅子を指すのだと教えていただきました。耐久性を考えると決して高すぎる買い物ではないということは理解できましたが、とはいえ頻繁に買い替えられるものではないので、購入時はどの椅子が自分にぴったりなのか悩んでしまいそうです。
浅田
数多くの製品のなかから判断するのって難しいですよね。そんなときは、ご自身の使用シーンにふさわしい機能性と価格とのバランスから考えるのをおすすめしています。第1回でもお伝えしたとおり、基本的にタスクシーティングは機能性に比例して高価格になります。逆に、機能がシンプルであれば価格も比較的リーズナブルです。
「OKAMURA Lifestyle Store」で取り扱っている主なタスクシーティングを、縦軸に機能性、横軸に価格を置いた分布図に各製品シリーズを配置すると、「フラッグシップ」「オールラウンド」「カジュアル」の3グループに分類できます。それぞれのグループの特徴や代表的な製品を見ていくことで、ご自身が椅子に何を求めているのか、絞り込むヒントを得られるのではないでしょうか。
今回は、「OKAMURA Lifestyle Store」にて取り扱っている主な製品のみを選定
—具体的に、それぞれのグループにはどのような特徴があるのでしょうか?
浅田
フラッグシップグループには「コンテッサ セコンダ」「バロン」「フィノラ」「サブリナ」といったシリーズが位置づけられています。リクライニングや可動式の肘掛け、ヘッドレストなど、さまざまな体格や姿勢に対応できるように機能やオプションが充実しています。4製品ともイタリアを代表するデザイン会社「イタルデザイン」と協業しており、品格がありスタイリッシュです。特別な一脚を求めている方は、フラッグシップグループから選んでいただくと良いでしょう。
一方、対極にあるカジュアルグループの「ライブス ワークチェア」「シナーラ」「パラベル」は機能性をぐっとシンプルにしたぶんコンパクトで総重量も軽いんです。店長、実際にお客さまからはどういう点を評価されていますか?
はい、カジュアルグループの特徴として、部屋においたときの圧迫感がないことが挙げられます。カラーバリエーションが豊富でファッション性の高い製品が多いので使う場所を選びません。また、異硬度クッションを使っていたり、独自リクライニング機構を取り入れていたりするため使い心地も抜群。価格も6万円前後からとお手頃です。
フラッグシップグループとカジュアルグループの「いいとこ取り」と言えるのがオールラウンドグループの「シルフィー」や「スフィア」です。機能的にもしっかり満足できるうえに価格が高すぎることもなく、一番コストパフォーマンスが良いと言えます。
フラッグシップ、オールラウンド、カジュアル。それぞれのグループにフィットする働き方とは
—3つにグループ分けするだけで見えてくるものがたくさんありますね。各グループの製品は、どのような選ばれ方をされることが多いでしょうか?
オフィスに導入される場合は、使われる場所や、使う人の職種によって選ばれる製品が異なる印象です。机と椅子がずらっと並ぶ執務エリアでは、ほとんどがオールラウンドグループ以上ですね。そのなかでも、1日中座っていることがほとんどない営業職はコストパフォーマンスの良いオールラウンドを、エンジニアのような長時間座りっぱなしの従業員にはより機能性の高いフラッグシップの製品を……と、職種によって判断する企業もあるようです。
—働き方によって違いが生まれるんですね。カジュアルグループはいかがでしょうか?
カジュアルグループはどちらかというと、テーブル席のような場所で導入されることが多いようです。ミーティングも執務も、社員同士のちょっとした雑談もできる。そんなリビングテイストな雰囲気の空間には、カジュアルグループの椅子のほうがインテリアにしっくりくると思います。
個人のお客さまでは、背中のフィット感やお部屋のサイズ感に合わせて選ばれる方が多いです。「家ではほかの椅子を使っていたが、会社で座り慣れている」というきっかけでフラッグシップやオールラウンドを選ばれる方もいらっしゃいます。
—個人の場合は、たとえば「家を買って書斎ができたから特別な一脚が欲しい」というように、住宅環境やライフスタイルも大きく関係しそうですね。
フラッグシップの製品については、まさにそういった声を聞きます。仕事をするだけでなく、読書や趣味の作業など、自分だけの特別席をつくっていただければと思います。日中は大人が仕事椅子として使い、夜はお子さんが宿題をするために座るというように、ご家族でシェアするのも全然アリです。誰がどんなふうに使うのか、1日をどんな流れで過ごすのかも椅子選びの大事な観点のひとつと言えます。
各グループの代表製品をピックアップ。特徴やおすすめポイントは?
—各グループの製品についても、それぞれ1つずつ特徴をおうかがいできますか? まずはフラッグシップグループを代表して、そのなかでも最も新しい「フィノラ」からお願いします。
「フィノラ」は2019年にデビューした製品です。高級車のデザインを数多く手がけるイタルデザインとのコラボ製品というだけあって、自動車からインスピレーションされた背面のカスタムパネルは質感の異なるメッキ、ホワイト、ブラックの3種類から選択でき、自分好みにカスタマイズできます。
機能面も言うことなしですが、特徴的なのが肘掛けの動きです。タスクシーティングの可動式の肘掛けは、身体の幅や腕の位置に応じて角度・高さを調節できるようになっています。「フィノラ」の肘掛けは背もたれについているので、リクライニングしても肘を置いている位置が変わらないのです。
フィノラ
—フラッグシップグループの4製品はどれも高機能ですが、特に「フィノラ」をおすすめしたい人は?
車のような高級感のあるデザインを好む方はもちろん、大きな体格の方にもおすすめです。可動式ヘッドレストが上下前後に動くので、心地よく座っていただけると思います。
—では続いて、オールラウンドグループから「シルフィー」。こちらはオカムラチェアでも大人気の商品ですよね。
はい。価格と機能のバランス感が素晴らしく、オカムラ製品のなかで一番売れているタスクシーティングです。機能も数多く備えていて、座面の奥行調節機能をはじめ、腹部の圧迫を軽減する座面前傾機能も備えています。
個人的なおすすめポイントは、背もたれの形状を2段階調節できるバックカーブアジャスト機構。両サイドにあるレバーを操作することで左右方向のカーブの形が変えられて、どんな体格の人でもフィットするんです。小柄な女性のお客さまから喜びの声をいただくことが多いですね。
シルフィー
—では、最後にカジュアルグループから「パラベル」。こちらは、ホームユースを追求した製品だそうですね。見た目もころんとしていて可愛いです。
座面高が最低38センチまで低くなるコンパクトなつくりで、狭いお部屋でも邪魔になりません。それに座面のカバーが取り外せるタイプもあり、洗濯することができます。カラーバリエーションも豊富で、どんな部屋でもインテリアに馴染みやすい。フレームカラーはホワイトだけじゃなく、汚れが目立ちにくく、落ち着いた雰囲気を叶えてくれるライトグレージュも用意しています。
8時間座って仕事し続けるには物足りなさを感じる部分があるかもしれませんが、異硬度クッションが備わっているので、家事の合間にちょこちょこ仕事する人、ダイニングチェアを仕事椅子と兼ねている人は、「パラベル」にすることでダイニングチェアに座っているときよりも快適に作業できると思います。私の同僚は木脚タイプを選んでダイニングチェアの代わりに使っているそうなので、もちろんそのままご飯を食べてもらってOKです!
パラベル
—第1回であった「タスクシーティング=仕事用の椅子はどんなタスクにも対応する」、というお話の実例ですね。では最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
オカムラとしては、フラッグシップだけが推しということではなく、ここで紹介したようなたくさんの製品がありますので、皆さんのライフスタイルや好みにぴったりな一脚を見つけてもらえたら嬉しいです。
今日は3グループに分類したうえで特徴を説明しましたが、じつは、製品を絞り込んだうえで、さらに細かい仕様を決め、やっと自分にとって最適な椅子が見つかるんです。そこで次回は、オカムラチェアに備わっている具体的な機能やオプションパーツについてご紹介したいと思います。
浅田 晴之(あさだ はるゆき)
専門はエルゴノミクス(建築人間工学)。ワークプレイスの構築に関わる運用・評価に関する調査研究業務や、人間工学的な視点に立った製品の研究開発に従事。認定人間工学専門家(CPE-J)。著書に『オフィスと人のよい関係』(日経BP)。
ライター:石澤萌(sou) イラスト:森優 編集:服部桃子(CINRA,inc)
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