親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。
こんにちは! OKAMURA Lifestyle Storeのクオッカ店長です。
普段から椅子のことばかり考えていたら、すっかり椅子マニアになってしまったぼく。でも、世界には椅子だけでなく、いろいろな形で好きなものに愛を注ぐマニアがいるみたい……!
そこでこの連載では、椅子マニアのぼくがワークスペースを飛び出して、あらゆるマニアに「好きなものを愛でる楽しさ」を聞いていきます!
連載6回目にお話を聞いたのは、京都で「プロレス美術館」を運営している湯沢利彦さん。ファン歴50年を超えるプロレス好きであり、ファン活動を通じて集めに集めたプロレス関連グッズを展示する「美術館」を自宅でオープン。プロレスファンに無償で公開しています。
そこまでのめり込んだプロレスの魅力って何? そもそもどうして美術館まで作ったの? 尽きぬ疑問をぶつけるため、京都のプロレス美術館を訪問。湯沢さんにたっぷり語っていただきました。
「アントニオ猪木VSストロング小林」でプロレスに出会い、一気にのめり込む


1/6サイズの手作りリングの周囲にはアンドレ・ザ・ジャイアントのリングシューズや、初代タイガーマスクのタイツ、それに獣神サンダーライガーのコスチュームなど、プロレス関係の展示物が勢揃い!


プロレス関連の新聞や興業で使われた実物のポスターが飾られ、いろいろなプロレス関連書籍が揃っています。中には手作りの昭和なテレビも……。



プロレス美術館 館長 湯沢利彦さん


当時僕は小学生だったんですが、学校でみんな猪木の話をしていたんですよ。でもちゃんと観たことがなくて。でもこの日はチャンネルを変えてるうちにこの試合が映って「これがあの猪木か」と見ていたんです。すると、そのまま目が離せなくなりました。
当時は子供なりに仮面ライダーみたいな変身ヒーローが好きでしたが、変身ヒーローと違ってプロレスは猪木もストロング小林も実際に自分の体で戦っている。疑いの余地がない。これはすごいと思ってグッとのめり込んで、そのまま今までプロレスに取り憑かれています。

プロレスが好きになってから、アントニオ猪木さんに夢中に。部屋にはたくさんの猪木に関するグッズがある。





そういった攻防の中にもストーリーがあって、そのストーリーもあらかじめ決められていたのかアドリブなのかわからない曖昧さがある。もちろん毎回ものすごく面白いわけじゃなくて、盛り上がらない試合もあるんですけど、でもそういう思惑外れも含めて、現場で見るプロレスにはそこでしか得られない楽しさがあるんですよ。
奥様と一緒に、アイデアとDIY精神で展示室を作り上げる!


かつては電信柱にポスターが貼られていたことにちなんで、自作の電柱を立ててポスターを展示している。こちらは1981年7月31日に大阪府臨海スポーツセンターで行われた新日本プロレスのローラン・ボック初来日戦のポスター

並べただけでは展示にならないから、そこで「中央にリングを置く」というアイデアを盛り込みました。リングがあれば、大したお宝じゃないものを置いていても、展示物として生きてくる。それでリングを作ったのが、2000年ごろです。

一室の中央に鎮座しているプロレスリング


こっちの資料室も含めて、うちの妻がかなり手を入れてくれたんです。僕はもう、そういう見せ方のセンスは全然ないから(笑)。グッズを眺めてプロレスのことを考えてるだけで楽しいから、「どう見せよう」とか考えたことがない。


資料室の一面はプロレスに関する重要な新聞記事をカラーコピーして切り貼り。
他の一面には、プロレスに関する書籍や選手によるサインなどの資料が展示されている
こちらの資料室は、後から追加したんですか?


昭和の家みたいにしようとか、テレビを改造しようというアイデアを出してくれたのも妻ですね。単に奇抜なだけの施設ではなく「美術館」と名乗っても納得してもらえるようにしようと思って、壁の板も木材に全部ペンキ塗って、木を細く切ってくっつけて、大体全部手作りです。予算がないので……。

昭和風に改造されたテレビ。スイッチはペットボトルのキャップなどで作られている


お金はありませんけど、例えば手元にあるプロレスグッズを売って手放すとか、そういうことも絶対にしないつもりです。これを手放しちゃったら、ここをやっている意味がなくなる。
集めた展示品の中には、レスラーの親族から寄贈されたものも



「1989年1月1日」の日付がある、アントニオ猪木さんの書き初め。同年2月22日に両国国技館で開催された、ソ連選手が参戦したビッグマッチを踏まえた内容が興味深い



アンドレのリングシューズ。35㎝を大幅に超えるビッグサイズ


ブッチャーの大きな白いタイツも展示。右には初代タイガーマスクのロングタイツも


ストロング小林さんの赤いガウン

そして、椅子マニアとしては無視できないパイプ椅子も……!



ここにあるものは、どれも大金を払って揃えているわけではないのがすごいですね。


以前、漫画家さんが取材に来てくれて、この美術館をコミックエッセイで取り上げてくださったこともありましたし、僕自身が話を聞きたいというプロレス関係者の方や、僕が知らない時代のプロレスに詳しい方も来てくださる。続けていくのは大変ですが、僕にとってはいいことの方が多いんです。
100年後まで「昭和のプロレス」のことを伝えたい








ご両親と一緒に住む二世帯住宅の2階が、湯沢さん夫妻の住居。その2階の半分以上をプロレス美術館が占めているので、展示物の制作には残りのスペースをフル活用してワークスペースを確保しているそう! 湯沢さん曰く、「展示物は洗面所など、使える場所を全部使って作ってます」。作業に使用している道具もハサミ・カッター・テープ類などで、全てが「昭和の手作業」で作られているみたい。美術館もワークスペースも、すべてが大好きなプロレスに囲まれていてうらやましい!
取材・執筆:しげる 写真:衣笠名津美 イラスト:キタハラケンタ 編集:桒田萌(ノオト)
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